【中医協薬価専門部会 10月27日 議事要旨 安定供給が確保できる企業の考え方の論点と質疑】
公開日時 2023/10/30 04:50
中医協薬価専門部会は10月27日、安定供給が確保できる企業の考え方の論点が示され、診療・支払各側が意見した。本誌は各側委員の質疑について議事要旨として公開する。
【資料・安定供給が確保できる企業の考え方に関する論点】(薬―1 43ページ)
1.企業指標の導入及び評価
• 企業指標については、本来、安定供給が確保できる企業を可視化し、当該企業の品目を医療現場で選定 しやすくなることを目的として検討されたものであるが、当該指標を薬価制度においても活用すること について、どのように考えるか。
• 薬価制度において活用する企業指標として、今回示した項目(34ページ)に基づき評価基準を整理して いくことについて、どのように考えるか。
• 企業指標に基づく評価方法等(37ページ)について、どのように考えるか。また、令和6年度薬価改定 においては現時点で評価可能な項目を対象として試行的に導入するとともに、項目や評価方法等の妥当 性や導入によって得られる成果等を検証して今後の改定において見直すことについて、どのように考え るか。
2.薬価制度における取扱い
• 薬価制度において活用する場合、どのような薬価算定ルールを対象とし、どのように活用すべきか。
• 上記1を踏まえると、令和6年度薬価改定においては、導入当初から様々なルールを対象に活用するの ではなく、最小限のものからまず適用していく方向で適用項目を整理していくことについて、どのよう に考えるか。
安川部会長:それでは質疑に入ります。長島委員からお願いします。
長島委員:ありがとうございます。資料43ページの「安定供給が確保できる企業の考え方に関する論点」についてコメントします。まず、「1.企業指標の導入及び評価」です。最初のポツにあるように、今回の企業指標を薬価制度で活用するのであれば、医療現場が選定する際に役立つような情報提供のあり方をしっかりと検討する必要があると考えます。
2つ目のポツです。今回示された企業指標の項目のうち、企業の安定供給の実態については、製造販売業者として薬機法のもとで許可を取得した以上、いずれの企業も上市する医薬品を安定供給することは当然の責務ではないかと思います。
今回の供給不安が起きたのは、企業の不正が原因であったことも考慮すれば、安定供給できていること自体をそのまま薬価制度でプラスに評価するのは賛同しかねます。むしろ、製造販売業者としての適格性に関するものとして、薬機法上の対応について検討が必要だと思います。
一方、後発医薬品の市場に特有の供給不安解消のための企業努力、例えば他社が供給できない品目に対して、自社品目を追加供給するなど社会貢献などの企業指標については、薬価制度において活用することも検討に値すると考えます。ただし、指標で評価された企業について、その全ての品目を直ちに一律に評価してしまうということでは、納得が得られないと思います。
個別の品目ごとに企業指標を充足しているかなども考えられると思います。また、今回の企業指標は、安定供給の確保を評価の対象とするものですが、本来は品質の確保も重要であり、例えば、自主回収に至った頻度や、品質改善に向けた取り組み等も企業指標に加えることについても検討が必要ではないかと思います。
3つ目のポツと、次の「2.薬価制度における取り扱い」については、まとめてコメントします。企業区分の充足具合に応じて3区分に分けて評価することと、これまでの薬価制度改革において、後発医薬品の価格帯が複雑化しないように対応してきたこと、この二つの整合性に注意しつつ検討を進めるべきだと考えます。
また、論点にある通り、採用する評価項目や適用する算定ルールについては、現時点で対応可能なものから試行的に実施し、検証していくことが必要だと考えますが、もう少し具体的な内容に基づいて今後議論する必要があると考えます。私からは以上です。ありがとうございました。
安川部会長:森委員よろしくお願いいたします。
森委員:ありがとうございます。まずは医薬品の安定供給についてです。供給問題が発生してもうすぐ3年経ちますが、改善の兆しが全く見えません。さらに、インフルエンザ、新型コロナの同時流行の影響により、鎮咳剤、去痰剤などの入手に大きな支障をきたしており、現場は医薬品の入手、患者への対応等で疲弊している状況です。
こうした状況の中、持続的に安定供給体制を確保するための方策として、論点1の1ポツにある企業指標を用いて薬価制度に活用することに異論はありません。ただし、薬事承認、薬価収載された医薬品は、品質を確保し、安定供給することを約束して企業は上市していることが前提にあるということは忘れてはいけません。
