厚生労働省は11月20日の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議 供給情報ワーキンググループ」に、感染症法の施行を踏まえ、供給不安情報を厚労省のウェブサイトで公表することを提案した。医療従事者が即時性のある情報を入手することが可能になる。構成員からは情報の充実を歓迎する声があがったが、「供給情報を現場がどう活用できるかという観点できちんと検討する必要がある」など、医療現場での活用の観点が重要と指摘する声もあった。改正感染症法、医療法は来年４月１日に施行される予定で、具体的な取り組みについて検討が進められている。

◎ウェブサイトでの公表　即時性のある情報提供に　製造販売業者からの報告漏れ抑制効果も

医薬品の供給情報をめぐっては、供給不安の恐れがある場合は、製造販売業者から厚労省に報告することとされているが、報告が徹底されておらず、医療従事者が閲覧することもできなかった。また、日本製薬団体連合会（日薬連）の実施する医療用医薬品供給情報緊急調査事業もあるが、更新が月に１回で即時性がないことが指摘されている。

厚労省は、現在供給不安時に製造販売業者から受けている供給不安情報をウェブサイトで随時公表する考えを示した。あわせて、製造販売業者からの供給不安報告を徹底する。これにより、医療関係者等が即時性のある供給情報を閲覧可能となることに加え、製造販売業者から厚労省への報告の有無を外部から確認できるため、報告漏れを抑制することができなどのメリットがある。

公表範囲については、個社の営業上の利益や競争政策上の観点を考慮し、市場シェア、限定出荷の理由の詳細等は除くなど、限定することも提案した。また、情報に変更があった場合は、随時更新を求める。

来年４月に施行される改正医療法では、“医療を受ける者の利益が大きく損なわれるおそれがある場合”に国が製造販売業者に報告を求めることが盛り込まれる。厚労省は、医療法上の“医療を受ける者の利益が大きく損なわれるおそれがある場合”について、同一成分規格の品目がすべて供給不足の場合や、成分シェアが大きい品目が供給不足の場合、安定確保医薬品が供給不足に陥った場合を具体例として列挙。報告を求める場合の例として、「生産計画や在庫量などについて、継続的に報告を求める必要がある場合」、「供給停止や限定出荷の状況にあるにもかかわらず、供給不安報告が提出されていない場合」をあげた。

構成員からは、「医療現場としては、メーカー側の供給情報提供が充実されること自体は望ましいことだ。一方で、その情報を出し続ければいいというものではなく、メーカーからの供給情報を現場がどう活用できるかという観点できちんと検討する必要がある」、「供給状況の情報提供に当たっては、用語や定義を定め、関係者の理解共通理解得た上で取り組みを進める必要がある。それが揺らいでいるときちんとした情報提供にならない。定義そのものをきちんと関係者で共有することが重要だ」などの意見が出た。

このほか、改正感染症法では、感染症対策物質の確保に向けて、供給状況の報告内容（製品の生産量や出荷量の推移）等を踏まえ、生産要請等を行う。その後、届け出られる生産計画等を踏まえ、増産すべき量について厚労省が検討。増産について事業者と調整した後に、定量的な計画の変更指示を行うフローを想定している。

◎在庫偏在へ情報把握のシステム化を検討　医療現場の需要について把握する必要性指摘も

このほか、供給不足の原因として指摘される、在庫の偏在も議論の俎上に上った。供給不足の際には不安から必要量以上の買い込みなどが起きていることが指摘されているが、現状では医療機関・薬局の在庫量や需要量を把握する方法がない。厚労省はこのため、その状況を把握するための“システム化（見える化)”を提案した。

厚労省は2023年度補正予算として、「医薬品供給情報の報告・収集・整理・分析・提供等に係る体制整備のための調査研究事業」の予算請求を行っている。事業では、医薬品供給の各段階における情報の収集・整理・分析・提供などの体制の最適化について外部専門機関に委託して検討を行う。

構成員からは、「在庫の偏在」という考え方を整理する必要性を指摘する声があがったほか、医療現場の「需要の把握」の必要性を指摘する声があった。また、在庫偏在の情報収集に対する「現場の報告負荷についても考慮する必要があるのではないか」との声もあった。