三重大汚職事件で名古屋高裁 元教授に2審も有罪判決 「MRの供述も週報で裏打ちされている」と評価
公開日時 2023/10/24 04:51
三重大学医学部附属病院への医薬品や医療機器の納入に便宜を図る見返りに、小野薬品等から現金を受け取ったなどとして、第三者供賄と詐欺の罪に問われた同病院臨床麻酔部元教授・亀井政孝被告の控訴審判決が10月23日、名古屋高裁であった。杉山愼治裁判長は懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役4年)とした1審の津地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。亀井被告の主任弁護人は閉廷後、記者団の取材に対し、「疑問が多い判決だ。上告についてはこれから考えたい」とコメントした。
争点は、1審判決で認定された関係者の供述や、小野薬品のMR(当時)が作成した週報の記述などの事実が誤認にあたるかどうか。これまでの裁判で亀井被告は、薬剤発注をめぐる第三者供賄罪の成立について、「薬剤の効能に着目して積極的に使用していく方針を採用しており、賄賂には当たらない」、「週報は(MRが)社内での自己評価を向上させるアピールのためのもので、医師が実際に述べていないことも記載されている」などと主張。1審判決は、「判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある」として無罪を訴えていた。
◎「企業による寄附が処方量の増加という被告人の職務との間に対価性が認められる」
名古屋高裁の判決では、「上司が同行して被告人に面会したこともあり、被告人が全く述べていない内容をMRが勝手に創作したとは考えられない。MRの供述も週報によって裏打ちされていると評価した原判決に誤りはない」などと指摘。「製薬企業による大学側への寄附が、薬剤の処方量の増加という被告人の職務との間に対価性が認められることは明らかだ」と結論付けた。そのうえで「所論のような事実誤認はない」として、亀井被告の主張を退けた。
◎オノアクトを投与したように装い診療報酬を搾取 「詐欺罪の成立に事実誤認はない」
また、小野薬品のオノアクトを投与したように装い、診療報酬を搾取したとされる詐欺罪についても、他職種間ミーティングで薬剤部が問題視していたことなどから、「状況は被告人にも当然伝えられていたと考えられるため、詐欺罪に故意は認められる」などと指摘。「詐欺罪の成立にも事実誤認はない」と述べた。
亀井被告はネイビーのスーツ姿で出廷し、判決を言い渡された約40分間、真っすぐ前を向いて判決文の読み上げに耳を傾けていた。
判決によると、亀井被告は2018年、小野薬品の薬剤を積極的に使う見返りに、同社から大学名義の口座に寄附金名目で200万円を振り込ませたほか、部下の元准教授と共謀し、19年~20年、同社の薬剤を使ったとする虚偽の明細書を提出して診療報酬計約80万円を詐取したとされる。医療機器納入に便宜を図る見返りとして、日本光電工業に、自身が代表理事の団体の口座に200万円を振り込ませたとされる第三者供賄罪は一貫して認めており、津地裁は賄賂の受け皿となった法人に追徴金200万円も言い渡していた。