ギリアド・ブライスティング社長 「2030年トップ10オンコロジー企業」目指す 日本市場2桁成長へ意欲
公開日時 2023/07/14 04:52
ギリアド・サイエンシズ ジャパンのケネット・ブライスティング社長は7月13日の記者会見で、「2030年にトップ10オンコロジー企業」を目指す方針を明らかにした。同社はウイルス・免疫領域の革新的新薬の創製で世界的なプレゼンスを発揮してきたが、最近はCAR-T細胞療法や抗体薬物複合体(ADC)トロデルヴィ(Trodelvy)など、開発プロジェクトの70%超をオンコロジー領域のグローバル新薬候補が占めるに至った。22年売上は10%超、23年も2桁成長を目指す。ブライスティング社長は、「我々には非常にリッチな臨床開発計画がある。とくに第3相段階には全22試験中、19試験がオンコロジー領域だ」と明かし、「この領域で強固なプレゼンスを確立し、リーダーシップ・ポジションを奪取する」と力を込めた。
ブライスティング社長が強気に振る舞う背景の一つには、今年6月23日にCAR-T細胞療法・イエスカルタ点滴静注の国内製造販売承認を、第一三共からギリアド日本法人に承継できたことがある。イエスカルタをめぐっては第一三共とカイト(kite)が2017年1月にパートナーシップ契約を結んでいる。ただ、その後、カイトがギリアドの傘下に入ったことで契約が変更され、今回の承継に至った。
◎「大きなマイルストーンを追加した」
この第一三共からの承継をブライスティング社長は、「大きなマイルストーンを追加した」と表現。“既に一つ達成したもの”と位置づけながら、「カイト(Kite細胞治療事業本部)がCAR-T細胞療法イエスカルタを日本で単独で情報提供を行っていく。22年12月には大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)を取得し、非常に価値ある治療選択肢として日本の患者さんに使えるようになった」と述べた。
◎2024年に考えているマイルストーン トロデルヴィの乳がん適応に期待
続けてブライスティング社長は、「2024年に考えているマイルストーン」と前置きし、抗体薬物複合体(ADC)のトロデルヴィについて、「最初の乳がんの適応が(24年に)承認されると考えている」と見通した。同剤については常務執行役員の表雅之臨床開発本部長が、治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者を対象とした第3相試験の結果を紹介。トロデルヴィの無増悪生存期間(PFS)は、対照群の化学療法剤に比べて約3倍に延長、全生存期間(OS)も約2倍に延長したと報告した。ただ、この第3相試験に日本人が含まれていなかったことから、「日本人対象の第1相試験で安全性を確認して、第2相試験を実施しているところ」と説明した。日本国内の開発プログラムについて、①トリプルネガティブ乳がん、②膀胱がん、③HR+/HER2-乳がん、④非小細胞肺がん-で8つの臨床試験が進行中であると明かした。
◎Kite Pharma Inc.・ビルド氏 国内に6つある認定治療施設の数を今後増やす
この日の会見ではKite Pharma Inc., a Gilead Company・コマーシャル部門グローバル・ヘッドのワーナー・ビドル氏も登壇した。ビドル氏は、「この6年間、カイトは世界中で細胞療法のリーダー的なポジションを確立してきた」と強調。日本での細胞治療のアンメットニーズに触れながら、非ホジキンリンパ腫で毎年30万人ぐらいの患者が診断されているとの認識を示し、「全体の60%以上が最初の治療から10年以内に再発している。長期的な寛解あるいは治癒にもたらすイエスカルタを届けることが重要になる」と述べた。さらに、現在、日本国内に6つある認定治療施設の数を今後増やすことで、「患者さんがもっとこの治療を受ける可能性が増えてきて、そして最終的にはもっとポジティブな結果をもたらすことが可能になると思っている」とコメントした。
◎ドラッグ・ラグ問題でブライスティング社長 「どの患者さんも決して置き去りにしない」
ブライスティング社長は日本国内で話題のドラッグ・ラグ/ロス問題にも言及した。社長は、「私達は全てのアセット、そして全ての開発薬剤を日本の患者さんにお届けしたいと思っている。これは私達の責任として感じているものだ。どの患者さんも決して置き去りにしない」と強調。「我々は患者に対してサービスを提供し、享受できるようにしていきたいと思っている」と述べた。