また、論点1の2ポツの評価の手法については、整理していくことに異論はありませんが、項目の中で、余剰製造能力、メーカー在庫の確保など企業の供給能力、自社理由による出荷停止、出荷量の制限、他社への自社品目の供給実績等は特に重要となるもので、評価上の重点事項となるような仕組みとすべきと考えます。
また資料27ページ(安定供給を確保するための企業体制)にある、安定供給に関する情報の公開といったものは、企業として当然すべき取り組みと思われるので、そのような項目をどのように評価していくかは具体的な考え方を示していただく必要があると考えます。
次に、論点1の3ポツの評価結果の取り扱いについてです。今回示された項目で十分かどうかも含め、実際に運用してみないとわからない点があります。なので試行的に導入し、その成果等を検証して、今後の改定において、見直していくことについて異論はありません。ただ、資料37ページ(企業指標の評価方法等)では、評価結果自体は公表しないとありますが、安定供給が確保できる企業の可視化、当該企業の品目を医療現場で選択しやすしやすくする目的もありますので、評価結果の公表のあり方、医療現場への伝え方については検討すべきと考えます。
論点2ですが、令和6年度薬価改定においては、企業側が準備する期間が必要なことなどもあり、現時点で評価可能な項目のみを対象として安定供給に支障をきたさないよう、十分配慮しつつ試行的に実施すべきです。評価の低い企業であっても、大きく不利になるような対応は、これにより安定供給に支障が生じて現場が混乱する可能性もあるので、取るべきではないと考えます。
資料40ページ(企業指標の薬価における取扱いの考え方)に活用の観点がございますが、薬価の下支え措置を適用しない形で活用することは、供給問題を悪化させる懸念がありますので慎重に考えるべきです。後発品の収載時、改定時の価格のところで活用することが良いと思いますが、どれくらいの影響があるかシミュレーションが必要です。
最後に安定供給については、流通改善もセットで議論すべきと考えます。厚生労働省におかれましては担当部局とも引き続き連携して、流通改善の考え方や取り組みを示していただき、安定供給体制の確保に向けた議論ができるようにお願いいたします。私からは以上です。
安川部会長:ありがとうございました。他にいかがでしょうか? 先に松本委員よろしくお願いいたします。
松本委員:はい、ありがとうございます。本日の議題は後発医薬品ということですけども、個別の論点に行く前に安定供給に関する基本的な認識を申し上げたいと思います。そもそも欠品や出荷調整は法令違反を発端としたものであり、さらに今回新たな不正が発覚したということで供給不安が解消されるどころか、問題が悪化するのではないかという懸念さえ抱いております。
ここまで不祥事が続くと、産業構造というよりも、業界の体質に関して疑問を持たざるを得ません。薬価制度上の課題がないとまでは申し上げませんが、仮に薬価が低すぎて、製造管理や品質管理に影響しているということであれば、まずは適正な価格で取引すべきであり、令和5年度改定の特例措置のように、値引き販売をして薬価を上乗せするということを繰り返すべきではないというふうに考えます。
また2年前も、今回も、業界最大手(企業)の不正ということからいたしますと、大規模化を進めることで、これが安定供給に繋がるとは到底考えにくい状況にございます。健保組合からも、後発品の使用を患者に進めて良いものかという悩みの声が届いております。行政には指導力を発揮していただき、業界として早急に国民の信頼を回復していただきたいと思います。
それでは以上の観点を踏まえまして資料43ページの論点に沿ってコメントいたします。
まず企業指標の導入と評価については、薬価制度において活用することは必要だと考えております。ただ、資料38ページ(企業評価のための指標とその準備状況)に示された指標は、全てが揃って初めてバランスを取ると評価になると考えております。現時点で把握可能な指標だけで薬価制度上の取り扱いに差をつけることで、偏った評価なのではないかという懸念がございます。
さらに、資料17ページ(後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会中間取りまとめ概要)にあります通り、評価の目的は、品質が確保された後発品を安定供給できる企業の可視化であり、あまりにも当たり前すぎることでございますが、資料38ページ(企業評価のための指標とその準備状況)の指標で、その大前提となる品質をどのように担保できるのか、これについてはいささか疑問を持っております。
