アミリックスが国内事業を終了 ALS治療薬候補・P3で有効性示せず グローバルで70%人員削減も
公開日時 2024/05/20 04:51
アミリックス・ファーマシューティカルズ・ジャパン(⽇本事業統括責任者:⼩脇浩史氏)は5月17日、国内における全事業を終了することを決定したと発表した。日本法人のオフォスも廃止する。同社は筋委縮性側索硬化症(ALS)治療薬候補のAMX0035の日本上市を見据え、2023年9月に米Amylyx Pharmaceuticals, Inc.の日本法人として設立された。しかし、第3相臨床試験「PHOENIX」のトップラインデータで主要・副次評価項⽬を達成できなかったため、事業の終了を決断した。米国では試験結果を踏まえて販売を中止。グローバル全体で70%の従業員を削減し、重点的なリソース配分する事業再編に着手することを4月に発表していた。
米AmylyxのAMX0035(一般名:フェニル酪酸ナトリウム/タウルウルソジオール、米国製品名:RELYVRIO、カナダ製品名:ALBRIOZA)はカナダのほか、米国で22年9月に承認。年間15万8000ドル(約2400万円)に設定する高薬価も追い風となり、黒字化を達成するなど成長を遂げてきた。
◎米諮問委で有効性めぐり否決も承認に
同剤の米国承認の根拠となったのは、ALS患者137例を対象にオープンラベルで実施された臨床第2相試験「CENTAUR」。22年3月に開かれた末梢・中枢神経系薬物諮問委員会では有効性をめぐり、否決(賛成:4票、反対:6票)された。ただ、治療選択肢が少なく、患者団体の強い要望を踏まえ、2度目の諮問委員会が開催され、アンメットメディカルニーズの高さなどから、承認された経緯がある。
◎臨床第3相試験「PHOENIX」 主要評価・副次評価項目すべてでプラセボに有意性示せず
臨床第3相試験「PHOENIX」では、欧州からの患者を中心にALS患者664例を対象に、リルゾールおよび/またはエダラボンの標準治療にAMX0035を上乗せし、有用性を検証した。無作為にAMX0035群とプラセボ群に分け、48週間投与で治療効果を比較した。主要評価項目に据えた筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版 合計スコア(ALSFRS-R)ではAMX0035群(397例)で-14.98、プラセボ群で-15.32で、統計学的有意差は示されなかった(p=0.667)。副次評価項目に据えたASL特異的QOL尺度のALSAQ-40や全生存期間(OS)のいずれも有意差は認められなかった。この結果を受け、米Amylyxは4月に米国、カナダでの市場からの製品の削除し、新規患者への投与を行わないことを決定した。なお、米国やカナダで治療中の患者には無料のプログラムに移行することを可能としている。
同社は今年4月に、従業員を約70%削減し、優先分野以外のコスト削減を行う予定であることを公表していた。同社が5月9日に発表した24年第一四半期(1~3月)の製品売上高は、8860万ドル(約137億円)だが、多くがAMX0035によるものとされている。
日本法人は、米・Amylyxについて、「事業を再編し中核的な臨床・前臨床プログラムにリソースを重点的に投⼊する。神経変性疾患は、いまだ満たされない⼤きなニーズが存在する疾患だ。Amylyx は、これらの疾患に対する⾰新的な治療選択肢を提供するという使命を果たすため、取り組みを続けている」としている。