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骨太原案 創薬力強化へ「研究開発型ビジネスモデル」への転換促す 長期収載品の自己負担見直しも

公開日時 2023/06/08 04:53
政府は6月7日の経済財政諮問会議に、骨太方針原案を示した。原案では、“創薬力強化”に向けて、「研究開発型のビジネスモデル転換促進」することを明記した。その方策として、イノベーション評価などの薬価上の措置や、薬事など創薬環境の整備を盛り込んだ。内資系企業を中心に長期収載品依存が指摘される中で、「長期収載品の自己負担の見直し」も明記し、先発メーカーのビジネスモデル転換の必要性を促す内容となった。2024年度にトリプル改定を控えるが、「物価高騰・賃金上昇」と「保険料負担の抑制」の両面の観点を踏まえ、「必要な対応を行う」との表現にとどめた。骨太方針は、与党調整を経て、今月中旬に閣議決定される見通し。

◎イノベーションの評価などの更なる薬価上の措置 アカデミアとの伴走支援も明記

骨太方針の原案では、“創薬力強化”を前面に押し出し、「研究開発型のビジネスモデル」に転換を促すための環境整備を盛り込んだ。日本がバイオ医薬品への移行に立ち遅れたことなどが指摘される中で、「新規モダリティへの投資や国際展開を推進するため、政府全体の司令塔機能の下で、総合的な戦略を作成する」ことを盛り込んだ。

施策としては、「イノベーションの評価などの更なる薬価上の措置」に加え、革新的新薬創出に向けた環境整備を列挙。「全ゲノム解析実行計画の推進」も盛り込んだ。臨床情報と全ゲノム解析の結果などの情報を連携して搭載する情報基盤を整備。戦略的に蓄積したデータの利活用を創薬などに活かし、将来的にはがんや難病などを克服することを目指す方向性を盛り込んだ。革新的新薬創出に向け、創薬エコシステムの重要性も指摘されるなかで、「大学発を含むスタートアップへの伴走支援」も盛り込んだ。

◎薬事上の課題も列挙 国際共同治験に参加するための日本人データの要否の整理も

ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスが懸念される中で、革新的医薬品の迅速導入に向けた環境整備も盛り込まれた。日本での治験のコストの高さなどから国際共同治験に入れないことなども指摘される中で、「臨床開発・薬事規制調和に向けたアジア拠点の強化、国際共同治験に参加するための日本人データの要否の整理」など、対応を強化する方向性も示した。また、小児や希少疾病などで、ドラッグ・ラグが指摘されることを踏まえ、「小児用・希少疾病用等の未承認薬の解消に向けた薬事上の措置と承認審査体制の強化」を推進することも盛り込んだ。

◎日本の医薬品費GDP比は先進国より高く 国民負担軽減の観点も

一方で、「GDPに占める日本の医薬品等の支出は他の先進国よりも高い一方、世界の医療用医薬品の販売額における日本国内の販売額のシェアは低下しており、こうした状況の中で国民負担の軽減とイノベーションの推進を両立する観点から具体的な取組を進める必要がある」ことも明記。改革メニューとして、「長期収載品等の自己負担の在り方の見直しなどを進める」ことを盛り込んだ。後発品の使用浸透が進み、数量シェア8割に達するなかで、金額ベースでは4割にとどまっており、諸外国と比べても低い水準にとどまっており、長期収載品が一つの焦点となっている。なお、諮問会議の民間議員からは、給付負担の見直しをする際に、選定療養の活用などの声もあがっている。

このほか、後発品を中心とした安定供給が課題となるなかで、「後発医薬品の産業構造の見直しを図る」ことも盛り込んだ。後発品の産業構造をめぐっては、少量多品目生産などの構造的課題も指摘されている。

◎24年度トリプル改定「必要な対応を行う」 「リフィル処方の活用推進」も

24年度には、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定が予定されるが、「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担の抑制の必要性を踏まえ、必要な対応を行う」とした。「リフィル処方の活用を進める」ことも明記。保険者、都道府県、医師、薬剤師などの必要な取組を検討し、実施するとした。

少子化対策が焦点となっているが、骨太方針には財源については明記しなかった。ただ、「医療・介護等の不断の改革により、ワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要」とした。医療機能の分化・連携をさらに推進する必要性を強調。「都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進する」ことを盛り込んだ。このほか、「かかりつけ医機能が発揮される制度の実効性を伴う着実な推進、地域医療連携推進法人制度の有効活用、医療法人等の経営情報に関する全国的なデータベースの構築」のほか、「医療専門職のタスク・シフト/シェア」なども盛り込んだ。このほか24年秋に健康保険証を廃止するなど、医療DXの推進も盛り込まれた。

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