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初の経鼻投与型インフルエンザ予防ワクチン「フルミスト」など6製品承認へ 薬食審・第二部会で了承

公開日時 2023/02/28 04:51
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は2月27日、第一三共の鼻腔噴霧インフルエンザ弱毒生ワクチンの「フルミスト点鼻液」など6製品を審議し、いずれも承認を了承した。正式承認されると、フルミストは国内初の経鼻投与型のインフルエンザ予防ワクチンとなる。投与対象は2歳以上19歳未満。また、阪大微生物病研究会の百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)、インフルエンザ菌b型(Hib)による侵襲性感染症を予防する5種混合ワクチンの「ゴービック水性懸濁注シリンジ」の承認も了承された。5種混合ワクチンも国内初となる。

◎エンハーツ HER2低発現乳がんの適応追加へ

報告品目は9製品で、この中には第一三共の抗体薬物複合体(ADC)・エンハーツ点滴静注に「HER2低発現乳がん」の適応追加が含まれる。HER2低発現乳がんの適応を持つ薬剤はエンハーツが初めて。HER2低発現乳がんは、乳がん患者全体の約半数が該当するとされている。

◎コミナティ筋注5~11歳用 オミクロン株BA.4-5対応2価ワクチンを追加へ

新型コロナ関連では、ファイザーの5~11歳用の新型コロナワクチンである「コミナティ筋注5~11歳用」に追加免疫に用いるオミクロン株BA.4-5対応2価ワクチンを追加することや、コミナティRTU筋注1人用製剤を特例承認することが確認された。このうち1人用製剤は、組成等は既承認の複数人用のコミナティRTU筋注と同一だが、バイアルへの充てん量が1人用となっている。厚労省は部会後の記者説明会で、両ワクチンとも「今後、速やかに薬事承認手続きを進める予定」と述べた。

武田薬品の新型コロナワクチン「ヌバキソビッド筋注」の追加免疫の対象年齢を現在の18歳以上から、12歳以上に引き下げることも、この日の部会で確認された。今後、速やかに添付文書改訂を行う予定。

なお、審議品目、報告品目(新型コロナ関連製品除く)とも、3月中に正式承認されるとみられる。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
フルミスト点鼻液(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン、第一三共):「インフルエンザの予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

4種類のインフルエンザウイルス(A型2種類、B型2種類)を含む鼻腔噴霧型のインフルエンザ弱毒生ワクチン。同ワクチンの接種により、抗原特異的血清中抗体及び粘膜抗体応答、並びに抗原特異的T細胞応答が誘導され、感染防御あるいは感染からの回復に重要な役割を果たすと考えられている。

正式承認されると、国内初の経鼻投与のインフルエンザ予防ワクチンとなる。用法・用量は、「2歳以上19歳未満の者に、0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLずつ)を鼻腔内に噴霧する」。投与対象年齢が2歳以上19歳未満となるのは、臨床試験デザインに基づく。

第一三共は英アストラゼネカの子会社のメディミューンから日本での開発・販売権を取得して開発。2016年6月に申請した。部会通過まで6年以上を要した理由について厚労省の吉田易範・医薬品審査管理課長は部会後の記者説明会で、承認申請後に追加データが必要となり、企業が国内試験を追加で行ったとした上で、「その臨床試験の成績においても、いろいろとプロトコルからの逸脱等の話があり、それに対する企業の対応、それからPMDAの審査、トータルでいろいろ時間を要したということに尽きる」と説明した。

ゴービック水性懸濁注シリンジ(沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオヘモフィルb型混合ワクチン、阪大微生物研究会):「百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎及びインフルエンザ菌b型による感染症の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品及び新医療用配合剤。再審査期間は8年。

同ワクチンは、既存の百日せき、ジフテリア、破傷風、不活化ポリオの4種混合ワクチンであるテトラビック皮下注シリンジに、Hibワクチンを加えたもの。Hibワクチンが新有効成分となる。用法・用量は、初回免疫が「小児に通常、1回0.5mLずつを3回、いずれも20日以上の間隔で皮下又は筋肉内に接種する」――、追加免疫が「小児に通常、初回免疫後6か月以上の間隔をおいて、0.5mLを1回皮下又は筋肉内に接種する」。

正式承認されると、5種混合ワクチンは国内初となる。阪大微研は田辺三菱製薬と共同開発した。

現在、2歳までに必要な定期接種ワクチンの総接種回数は20回以上におよぶ。両社は、「混合ワクチンの実用化により、接種回数を削減することは乳幼児および保護者の負担軽減につながる」としている。

ベスレミ皮下注250μgシリンジ、同皮下注500μgシリンジ(ロペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)、ファーマエッセンシアジャパン):「真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

