AZのがん免疫療法薬デュルバルマブとトレメリムマブ併用療法など承認へ 薬食審・第二部会で了承
公開日時 2022/11/29 04:50
厚労省の薬食審・医薬品第二部会は11月28日、アストラゼネカの新たながん免疫療法薬である抗CTLA-4抗体・イジュド点滴静注(一般名:トレメリムマブ)など6製品の承認可否を審議し、承認することを了承した。イジュドは非小細胞肺がん(NSCLC)及び肝細胞がんを対象疾患とするもの。NSCLC(1次治療)に対しては同社のがん免疫療法薬である抗PD-L1抗体・イミフィンジ点滴静注を含む3剤併用で、肝細胞がん(1次治療)に対してはイミフィンジとの2剤併用で用いる。一方、イミフィンジはこの日の部会で、▽NSCLC及び肝細胞がんに対するイジュドとの併用▽肝細胞がんに対する単独投与――に係る新効能・新用量が報告された。
◎レオ自販体制構築のきっかけ、アトピー性皮膚炎薬アドトラーザ承認へ
このほかの審議品目には、イミフィンジの胆道がん適応の追加、サノフィの子宮頸がんに用いる抗PD-1抗体・リブタヨ点滴静注(セミプリマブ)、レオファーマのアトピー性皮膚炎に用いるバイオ製剤・アドトラーザ皮下注(トラロキヌマブ)が含まれる。レオファーマは、アドトラーザの自社販売のために今年、MR体制を構築した。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽クレセンバカプセル100mg、同点滴静注用200mg(イサブコナゾニウム硫酸塩、旭化成ファーマ):「下記の真菌症の治療:▽アスペルギルス症(侵襲性アスペルギルス症、慢性進行性肺アスペルギルス症、単純性肺アスペルギローマ)▽ムーコル症▽クリプトコックス症(肺クリプトコックス症、播種性クリプトコックス症(クリプトコックス脳髄膜炎を含む))」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
アゾール系抗真菌薬。真菌細胞膜の主構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害することで抗菌活性を示す。用法・用量は、経口剤は「通常、成人にはイサブコナゾールとして1回200mgを約8時間おきに6回(負荷投与48時間)、負荷投与終了12~24時間後より1日1回経口投与する」。静脈注射剤は「通常、成人にはイサブコナゾールとして1回200mgを約8時間おきに6回(負荷投与48時間)、負荷投与終了12~24時間後より1日1回、1時間以上かけて点滴静注する」。
旭化成ファーマは2016年9月に、同剤を創製したスイス・バジリア社から日本国内における独占的開発権および販売権を取得し開発を進めてきた。
▽アドトラーザ皮下注150mgシリンジ(トラロキヌマブ(遺伝子組換え)、レオファーマ):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
アトピー性皮膚炎の徴候・症状の根底にある免疫学的機序に重要な役割を果たすIL-13サイトカインを特異的に中和する完全ヒトモノクローナル抗体。IL-13サイトカインに高い親和性で特異的に結合することにより、IL-13 受容体のα1およびα2サブユニット(IL-13 Rα1およびIL-13 Rα2)との相互作用を阻害する。同剤は初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与で用いる。
レオファーマはアドトラーザの承認取得及び自社販売のため、22年に「2ケタ後半」の人数のMR体制を構築した。
▽イジュド点滴静注25mg、同点滴静注300mg(トレメリムマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん及び切除不能な肝細胞がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
がん免疫療法の一種の抗CTLA-4 抗体。CTLA-4とB7.1又はB7.2との結合を阻害し、がん抗原特異的なT細胞の活性化を亢進させることなどにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。
非小細胞肺がん(1次治療)に対して、抗PD-L1抗体・イミフィンジ及び白金系抗悪性腫瘍剤を含む他の抗悪性腫瘍剤との3剤併用で用いる。イジュドの用法・用量は、1回75mgを3週間間隔で4回、60分間以上かけて点滴静注する。その後、7週間の間隔を空けて、75mgを1回60分間以上かけて点滴静注する。
肝細胞がん(1次治療)に対してはイミフィンジとの2剤併用で用いる。イジュドの用法・用量は、「300 mgを60分間以上かけて単回点滴静注する。ただし、体重30 kg以下の場合の投与量は4mg/kg(体重)とする」。
▽リブタヨ点滴静注350mg(セミプリマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。優先審査品目。再審査期間は8年。
抗PD-1抗体。プラチナベースの化学療法の実施中に進行が見られた再発または転移性の子宮頸がん(扁平上皮がんまたは腺がん)を対象とした国際共同第3相試験に基づき申請された。セミプリマブの単剤投与群は、化学療法群と比較して死亡リスクを31%低下させた。
▽イミフィンジ点滴静注120mg、同点滴静注500mg(デュルバルマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「治癒切除不能な胆道がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
抗PD-L1抗体。胆道がんに対してゲムシタビン塩酸塩及びシスプラチンとの3剤併用で用いる。イミフィンジの用法・用量は、「3週間間隔で、1回1500mgを60分間以上かけて点滴静注する。3 週間間隔での繰り返し投与後、デュルバルマブとして、1回1500mgを4週間間隔で60分間以上かけて点滴静注する。ただし、体重30kg以下の場合の1回投与量は20mg/kg(体重)とする」。
▽イムブルビカカプセル140mg(イブルチニブ、ヤンセンファーマ):「原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫」を効能・効果とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤。原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫は、進行が遅く、治癒困難なB細胞リンパ腫。日本における年間の新規患者数は約350人。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽カルケンスカプセル100mg(アカラブルチニブ、アストラゼネカ):「慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫も含む)」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余(2029年1月21日まで)
▽ガザイバ点滴静注1000mg(オビヌツズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「CD20 陽性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫も含む)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(2026年7月1日まで)。
カルケンスはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤。ガザイバはヒト化抗CD20モノクローナル抗体。今回、未治療の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫も含む)に対し、両剤の併用を追加する。カルケンスは単独投与も可能とする。日本全国で慢性リンパ性白血病と新たに診断される患者は、1年間に10万人当たり1人未満とされる。
▽イミフィンジ点滴静注120mg、同点滴静注500mg(デュルバルマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」及び「切除不能な肝細胞がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(2026年4月28日)
抗PD-L1抗体。今回、非小細胞肺がん(1次治療)及び肝細胞がん(1次治療)に対してこの日に審議された同社の抗CTLA-4 抗体・イジュド点滴静注と併用できるようにするほか、肝細胞がんでは単独投与でも使用できるようにする新効能・新用量の追加となる。