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有識者検討会 革新的新薬の迅速承認「欧米に遅れず日本上市は加算」 国はメッセージ発信を

公開日時 2023/04/05 07:53
厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」では、革新的新薬の迅速な導入に向け、国が前向きなメッセージを発信する必要性を指摘する声があがった。成川衛構成員(北里大薬学部教授)は「欧米から遅れることなく、日本で上市したものについては加算する」、「日本で先に上市して外国価格調整を受けられなかったものについて後から外国で上市されて、高い薬価がつけば、引上げの調整をする」ことを提案。遠藤久夫座長(学習院大経済学部教授)も、現行制度でも早期上市の薬価上のインセンティブはあるとしたうえで、「より(この方向性を)強化していくことによって、ドラッグ・ラグ等々については、縮小する一つのインセンティブになると思う」と述べた。

◎成川構成員「外国で上市されて、高い薬価がつけば引上げ調整」

成川構成員は、「2015年以降、薬剤費が伸びてないというのは、事実だと思う。もし、日本の将来、特に医薬品の市場も含めて暗いイメージがだいぶまん延してしまっているのだとすれば、ぜひ検討会で明るい材料を打ち出すようなことをしたい」と表明。具体論として、「例えば欧米からそんなに遅れることなく日本で上市したものについては加算する、あるいは日本で先に上市して外国価格調整を受けられなかったものについて後から外国で上市されて、高い薬価がつけば、引上げの調整をする」ことを提案。「特に国内外の産業の方が聞いて少しシンプルに前向きなメッセージを出せるようなものというのを何か打ち出していくと、少し雰囲気も変わってくるのでは」と述べた。

遠藤座長も、「私も実は全く同意見だ」と表明。現行制度でも加算があるが、「必ずしも十二分に効果を持っているようには思えない」と指摘した。上市時に高い薬価を付け、「例えば5年間は有効だけれども、それからはもう順次下げていく」など例示した。そのうえで、早期上市の薬価上のインセンティブを「ドラッグ・ラグ等々については、縮小する一つのインセンティブになると思う。これは大きな制度改革をしなくても、今の薬価基準制度の中での議論でできそうな気がする」と述べた。

成川構成員は、薬事上の課題も指摘。オーファンドラッグの指定件数が欧米に比べて少ないことに触れ、「単に指定数だけで議論できないかもしれないが、もう少し門戸を広げるか指定のタイミングを早めるというふうな運用の問題かもしれないが、こういったことをやると企業の方々にとっても何か明るい材料になるのかなと思った」と述べた。さらに、小児の医薬品について、「臨床試験がやりにくいし、小児用の特殊な製剤はコストがかかるということもある。世に出したとしても採算が取れないという状況だ」と指摘。「日本でも、小児医薬品の開発を促すために薬事的なルールで再審査期間でデータ保護期間を伸ばしたり、薬価で加算制度を設けたり、あるいは最近ですと法律改正をして特定用途医薬品指定制度というものを作って小児の開発を促す努力はしている。しかし、なかなか十分には活用されていない。もう少し強いインセンティブや強制力を考えないと小児用医薬品の世界でも日本に薬が入ってこないというふうな状況がさらに拡大するのではないかと思っている。そのあたり、優遇措置というか、対外的な新しいインセンティブというか、アピールするようなことも含めて、何か政策を考え打った方が良いのではないか」と強調した。

◎芦田構成員 短期的には米国の新興バイオファーマの国内導入にインセンティブを

芦田耕一構成員(INCJ執行役員ベンチャー・グロース投資グループ共同グループ長)は、
革新的な新薬の迅速導入に向けて、2つの視点に分けて考える必要性を指摘。「短期的には、海外の、特にアメリカを中心としたエマージング・バイオファーマからの新薬の導入ということが課題だろう」と述べ、これが患者団体などからのドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの指摘につながっているとした。もう一つの観点として、「創薬ベンチャー支援や、エコシステム構築等々はむしろ国内の創薬力強化や、開発の強化ということだろう」として、これは分けて議論する必要があるとの見方を示した。

◎後発品の安定供給 3価格帯は見直して「銘柄別に戻す」 坂巻構成員

後発品の安定供給をめぐっては、3価格帯への集約や規格揃えが議論の俎上にのぼった。

3価格帯をめぐっては、成川構成員が「今後、後発品の数や企業数が集約されてくるのであれば、銘柄ごとの算定に戻すという大きな流れを考えるべきではないか。あるいは、すでに現時点でもいわゆる優良企業に対して銘柄改定するという選択肢もあるのでは」と持論を展開。坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大大学院教授)も、「特定の企業についての評価をするということを考えれば、3価格帯は見直して銘柄別に戻すべきだと私は考えている」と述べた。

いわゆる、後発品の規格揃えをめぐっては、香取照幸構成員(兵庫県立大大学院社会科学研究科特任教授)は共同開発がセットで導入されたことに触れ、安定供給に支障を来していると指摘。「それぞれの薬効の市場規模なり、全体として安定供給をさせるかというふうにちょっと考え方を変えないといけない」との見解を表明。三村優美子構成員(青山学院大名誉教授)は、規格揃えにより品目数が膨大になっていると指摘し、「後発薬全体として品目数の適正化、それぞれの分野に合わせた形でもう少しきめ細かい政策やっていただく必要があるのではないか」と述べた。

このほか、安定供給の観点から坂巻構成員は、「供給量に関するキャパシティ、あるいはその供給状況についてきちんと報告させる仕組みというものが必要だ。場合によってはそういった仕組み、取り組みについて薬価で評価したらどうか」と述べた。

◎三村構成員 財政上の問題と産業政策「ある意味バランスを

この日の検討会では、薬価制度だけでなく、医薬品産業政策を考える必要性を指摘する声も複数あがった。三村構成員は、「何よりも産業政策的視点が今まで、非常になかったということが今回の一番大きな問題だ。当然、財政上の問題と産業政策として、ある意味バランスを取りながら議論していくということがこれから重要だと思うので、まずは巡航速度に戻すために何をすべきか、考える必要がある」と述べた。

遠藤座長は、「製薬産業にとって見ると、薬価は非常に重要だが、あくまでも川下戦略の話。いかにして産業育成していくかという川上戦略は薬価政策と関連はあっても、もっと別な政策も多々ある話だ。両睨みの議論も当然必要になってくるということ」と述べた。

堀真奈美構成員(東海大健康学部・健康マネジメント学科教授)も、課題解決に向けて、「産業政策的な視点と、社会保障の体制、持続可能性の視点という両方を期待するというのがいいのではないかと個人的には思っている」と述べた。

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