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薬価算定組織 移転価格に問題意識 開示度低い品目は「営業利益率限定的に」 類似薬効で比較薬の柔軟な選定も

公開日時 2023/08/24 06:00
薬価算定組織(前田愼委員長)は8月23日の中医協薬価専門部会に、2024年度薬価制度改革に向けて意見書を提出した。薬価制度の透明性の観点から、原価計算方式での移転価格に問題意識を示し、算定に際して平均的な営業利益率よりも低い範囲で運用することを提案した。一方で、開示をさらに進める観点から、開示度が高い品目へのインセンティブも提案したが、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が「本末転倒」と断じるなど、すでに反発の声も出た。薬価制度の透明性の観点から、原価計算方式の限界も指摘される中で、類似薬効比較方式をさらに推進する必要性を強調。「比較薬の選定をこれまでより柔軟に行うこと」も提案した。

◎22年度改革で加算係数ゼロも依然開示進まず 89%の品目が開示度50%未満

薬価算定組織は、「薬価算定の妥当性・透明性の向上」を柱に据え、原価計算方式における開示度向上へ改革を行うことを提案した。22年度薬価改定で開示度50%未満の場合は加算係数をゼロに引下げたが、それ以降23年5月までに原価計算方式で薬価収載された成分の89%(16成分/18成分)が開示度50%未満で、「引き続き薬価の透明性確保のための取組みが必要な状況にある」と指摘した。また、移転価格として日本に導入される品目の割合が80%以上の企業における営業利益率は平均して6.6%、90%以上の企業においては5.9%であり、平均的な営業利益率(16.6%)の2分の1以下だったとした。

そのうえで、「移転価格として日本に導入される品目については、原価計算方式での算定において、営業利益率を平均的な営業利益率より限定的な範囲で適用することとしてはどうか」と提案した。一方で、「開示度が相当程度高い品目については、インセンティブとして何らかの評価を検討してはどうか」とも提案。類似薬効方式での算定を進めるため、「比較薬の選定をこれまでより柔軟に行うこと」も提案した。

◎開示度高い品目へのインセンティブ 診療側・長島委員「本末転倒」

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「営業利益を平均的な営業利益率に固定することは、実態を反映していない可能性がある」として、引き続き検討することを求めた。一方で、開示度が高い品目へのインセンティブについては、「原価に基づいて薬価を算定するという原価算定方式の本来の目的から逸脱してしまっており、本末転倒」と強く反発した。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「元々他産業と比べて平均的な営業利益率がかなり高いという印象を持っている」と述べたうえで、「ドラッグ・ラグ/ロスにも配慮しつつ、輸入医薬品の営業利益について製薬産業全体の平均より低い値で計算するというのは実態に沿った対応であり、賛同する」と述べた。一方で、開示度が相当高い品目へのインセンティブについては、「そもそも公的な薬価を決める上で原価を開示することはある意味当然。あえて評価する必要性に疑問はあるが、開示が進むのであれば、どのような範囲でどのように評価するのか検討すること自体を否定するものではない」と述べた。また、類似薬の柔軟な選定については、「原価の開示が進まないから類似比較方式を拡大するという論理ではなく、臨床上の位置づけ、あるいは患者の納得性という視点で議論をぜひ進めていただきたい」と要望した。

◎石牟禮専門委員「まさに開示することがなかなかできないという状況」

専門委員の石牟禮武志氏は、欧米諸国では原価を積み上げて評価を行う国はないとしたうえで、「現在の新たなモビリティを活用した医薬品の開発サプライチェーンが複雑化しており、複数国にまたがる費用について全ての利益を提出することが困難である状況だと認識している」と強調。移転価格についても、「各国との関係で低いものを選ぶというような取り扱いがなされている」と理解を求めた。「開示度が低い品目が多いという現状が残っているということは、まさに開示することがなかなかできないという状況を示しているものというふうに理解をしているところだ」と述べた。

◎新薬創出等加算 品目要件拡大に診療側・長島委員「比較薬の範囲は薬価制度全体で整合性を」

薬価算定組織では、新薬創出等加算の品目要件についても、1番手の品目と薬理作用が異なる場合であっても、有用性加算等に該当する品目の収載から3 年以内に収載され、3 番手以内のものに限り、品目要件を満たすものと扱うことを提案した。診療側の長島委員は、「評価対象を拡大することで、市場拡大再算定における類似品、いわゆる共連れの範囲も拡大することも考えられるのではないか。比較薬の範囲については、薬価制度全体で整合性を図るべきではないか」との見解を示した。

新薬創出等加算については、「有用性系加算に該当しないものであっても、小児に対する効能・効果又は用法・用量の開発に関して特に評価すべき品目」を対象にすることも薬価算定組織から提案された。

◎市場拡大再算定 類似薬効比較方式「使用実態の著しい変化」なくとも対象に

市場拡大再算定については、類似薬効比較方式の「使用実態の著しい変化により収載時と状況が変わった場合」との要件を除き、原価計算方式と同様に扱うことを提案した。一方で、市場拡大再算定について、企業の予見性への配慮や近年の競合性の複雑さを踏まえ、類似品の取扱い、いわゆる共連れの見直しや、再算定による薬価の下げ幅を緩和する「補正加算」の対象拡大を提案した。

診療側の長島委員は、「今回、企業の予見性への配慮や、近年の競合性の複雑さが課題となっているが、市場拡大再算定の制度趣旨の核心は、国民皆保険の持続性を確保するという点にあるはず。また、共連れルールを導入したのも、市場で競合している医薬品については、公平な薬価改定を行うというのがそもそもの趣旨であったはずだ。今後、検討を進める際には、そうした趣旨が骨抜きにならないよう、注意深く検討していく必要がある」と強調。類似品の判断は、「様々な要素を総合的に考慮する必要があり、明文化するのは難しいのではないか」と指摘し、「公的保険制度における薬剤費の適切な配分を踏まえつつ、中医協で判断するのが適当であると考えている」と述べた。

支払側の松本委員は、「いわゆる共連れルールについては、前回の見直しの影響をしっかり検証した上で議論を進めるべき。類似比較方式の品目については、使用実態の著しい変化がなくても、再算定の対象とするということについては賛同する」と述べた。

石牟禮専門委員は、「再算定については、収載後に収載時の要件変化があった場合に価格の見直しを行うことが原則と理解をしており、その原則から原価計算方式と類似比較方式では取り扱いを変えていると理解している。検討される際には、再算定の原則についてどのように考えるのかということも踏まえて、慎重にご検討いただきたい」と要望した。

◎制度趣旨踏まえた検討求める 「全体としての整合性」、「全体の優先度を」

意見書は、①イノベーションの評価、②薬価算定の妥当性・透明性の向上、③状況の変化に応じた薬価の適正化-が柱。

診療側の長島委員は、「制度を見直す際は、課題や要望を踏まえ、単に場当たり的に変更するべきではない。その制度が創設された際の趣旨や目的をしっかりと踏まえた上で、制度変更により想定される効果やマイナス面も含む影響を確認し、その変更の必要性、方法としての適切性、全体としての整合性、さらに許容範囲を判断すべき」と表明。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「まず過去どのような背景、経緯に基づき、現行の算定ルールが設けられたのか。現在どのような状況の変化や課題が生じているのかとともに算定ルールを変更することで、財政面を含め、どのような影響が生じるのか。それらを含め全体としてどのように優先度をつけていくのか、などデータに基づいた議論とともに、公的保険制度における薬剤費の適正な配分メカニズムとしての機能を失わないよう、メリハリのある対応が必要」との考えを示した。

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