旭化成・工藤社長 中計の営業利益目標の達成「2~3年遅れる」 ヘルスケア領域でのM&Aなど投資拡大
公開日時 2023/04/12 04:50
旭化成の工藤幸四郎社長は4月11日の経営説明会で、中期経営計画2024に掲げた営業利益目標の2700億円達成が2~3年遅れるとの見通しを明らかにした。この結果、24年度の営業利益は2000億円に修正。うちヘルスケア領域も当初目標800億円を600億円に見直した。ただ、クリティカルケア、グローバルスペシャリティファーマ、バイオプロセスなどのヘルスケア領域を同社の重点成長分野に掲げ、引き続き積極投資で臨む姿勢を強調した。工藤社長は、22年5月に買収を完了したBionova社を例にあげながら、「M&A投資案件はCOVID-19などの事業環境変化で遅れはあるものの当初の成長戦略に沿って拡大する」と意気込んだ。
◎旭化成ファーマと米Veloxis社の連携 免疫・移植周辺疾患領域で進化を加速
工藤社長は、ヘルスケア領域の成長戦略について説明した。グローバルスペシャリティファーマについては、「旭化成ファーマとVeloxis社(米国)の連携により、免疫・移植の周辺疾患領域にフォーカスしたグローバルスペシャリティファーマの進化を加速させたい」と強調した。旭化成ファーマのコア領域が整形外科、救急、免疫領域であるのに対し、Veloxis社は移植領域をカバーしている。両社が組むことで、「免疫・移植」の周辺疾患や専門医にフォーカスしたグローバル展開が可能となる。工藤社長は、「両社が持つ知見、事業基盤を連携させて、新規薬剤の獲得を目指した事業開発、そして臨床開発、将来の販売を推進していく」と強調した。
◎グローバルスペシャリティファーマ 25年度売上高1500億円、30年度2000億円は堅持
グローバルスペシャリティファーマの事業見通しについては、「早期開発品の導入共同研究開発の促進により、持続的な成長を目指し、2025年度売上高1500億円、30年度は2000億円に成長させたい」と述べた。
◎Bionova社買収でバイオ医薬品CDMO事業参入「今後も加速度的な成長期待できる」
一方、バイオプロセス事業について工藤社長は、「昨年バイオ医薬品製薬企業に対して製造プロセス開発受託、抗体医薬品GMP製造受託サービスを提供するBionova社を買収し、バイオ医薬品CDMO事業への参入を果たした」と強調。「製造プロセス開発GMP製造能力の増強も決定しておりまして、今後も加速度的な成長が期待できると考えている」と期待感を表明した。このほかヘルスケア領域では、クリティカルケア事業として、患者サービス事業と医療インフラ事業の二つの分野に注力する方針。患者サービス事業では、無呼吸治療デバイス、睡眠時無呼吸症の在宅診断ソリューションとのシナジーを創出させ、利益拡大につなげる。また、医療インフラ事業については、医療従事者向けの除細動器やAED、人工呼吸器などを展開することで、「一桁台後半の安定した事業成長を狙っていきたい」と強調した。