アステラス製薬・岡村社長CEO アイベリック・バイオ社買収を報告 イクスタンジ後「第3の柱」に期待
公開日時 2023/05/08 04:52
アステラス製薬の岡村直樹社長CEOは5月1日、オンライン説明会に臨み、米国のバイオ医薬品企業 IVERIC bio, Inc.(アイベリック・バイオ社)について米子会社を通じ約59億ドル(約8000億円)で買収したと発表した。アイベリック・バイオ社は、リードプログラムAvacincaptad Pegol(ACP)を有し、眼科領域に特化した治療薬の研究開発に注力している。岡村社長CEOは同社買収の戦略的意義について、「イクスタンジの独占的期間満了後の売上減少を補う製品として期待したい」と強調。2025年度~30年度に向けて同社の成長製品であるfezolinetantやパドセフとともにACPを「第3の柱」に位置づける考えを強調した。
◎岡村社長CEO「新たな収益の柱として2025年度の売上目標の達成を確実にする」
岡村社長CEOはアイベリック・バイオ社の買収について、「一つ目はリードプログラム ACPの獲得だ。ACP は地図状萎縮(GA)という、アンメットメディカルニーズが非常に高く規模の大きな市場に対し、標準治療となる可能性を有している。ACPが期待どおり承認されて発売することで、新たな収益の柱として経営計画 2021で掲げた、2025年度の売上目標の達成を確実にする」と意気込んだ。加えて、「二つ目にPrimary Focusの一つである再生と視力の維持・回復の将来的な発展につながる眼科領域の基盤ケイパビリティの確立があげられる」と述べ、同社が保有する眼科領域のコマーシャル、メディカル、研究開発における強みを取り込むことで、「私たちが保有しているプログラムをさらに推進できると期待している」と強調した。なお、アイベリック・バイオ社の従業員は約260人。約60人が研究開発、約90人がコマーシャルに属す。本社は米国ニュージャージー州パーシッパニー。
◎眼科疾患領域におけるリーディングポジションとしての地位確立へ
ACPは、補体因子であるC5の阻害作用を有するPEG化一本鎖RNAアプタマーで、地図状萎縮(GA)を伴う加齢黄斑変性などを対象疾患として開発を進めている。米FDAからブレークスルーセラピー指定を取得しており、今年2月にFDAへの承認申請が受理され、優先審査指定を受けている、なお、審査終了目標日(PDUFA Date)は 8月19日。
アステラス製薬は、すでに網膜色素上皮細胞ASP7317についての第1相試験を進めているところ。ASP7317はGAを伴う加齢黄斑変性、Stargardt病を適応症とするリードプログラム。岡村社長CEOは、「ASP7317 に ACP が加わることで、さまざまな重篤度の GA患者に対する治療手段を提供できるようになり、今後の強固な製品ポートフォリオの構築につながる」と期待感を表明。さらに、「アイベリック・バイオ社が有する専門家や医療機関などのネットワークへのアクセス、GAにおいて臨床開発を成功させたノウハウ、網膜疾患における遺伝子治療に関連するタレントやアセットなどを獲得することができる」と述べ、眼科疾患領域におけるリーディングポジションとしての地位確立を目指す考えを示した。
◎「先方から会社買収も視野に入れたプロセスが走るという連絡を頂いた」
今回の買収の経緯について岡村社長CEOは、「当初は米国外のライセンス案件としてアイベリック・バイオ社と話をさせて頂いた」と明かしながら、「先方から会社買収も視野に入れたプロセスが走るという連絡を頂いた」と述べ、「そこから会社買収に提携形態を切り替えて評価してきた結果、今般の契約締結に至った」と説明した。時期については、「ライセンスの協議を始めたのは多分、昨年(2022年)ぐらいだったと思う。それが3月になって会社買収に切り替わったという流れ」と述べた。