厚労省は４月24日、「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」に報告書案を提示し、議論を行った。報告書案では、少量多品目生産など構造的課題が指摘される中で、適正化に向けて企業間の連携・協業の必要性を指摘。複数の後発医薬品企業が「新法人を立ち上げて屋号を統一化する等により、品目・機能を集約・共有していくモデル」などのモデルを示し、「金融・財政措置など様々な面から企業の取組みを後押しする方策を検討していくべき」としている。５年程度の集中改革期間を設定して、実施すべき対策を整理したロードマップを厚労省が速やかに策定し、対策を行う。厚労省は、報告書の取りまとめに向けて、５月下旬に予定される検討会でも引き続き議論を深める方針。

◎あるべき姿の「前段階」も例示　品目集約、川下の共同購買で事業再編進めるモデルも

報告書案では、少量多品目構造の適正化に向けて、品目統合に加え、「製造部門、品質管理部門、営業部門、販売部門など様々な段階での企業間の協業により効率化を図る」ことが期待できると説明。企業間の連携・協力など「業界再編が行われる機運を高めていく必要がある」とした。

後発品メーカーの協業モデルも例示。「大手企業が他の後発医薬品企業を買収し、品目統合や生産・品質管理を集約する等の効率化を実現していくモデル」、「後発医薬品企業が事業の一部または全部について、他の企業に譲渡するモデル」、「ファンドが介在して複数の後発医薬品企業や事業の買収を行い、統合していくモデル」に加え、「複数の後発医薬品企業が集まって、それぞれの屋号を残したままで、あるいは新法人を立ち上げて屋号を統一化する形等により、品目・機能を集約・共有していくモデル」も具体像にあげた。

この前段階として、「長期収載品も含め、他企業の工場に製造委託を進める中で、品目の集約化から事業再編を進めていくモデル」と「物流ベンダーによる保管・配送の集約や、医療機関・薬局等の需要の集約、共同購買等により、事業再編を進めていくモデル」などもあげた。事務局によると、複数メーカーを取り扱う医療機関や薬局が品目やメーカーを絞りこむことをきっかけに、事業再編につながるとの意見が構成員から出たという。

◎５年程度の集中改革期間設定　あるべき姿実現へ「業界のイニシアティブで進めるべき」

後発医薬品産業のあるべき姿として、「ベースライン」の姿として、①製造管理・品質管理体制が整っていること、②医薬品を安定的に供給できる体制が保たれるとともに、産業全体として必要に応じて増産を行う余力のある体制が確保できていること、③持続可能な産業構造－を実現する必要性を指摘。これらを実現するための適切な体制が構築されていることが重要として、「生産性の向上、人材の育成等ガバナンスの強化、業界再編や企業間の連携・協力の推進を業界自らのイニシアティブで進めていくべき」とした。

供給不安が続く中で、対策は「実施できるものから迅 速に着手しつつ、５年程度の集中改革期間を設定して、実施すべき対策を整理したロードマップを厚生労働省において速やかに策定し、実施状況をフォローアップしながら供 給不安の早期の解消と再発の防止を着実に行っていく必要がある」とした。また、ベースライン実現後のさらに「飛躍するための将来ビジョンを自ら描いていくべき」とした。

製造管理・品質管理体制の確保に向けて、「後発医薬品企業においては自らの襟を正し、製造管理・品質管理の徹底を図り、産業 全体が一丸となって後発医薬品の信頼回復と供給不安の解消、再発防止に取り組まなければならない」とも指摘した。

後発品の上市に際しては、全規格揃えが求められるが、「全規格を取り揃えることが必ずしも必要ではないと考えられる品目について、一部の規格のみであっても供給停止・薬価削除プロセスを適用できる ようにすることを検討すべき」、「薬価収載後５年を待たず、薬価収載時に医療上必ずしも必要でないと考える規格がある場合の取扱いを明確化することも検討すべき」と指摘。「口腔崩壊錠（ＯＤ錠）についてもこの中で検討するべき」などとしている。

◎「業界団体に求めることも盛り込むべき」、「退場すべき企業への対応求める」声も

構成員からは、「業界団体に求めるものを検討会や役所からのメッセージとして盛り込むべきではないか」、「事業間連携に際して何らかのリスクマネーを投じる方策は考えられないか」、「企業を支援するだけではなく、退場すべき企業にはきちんと対応してもらうことが必要」などの声があがったという。