アステラス製薬・安川社長 fezolinetant「来期売上3桁億円の真ん中辺り」 イクスタンジは成熟フェーズ
公開日時 2022/11/01 04:51
アステラス製薬の安川健司社長CEOは10月31日、2022年度第2四半期決算説明会に臨み、主力の前立腺がん治療薬イクスタンジの米国市場での業績が期初予想を下回ったことに触れ、「現在の適応症では成熟市場のフェーズに入りつつある」と指摘した。一方で閉経に伴う血管運動神経症状(VMS)の頻度と重症度を軽減する非ホルモン治療薬として今年8月に米国FDAが新薬承認申請を受理したfezolinetantについて、まだ審査中と断りながらも、「来年度の米国での売上目標は3桁億円の真ん中辺ぐらいを考えている」と強調。100億円から1000億円の”間“と幅を持たせながらも、早くも収益貢献を視野に期待感の強さを滲ませた。
製品別の22年度2Q実績をみると、主力のイクスタンジは前同比24%増、進捗率52%の3320億円を売上げた。地域別にみると、製品売上の半分を占める米国は、進捗率が44%に止まる。PAP(患者アクセスプログラム)とザイティガの後発品が引き続き想定よりも高い水準で推移しているほか、イクスタンジの新規患者数がCOVID-19以前の水準には戻っていないことが、その背景にある。一方で日本、欧州は米国の期初予想の下振れをカバーし、特に日本は期初予想を28億円上方修正した。
◎急激なインフレと景気後退で「安価なザイティガの後発品を求める患者もいる」
安川社長CEOは米国市場について、「急激なインフレと景気後退によって安価なザイティガの後発品を求める患者もいる、それからPAPを使用される患者も増えていると想定しており、この経済状況を考えるとこの傾向は続くであろう」と見通した。また、「新規患者数がCOVID-19のアウトブレイク前に戻っていない」と述べながらも、「(コロナで)アンダー・ダイアグノーシス(診断が不十分)だった部分がいずれ市場に戻ってくる。この戻り分についていかに営業がタップするかというところがキーではないかというふうに思っている」と述べ、米国の通期業績を331ミリオンドル下方修正したと説明した。ただ、今後成長ドライバーとしてEMBARK試験に基づくNon-metastatic(M0)CRPC の適応追加に期待感を示した。FDAから8月にファストトラック指定を取得しており、時期は2023年度以降の移行を期待している。
◎患者が新規製剤に最適にアクセスできる環境を整備したい
一方で、今後の期待として、閉経に伴うVMSの頻度と重症度を軽減する非ホルモン治療薬fezolinetantをあげた。欧米で開発が進んでおり、米FDAは8月に、欧州は9月に承認申請を受理。FDAの審査終了目標日(PDUFA date)は2023年2月22日となっている。
安川社長CEOは、自社の市場調査に基づき。「米国では処方される薬剤の意向を患者から医師に伝えることが比較的行いやすいため、VMS患者が非ホルモン製剤での治療を求めるように啓発していくことが重要な取り組みであると認識している」と強調。「一方で欧州では、まず患者がVMSを治療可能な疾患であると認識し、積極的に医師に相談に行くことが重要な取り組みとなる」と話した。また、薬価および保険償還の面では、「自由薬価を採用している米国では、民間保険を通じて患者が新規の非ホルモン製剤に最適にアクセスできる環境を整備することが重要である」と指摘。「政府が価格設定に関与する欧州では各国においてfezolinetantの価値を反映した価格で保険償還を得ることが成功のカギとなる」との見解を示した。また売上規模については、「また審査中なので、どんな薬価を想定しているとか、こういう説明は今日の時点では勘弁させて頂きたい」と述べながらも、「来年度の米国での目標は3桁億円の真ん中辺ぐらいを考えている。欧州についてはちょっといろいろ事情があるので説明は控えさせていただく」と述べ、改めて期末に詳しい数字を説明するとした。
【22年度第2四半期連結業績 (前年同期比) 通期予想(前年同期比)】
売上高 7621億8500万円(17.0%増) 1兆5290億円(18.0%増)
営業利益 1198億9100万円(33.0%増) 2690億円(72.8%増)
親会社帰属純利益 964億3400万円(34.7%増) 2080億円(67.6%増)
【21年度第2四半期のグローバル主要製品売上(前年同期実績) 通期予想、億円】
イクスタンジ 3320(2676) 6700
ゾスパタ 235(165)458
パドセブ 208(91) 454
エベレンゾ 15(14)50
ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ 934(844) 1950
ベシケア 81(128) 153
プログラフ 1004(923)2003
【21年度第2四半期の国内主要製品売上(前年同期実績) 通期予想、億円】
グローバル品
イクスタンジ 275(236)554
パドセフ 40(-)83
ゾスパタ 21(21) 40
エベレンゾ 13(13)35
ベタニス 175(187) 331
プログラフ(グラセプター含む) 185(197) 355
国内主要製品
スーグラファミリー 156(154) 315
うち、スージャヌ 63(63) 非開示
レパーサ 32(29) 非開示
リンゼス 35(35) 73
ビーリンサイト 38(29) 非開示
イベニティ 201(145) 非開示
スマイラフ 13(12)29
ワクチン 32(20) 76
ゴナックス 24(26)51
シムジア 58(56)非開示
マイスリー 30(36)59
*仕切価ベース