ミクス編集部 17社が本社、支店、営業所の「機能・役割」を刷新 働く場の見直しで生産性向上を期待
公開日時 2023/06/14 04:52
ミクス編集部が製薬企業60社を対象に行ったアンケート調査によると、直近3年間で、本社、支店、営業所の「機能・役割」の見直しに着手した企業が17社あった。内訳は、内資系10社、外資系4社、GEメーカー3社。見直しを行った理由を聞いたところ、「疾患領域に応じた活動ができるように見直した」、「CNS営業所の設置」(ともに内資系)など、ポートフォリオの変化やそれに伴う組織再編などがある中で、コロナ禍に伴う顧客の変化やMRの生産性向上や働き方改革に主眼を置いた”働く場の刷新“を掲げる企業も散見され、注目された。
◎コロナ禍を経て始まった営業・マーケティングのビジネス転換
コロナ禍を経て、MR活動をより機動的な体制に転換することを目的とした組織改革が始まっている。支店や営業所などオフィスに対する考え方の刷新は最たるものだ。コロナが一定程度終息し、MR活動もリアル回帰が強まる中で、コロナ禍の3年間で培ったオムニチャネル型の営業活動を定着させ、さらにアジャイルな意思決定と顧客(医師や薬剤師など医療者の)ニーズに即応できる情報提供活動に対してMR一人ひとりの意識づけが求められる時代となった。まさに、MRにとっての“目利き”がこれまで以上に重要視されている。
一方で営業本部内の意思決定プロセスも、決定権者の階層を減らし、フラット化する方向に動き出している。まさに営業・マーケティングのビジネスモデルの転換を実践するものだ。加えて、MR活動そのものが従来のPush型からPull型へのアプローチが求められるようになっており、医師の疑念や疑問、さらにはデジタルコンテンツを視聴した後の対応がより重視されるようになってきた。MR側も、医師側から投げかけられる質問や疑念を本社とタイムリーに共有し、その“解”をアジャイルに医師に返す活動が重視されるようになった。まさにデジタル時代における時間軸や地理的要件を突破したMR活動を実践することになる訳だ。
◎オフィス刷新の狙い スピード感、医療従事者へのアクセス、生産的な働き方へのシフト
オフォス刷新については本誌調査に多くの声が寄せられた。「新型コロナの感染拡大を契機とした情報提供活動の変化に伴い、柔軟にスピード感を持った対応ができるように体制に変更した」(内資)、「医療従事者へのアクセスを主体にした効率性」(内資)、「より効率的に生産的な働き方へシフトするために、コミュニケーションを重視しつつも、対面とオンラインを併用した会議等の実施を進めている」(外資)、「医療従事者へのアクセスを主体にした効率性」(内資)などだ。
◎オフィスの役割は“対話型コミュニケーション” 偶発的な会話からのアイデア創出への期待
では、オフィス刷新後の体制はどうなっているのか。代表的なところではアステラス製薬が2020年4月の支店閉鎖、22年4月の営業所廃止に伴い、各都道府県に1カ所を基本としたコミュニケーションオフィスを設置した。こうした動きは外資系企業にも拡大している。日本ベーリンガーインゲルハイムは、全国各地の事業所を“コミュニケーションセンター”として全国6か所、営業所は“コミュニケーションポイント”に改称し、約40か所設置する予定で、移転作業を進める。同社は、“オフィスをよりフレキシブルなワークプレイスとする”トランスフォーメーションを進めていると説明。「MRは自らの判断で働く場所を選択し、効率的に業務を行うことができるようになるため、各自が必要に応じてオフィスを活用することで、顧客対応にさらに注力できると考えている。また、オフィスがあることよりFace to Faceで話し合う機会が生まれるため、五感を使ったより深いコミュニケーションやスキルアップの場、偶発的な会話からのアイデア創出など、より一層の成果の創出や社員の中長期的な成長につながることを期待している」とコメントを寄せた。
このほか本誌調査に対して、「アクセスルームを活用したモデルに転換」、「コロナの影響により、柔軟でハイブリッドな働き方が大きく加速し、一般的なものとなった。この変化を受けとめ将来を予測しながら、仕事のプロセスやインフラを最適化し、社員の柔軟な働き方とウェルビーイングの向上を図ることを目的に、アクセスルームを活用したモデルへの転換を決定した」(いずれも外資)などの声に目を引いた。
◎本社と営業現場の距離感が近づくことでスピード感が向上
本社と営業現場の距離感が近づくことで、スピード感が向上することに期待を寄せる声もある。「5支店から3統括営業部に減らした。地域医療のパートナーとして柔軟にスピード感を持って医療現場のニーズに対応した情報提供活動を実践するため」(内資)などの声が寄せられた。