一旦シミュレーションしてみて、過去に不正を起こした企業が高い評価になるようなことであれば、指標そのものを改めて検討していただきたいと思います。
続きまして薬価制度に対する取り扱いについてコメントいたします。品質確保を前提として、安定供給が可能な企業を適切に可視化できるのであれば、企業の努力を促すためにも、薬価に差をつけようということ大いにすべきだというふうには考えます。
しかし、先ほど申し上げましたように、安定供給の不安が解消される見通しが立たないなかで、令和6年度改定から薬価に差をつけることにより、かえって安定供給の問題が悪化する懸念もあります。試行的導入であっても試行が終わったら薬価を戻すということにはならないと思いますので、慎重に判断をいただきたいと思います。私からは以上になります。
安川部会長:はい、ありがとうございます。続いて鳥潟委員お願いいたします。
鳥潟委員:はい、ありがとうございます。概ね皆さまが発言された内容と同じになりますが、供給不安を改善するための解決には、品質が確保された上での安定供給が欠かせない点だと思います。それが市場で正しく評価されることにより、結果的にその企業が優位になることで価値が上がっていく、顧客からも認められる、というようなことにつながるスタートポイントを作っていただきたいと思います。以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございます。他にご意見ありますでしょうか? 眞田委員お願いいたします。
眞田委員:はい、ありがとうございます。私からは企業指標の導入とその評価に関しまして資料34ページに示されておりますように「企業評価のための指標」と、この中で後発品企業の安定供給への取り組み、あるいは予備対応力や供給実績等を客観的に評価する仕組みを構築していくというその方向性に異論はございません。
ただ、その中で特に余剰生産能力などの予備対応力があるということは安定供給に重要な視点があるというふうに考えます。資料38ページを見る限りにおいては、予備対応力を評価するには準備期間が残念ながら必要だということでありますけれども、その重要な項目は早急に評価ができるように検討を加速して進めていただきたいと要望したいと思います。以上であります。
はい、ありがとうございます。他にいかがでしょうか? 本日の議題は企業情報の可視化あるいは業界の体質、品質確保といった問題を含んでおりますので、ここでぜひ専門委員の方々からもご意見を頂戴できればと思いますがいかがでしょうか? では石牟禮委員お願いいたします。
石牟禮委員:はい専門委員の石牟禮でございます。ただいま委員の皆様方からご議論いただきました通り、現在、安定供給に不安を生じている状況の中で、こういった指標を活用することによって手法を可視化することで安定供給の継続的な体制を評価いただくという方向性について、この論点沿って進めていただければというふうに考えております。
品質を確保した上での安定供給は当然のことではありますけれども、法令違反等があった企業の分まで追加して対応しているという企業があることもまた事実でございます。そういったことについても評価いただけるような仕組みになればというふうに考えております。以上でございます。
安川部会長:ありがとうございました。他にいかがでしょう? 事務局から特に何かありますでしょうか? 事務局お願いいたします。
薬剤管理官:薬剤管理官でございます。委員の皆様方から様々なご指摘、ご懸念などもいただきましたので、その点も改めて整理し、あと各項目で今回示したものに関しての判断の仕方とか、どういったことを評価するのかを含めて次回以降の議論で示していければと考えております。
安川部会長:はい、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。他にいかがでしょうか? もし他にご質問等もないようでしたら、本件に係る質疑はこのあたりとさせていただきます。事務局におかれましては、質問等を踏まえて関係する資料等の準備をお願いするとともに、本議題に関しては論点を踏まえた議論を次回以降、進めていくということで今後もよろしいでしょうか? はい、ありがとうございます。それでは今後事務局において、本日いただいたご意見を踏まえてご対応いただくということでお願いを申し上げます。
本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局よりご連絡をいたしますのでよろしくお願いいたします。それでは本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。