中医協薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会が11月15日開かれ、これまでの合同部会での議論を踏まえた事務局案が厚労省から示された。その後、各側から事務局案に対するコメントや質問が出された。本誌は議論された内容を議事要旨として公開する。
安川部会長:中医協薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会を開催します。(中略)
今回は高額医薬品、認知症薬に対する対応を議題とし、これまでの議論を踏まえ取りまとめをいたします。事務局より資料が提出されておりますので、事務局より説明をお願いいたします。
薬剤管理官:薬剤管理官でございます。資料「薬費―1」(高額医薬品「認知症薬」に対する対応について・案)をご覧ください。これまでの議論を踏まえてレケンビ点滴静注の薬価算定方法等の対応についてまとめました。最初に取りまとめの位置付けを記載しております。最初のパラグラフでレケンビ点滴静注が高額薬に該当する品目であることから、薬価算定の手続きに先立ち、中医協において薬価算定方法等の検討を行ったこと。次のパラグラフでは特例的な対応をとることの必要性をまとめております。
次に具体的な対応として、まず「1.薬価収載時の対応」です。「(1)算定方法および薬価算定にあたり用いるデータ」について、一つ目の「〇」は、本剤は通常通りの算定方法で行うこと。中医協総会では算定にあたっての考え方を説明することとしています。
二つ目の「〇」は介護費用の扱いですが、費用対効果評価の枠組みで検討することにしているので後述いたします。
次に「(2) 保険適用上の留意事項」です。一つ目の「〇」は、本剤は適切な患者選択や投与判断、ARIA(アミロイド関連画像異常)という重篤な副作用発現の際の迅速な安全対策等を確保するため、最適使用推進ガイドラインを定めることとしており、それに基づき必要な内容を留意事項通知で明示するという通常の手続きを記載しております。
2ページ目の大囲み(※最適使用推進ガイドラインで定める主な事項・概要)は、最初の議論の際に最適使用推進ガイドラインを定めることを資料にしていましたが、具体的な要件の概要をここで示しております。投与開始時の「患者要件」、「施設要件」、「投与開始後」の継続性の判断等に関してまとめております。
次に「2.薬価収載後の対応」です。「(1)市場拡大再算定」について、最初の「〇」は通常通り市場拡大再算定や四半期再算定で行うことを記載しています。二つ目の「〇」は但し書きで、使用実態の変化等が生じた場合において、速やかに中医協総会に報告の上、改めて本剤の薬価・価格調整に関する対応の必要性について検討することとしております。
資料3ページ目の中ほどに想定される使用実態の変化の例示しております。また中医協総会に報告する時期については、上記に書いてある、その変化等で本剤の薬価・価格調整に関する検討が必要と認められるときの他、収載から18か月、36か月が経過したとき、あるいは以下の「4.その他」に基づき、必要性が示されたときは該当するものとして列挙しております。
「(2)費用対効果評価」につきましては、一つ目の「〇」で費用対効果評価における介護費用の取り扱いを議論してきたこと。二つ目の「〇」で価格調整のあり方については、制度全体の見直しの中で議論したことに加え、本剤における価格調整範囲のあり方も議論してきたことを書いております。
今後の本剤の費用対効果評価のあり方については、特例的な取り扱いも含め検討し、薬価収載時までに一定の方向性を示すこととしております。
次に「3.本剤の薬価の議論」については、一つ目の「〇」で、中医協総会で議論する際には、通常の算定案や最適使用推進ガイドライン案の他、留意事項通知を合わせて議論することとし、二つ目の「〇」で、その際には算定価格案、投与対象患者数予測、ピーク時の市場規模予測が示されますので、先ほどの「2.薬価収載後の対応」がこの記載の通りでよいか改めて判断することとしております。
最後に「4.その他」については、本剤のようなアルツハイマー型認知症を対象とする抗体医薬品が別の製造販売業者において開発中であり、そのような製剤が薬価収載する場合には必要に応じて中医協総会で本剤を含む取り扱いを改めて検討することとしております。説明は以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございました。ではただいまの説明についてご質問、ご意見等ございましたらお願いいたします。では、長島委員、お願いします。
長島委員:本件につきましては、これまできめ細かく丁寧に議論を積み重ねてまいりましたので、この対応案について異論はありません。
その上で一点だけ、事務局に質問します。「1.薬価収載時の対応」の「(2) 保険適用上の留意事項」に関連しますが、最適使用推進ガイドラインで18か月以上継続する場合の判断については、有効性が見られない場合に、それ以上漫然と投与しないだけでなく、有効性が十分見られている場合も、一旦中止することになると理解しておりますが、そのような解釈で、よろしいでしょうか?