長時間作用型モノペグ化プロリンインターフェロン。2週間に1回の皮下投与で用いる。

ファーマエッセンシアのコアテクノロジーである「部位選択的ペグ化技術」は、タンパク質分子内の特定のアミノ酸をポリエチレングリコール(PEG)という高分子化合物によって選択的に修飾できるようにした技術で、化学的に均一な「ペグ化タンパク質」の合成を可能にした。このペグ化によってタンパク質医薬の体内における分解が抑制され、半減期の延長と長時間にわたる効果の持続につながり得る、優れた薬物動態/薬力学的特性を示す。

同社は台湾の台北に本社を置く。同剤は、同社として初めて日本で承認申請した品目。

ペマジール錠4.5mg(ペミガチニブ、インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン):「FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

選択的線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害薬。今回の追加適応の用法・用量は、「通常、成人には、ペミガチニブとして1日1回13.5mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」となる。なお、既承認の胆道がん適応では、1日1回13.5mgを14日間経口投与した後、7日間休薬することを1サイクルとして投与を繰り返す。

FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍は、極めて希少な血液がんの1つで、染色体のFGFR1遺伝子が存在する領域(8番染色体短腕11-12領域:8p11-12領域)が切断され、別の染色体の断片(遺伝子)と融合した染色体異常によって引き起こされる。さまざまなパートナー遺伝子がFGFR1チロシンキナーゼの活性化を誘導し、その結果、がん細胞の増殖と生存に影響を及ぼす。

病型は骨髄増殖性腫瘍(MPN)、骨髄異形成症候群(MDS)/MPN、急性骨髄性白血病(AML)、前駆T又はBリンパ芽球性白血病/リンパ腫、混合表現型急性白血病(MPAL)など多彩。予後は不良で、治癒あるいは長期寛解を期待できる治療選択肢は現在、同種造血幹細胞移植のみとされ、標準治療は確立されていない。

コムレクス耳科用液1.5%(レボフロキサシン水和物、セオリアファーマ):「〈適応菌種〉本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、肺炎桿菌、エンテロバクター属、セラチア属、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属――。〈適応症〉外耳炎、中耳炎」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間は6年。

キノロン系抗菌薬。外耳炎や中耳炎に対し、点耳で用いる。用法・用量は、「通常、1回6~10滴を1日2回点耳する。点耳後は約10分間の耳浴を行う。なお、症状により適宜回数を増減する」。セオリアファーマは耳鼻咽喉科領域のスペシャリティ企業。

バリキサドライシロップ5000mg(バルガンシクロビル塩酸塩、田辺三菱製薬):「症候性先天性サイトメガロウイルス感染症」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

抗サイトメガロウイルス化学療法剤。正式承認されると、症候性先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症に対する世界初の治療薬となる。症候性先天性CMV感染症に対する用法・用量は「通常、新生児及び乳児にはバルガンシクロビルとして1回16mg/kgを1日2回、経口投与する」。

症候性先天性CMV感染症は、CMVが妊婦の胎盤を経由して胎児に感染して発症する疾患。国内で年間1700人程度が発症すると推計されている。症候性先天性CMV感染症の新生児は、出生時に中枢神経障害や難聴などの症状を示し、その後、精神発達遅滞などの神経学的後遺症を残す割合が多く、成長や発達を損なうことが問題となっている。

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同120mg、同240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「非小細胞肺がんにおける術前補助療法」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。

抗PD-1抗体。今回追加する非小細胞肺がん(NSCLC)の術前補助療法は、手術後の再発予防を目的とするもので、化学療法と併用する。用法・用量は「他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはニボルマブとして、1回360mgを3週間間隔で点滴静注する。ただし、投与回数は3回までとする」となる。

小野薬品の発表資料によると、治癒を目的とした外科手術がNSCLCのステージI~IIIBの一部の患者に実施されているが、手術を行った場合でもNSCLC患者の30~55%で再発し、亡くなっているという。

ペメトレキセド点滴静注用100mg「NK」、同点滴静注用500mg「NK」、同点滴静注用800mg「NK」、同点滴静注液100mg「NK」、同点滴静注液500mg「NK」、同点滴静注液800mg「NK」(ペメトレキセドナトリウムヘミペンタ水和物、日本化薬):「扁平上皮がんを除く非小細胞肺がんにおける術前補助療法」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。

オプジーボに今回追加される「非小細胞肺がんにおける術前補助療法」と併用するための効能及び用法の追加となる。

テクネフチン酸キット(フィチン酸テクネチウム(99mTc)、PDRファーマ):「子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん、頭頸部がんにおけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィ」を効能・効果とする新投与経路医薬品・新効能医薬品。公知申請。再審査期間なし。

同剤は、フィチン酸ナトリウムを有効成分とする、フィチン酸テクネチウム(99mTc)を用時調製するための製剤。組織液やリンパ液中のカルシウムイオンとキレート化してコロイドを形成し、その一部が投与部位の近傍に存在するリンパ管を経てリンパ節の網内系組織に捕捉されることで、センチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィを可能とする。