安川部会長:では事務局、お願いいたします。
薬剤管理官:はい、いただきましたご質問に関しまして、本剤の投与につきましては原則18か月までとしていますが、18か月以上継続する場合には、臨床症状等の評価、あるいは副作用のARIA等の状況に基づき、18か月時点での有効性、安全性を評価した上で本剤投与の継続の要否を判断していただくということになっております。
安川部会長:長島委員よろしいでしょうか?
長島委員:はい。
安川部会長:ほかにご意見、ご質問ございますか。では森委員お願いいたします。
森委員:はい、ありがとうございます。事務局におかれましては、これまでの議論を整理いただき、対応案をまとめていただきありがとうございました。高額医薬品に対する対応について異論はありません。
その上で、本来は新規作用機序を有し、認知症の進行を抑制するという画期的な新薬となるものであり、イノベーション評価の点から適切に評価すべきと考えます。ただし、対象患者数を踏まえると使用可能な医療機関の数等の使用実態の変化等により、患者数が大幅に増加する可能性があり、投与期間による影響も想定されますので、資料3ページ目に記載があるような使用実態の変化等が認められた場合は、市販後安全調査の結果等も含め、中医協に報告の上、必要に応じた検討を改めて行うことが必要と考えます。
また、介護費用等について、いわゆる社会的価値に基づく評価をどう考えるのかということは重要な視点ですが、学術的な課題、データ連結、公的分析が少ないなど課題もありますので、引き続き研究を進めることが必要と考えます。私からは以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございます。他にご意見ご質問ありますでしょうか。では松本委員お願いします。
松本委員:はい、ありがとうございます。取りまとめ内容につきましては今お示しいただきました事務局の案に異論はございません。
それで2点コメントと一つ質問がございます。保険者としては、国民皆保険の持続可能性とイノベーションの推進の両立は極めて重要な視点だと認識しております。収載後に患者数が上振れすることや、投与期間が長期化する可能性が現段階では否定できず、保険財政に極めて重大な影響を及ぼす懸念もありますので、市場拡大再算定の取り扱いについては資料3ページに記載のあるような、変化が生じた際に、速やかに中医協で議論できるようしっかりと対応をお願いいたします。
また、以前にも指摘させていただきましたが、費用対効果評価における介護費用の分析につきましては、研究班や専門家の先生方から技術的な課題が未だあるという説明をいただき、さらに業界代表においても具体的な方法については明確な回答がなかったと受け止めております。
研究を進めることは重要でございますが、中医協において適切な判断を行うことができるよう慎重な検討をお願いいたします。
質問は、資料2ページの「最適使用推進ガイドラインで定める主な事項(概要)」というところの中で、医療施設の要件の一つ目にございます診断やARIAの画像所見の判断とかできる医師というところの括弧でたくさん書いてあるんですけども、これは「and」という扱いなのか、あるいは「or」なのか少し確認させていただきたいと思います。私からは以上になります。
安川部会長:はい、その点について事務局お答えをお願いいたします。
薬剤管理官:はい、ご質問につきましては、こちらで書いてある括弧書きについては医師に対する要件ということで、括弧書きで列挙しているもので、基本的には最適使用推進ガイドラインに明記することを予定しているものでございます。
安川部会長:松本委員、よろしいでしょうか?
松本委員:はい。
安川部会長:では鳥潟委員お願いいたします。
鳥潟委員:皆さまと同じように、高額薬、認知症薬に対する対応案について異論はございません。ただ、対応案にもあるように薬価収載後の使用実態の変化に応じて速やかに薬価・価格調整に係る対応をとっていただきたいというふうに思っており、状況を注視していただきたいと考えております。よろしくお願いします。
安川部会長:はい、ありがとうございます。他にいかがでしょうか? 他にご意見等ないようでしたら、本件に関する質疑はこのあたりとして、本案を本日の総会に報告するということでよろしいでしょうか?
各側委員:(了承)
安川部会長:ありがとうございますそれでは、そのようにいたしたいと思います。本日の議題は以上です。それでは本日の合同部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。
※合同部会のとりまとめ案は、同日開催された中医協総会に報告、審議され、了承された。