現在、乳がんや悪性黒色腫のセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィを効能・効果としている。

エンハーツ点滴静注用100mg(トラスツズマブデルクステカン(遺伝子組換え)、第一三共):「化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新効能医薬品。優先審査品目。再審査期間は残余期間(2028年3月24日まで)。

抗HER2抗体薬物複合体(抗HER2 ADC)。第一三共は22年6月にHER2低発現乳がんの効能追加に係る一変申請を行い、優先審査された。

HER2低発現乳がんは、乳がん患者全体の約半数が該当するとされ、新規の患者カテゴリーとなる。

現在、HER2陽性乳がんは、IHC法でスコア3+、またはIHCスコア2+/ISH陽性――を指し、乳がん患者のうちHER2陽性例は15~20%とされる。これ以外は現在、HER2陰性に分類される。

これに対して新カテゴリーのHER2低発現乳がんは、IHCスコア2+/ISH陰性、またはIHCスコア1+を指す。この新カテゴリーは、エンハーツの化学療法既治療のHER2低発現乳がん患者を対象としたグローバル第3相臨床試験(DESTINY-Breast04試験)で、主要評価項目と重要な副次評価項目をすべて達成したことで注目された。

米国では同試験結果などをもとに22年8月に「化学療法既治療のHER2低発現乳がん」の適応追加が承認され、HER2低発現乳がん患者に対して延命効果を示す初めてかつ唯一のHER2標的薬として存在感を高めている。米国ではHER2低発現を特定する初のコンパニオン診断薬が10月に承認され、適応患者をより簡便に診断できる。欧州でも今年1月に、「転移再発で化学療法を受けた(周術期化学療法による治療期間中または終了後6ヵ月以内に再発した場合を含む)HER2低発現の手術不能または転移性乳がん」の適応で承認された。

シルガード9水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)、MSD):「ヒトパピローマウイルス6、11、16、18、31、33、45、52及び58型の感染に起因する以下の疾患。▽子宮頸がん(扁平上皮がん及び腺がん)及びその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1、2及び3並びに上皮内腺がん(AIS))、▽外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2及び3並びに腟上皮内腫瘍(VaIN)1、2及び3、▽尖圭コンジローマ」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2028年7月20日まで)。

9価HPVワクチン。現在は9歳以上の女性を対象に、合計3回筋肉内に注射して用いる。今回追加される新用量は、9歳以上15歳未満の女性に対し、合計2回の接種回数ですむというもの。具体的には用法・用量の項に、「9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12カ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる」と追記される。

なお、シルガード9は、沈降4価HPV様粒子ワクチンであるガーダシルに含まれる6、11、16、18の4つのHPV型に、新たに31、33、45、52、58の5つのHPV型が加わったワクチン。アジュバントとしてアルミニウムヒドロキシホスフェイト硫酸塩を含む。

コミナティ筋注5~11歳用(コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(①トジナメラン、②トジナメラン/ファムトジナメラン)、ファイザー):「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とする新効能・新用量・その他の医薬品。特例承認品目。再審査期間は残余期間(2029年2月13日まで)。

5~11歳用の新型コロナワクチンである「コミナティ筋注5~11歳用」に今回、追加免疫用のオミクロン株対応BA.4-5対応2価ワクチンを追加する。有効成分の接種量は10μgとなる(12歳以上は30μg)。接種間隔は、12歳以上と同様、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から「少なくとも3カ月経過した後」となる。今後速やかに薬事承認手続きを進める予定。

5-FU注250mg、同1000mg(フルオロウラシル、協和キリン):「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg(レボホリナートカルシウム水和物、ファイザー):「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
▽①エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg、②オキサリプラチン点滴静注液50mg/10mL「サンド」、同100mg/20mL「サンド」、同200mg/40mL「サンド」(オキサリプラチン、①ヤクルト本社、②サンド):「胃がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。

いずれも事前評価済み公知申請。再審査期間なし。

治癒切除不能な進行・再発胃がんに対し、フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチンを併用するFOLFOX療法を行えるようにするもの。

【その他】(カッコ内は一般名、申請企業名)
ヌバキソビッド筋注(組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン、武田薬品):新型コロナに対する追加免疫の対象年齢を現在の18歳以上から、12歳以上に引き下げる。今後、添付文書改訂を行う予定。

コミナティRTU筋注1人用(コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)、ファイザー):既承認製剤のコミナティ筋注は複数人用の製剤。これに対して本剤は1人用の製剤となる。本剤の組成等は既承認製剤と同一で、バイアルへの充てん量のみ異なる。PMDAの審査においては、充てん工程の違いによる品質への影響はないことが確認され、承認は可と判断された。今後、速やかに承認手続きを進める予定。 
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