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中医協薬価専門部会 製薬業界に改定影響のエビデンス求める 日本市場の魅力低下「”はいはい”とは納得しかねる」

公開日時 2022/10/27 05:01
日米欧製薬3団体は10月26日の中医協薬価専門部会の業界ヒアリングに臨み、23年度改定をめぐり、「特許期間中の新薬は中間年改定の対象とすべきではない」と主張した。物価・エネルギー価格の高騰は新薬にも影響を与えているとして、23年度改定について、「実施の是非も含めた慎重な検討」を改めて求めた。ただ、改定影響などのデータ提示がなかったことから、診療・支払各側からは、エビデンスの提示を求める声があがった。また、薬価制度のために日本市場の魅力が低下し、ドラッグラグ、ドラッグロスが起きているという製薬業界の主張に対し、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)が「“はい、はい”とは納得しかねるものがある。特許期間中に薬価が下がるから日本向けの開発はしないという単純なことだけではないように思う。問題の本質についてどのように認識されているのか」と質す場面もあった。

◎価格維持の英国でもドラッグラグ?  

日本製薬工業協会(製薬協)の岡田安史会長(エーザイ)は、「臨床的、科学的な評価が変わらない限り特許期間中の新薬の薬価は維持されることがグローバルスタンダードであると認識をしている。日本においても特許期間中の薬価は維持されるべきというのが製薬協の基本的な考え方だ」と説明。「直近の原材料等の高騰や円安の進行は我々製薬メーカーにとっても新薬メーカーにとっても研究開発や生産等において非常に大きなコスト増となる影響を及ぼしている。さらなる市場の魅力度低下によって新薬アクセスへの影響はより深刻化する恐れがある現状を踏まえると、特許期間中の新薬は中間年改定の対象とすべきではない」と主張した。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は製薬協が「特許期間中の薬価維持は主要先進国のスタンダード」を主張するために提示したグローバル売上高上位30品目の価格水準を示したデータについて、質問。対象品目は日本が最も多い29品目で、米国が28品目、英国が20品目となっている。長島委員は、「これはすなわち残りの10品目が保険対象になっていないということで、ドラックラグと考えてよいか。つまり、特許期間中の薬価を維持している割合が多いイギリスでも結局、ドラックラグが生じていると理解してよろしいか」と尋ねた。

専門委員の赤名正臣氏(エーザイ)は、「残り10品目がドラッグラグかどうかというのは、いまの段階では確認できない」と回答した。また、長島委員は「米国の薬価は企業が決定権を持つ自由市場であり、28品目全ての価格が維持されるのは当然のことではないか。米国をグラフに入れた意味を教えてほしい」と質問。これに対し、赤名専門委員は、「米国は自由薬価でございますけれども、一番世界でイノベーションが進んでいる国で、新薬がどんどん出てくる国だ。そういったマーケットはどうなっているのかということで、その載せさせていただいたという経緯がある」と述べた。

◎支払側・松本委員 特許中の薬価引下がるから開発しないという「単純なことではないのでは」

支払側の松本委員は、薬価制度のためにドラッグラグ、ドラッグロスが起きているという業界の主張に対し、「日本では国民皆保険制度の下、安全性と有効性が証明された薬品は薬事で承認され、それに従って保険適用されるというある意味、マーケットとしてはかなり広く確認できる。“日本に魅力がないんだ”とあっさり言われてしまうと、“はいはい”とは納得しかねるものがある」と指摘。「特許期間中に薬価が下がるから日本向けの開発はしないという単純なことだけではないように思う。例えば研究開発の環境や薬事承認の仕組みを含めて、問題の本質についてどのように認識されているのかもう少し詳しく教えていただきたい」と尋ねた。

製薬協の岡田会長は、「原因の一つは、薬価制度のところ。もう一つは、薬事・臨床試験の環境だという風に思う」との考えを表明。日本語での申請や、先駆的医薬品のインセンティブなど薬事に加え、民間病院が多く集約化が図られていない治験の状況などで、「コストがかなりかさむということが環境上の大きな課題であるという風にいま認識しているところだ」と述べた。欧州製薬団体連合会(EFPIA)の岩屋孝彦会長(サノフィ)は、「私共が投資を判断いたしますときに当然のことながら薬価だけではなく、投資するための環境として研究開発や薬事承認の仕組みについても考慮する。この課題は全て薬価であるということではないと認識をしている」と述べた。

◎診療側・長島委員 すべての特許品の薬価維持「議論の余地がある」 次期ルール改定のなかで議論

製薬業界は特許期間中の薬価維持を要望しているが、診療側の長島委員は、「“新薬であれば全て特許期間中の薬価が維持されるべき”という考え方には、議論の余地があると考えている」と表明。「臨床的な価値の高い新薬についてはその価格を維持するための仕組みとして、新薬創出等加算制度が整えられているところであり、その適用範囲の適切性については、次期ルール改定の議論の中で改めて検討すべきではないか」との見解を示した。

◎物価・エネルギー価格高騰の影響 日薬連・眞鍋会長「手元にデータがない」

また、診療側の長島委員は、「物価高騰が製薬業界、医薬品卸業界に大きな影響を与えていることは理解しているが、特にどのようなカテゴリーの医薬品への影響が著しく、そしてどれくらい具体的に価格に影響が出ているのか。また、人件費の高騰について価格および人材確保にどのような影響が出ているのか」と質問。これに対し、日本製薬団体連合会(日薬連)の眞鍋 淳会長は、「いま、きょうのところで手元に資料がないのでお答えしづらい」としたうえで、「私どもが言いたかったのは、公定薬価なので、価格転嫁ができないということが一つ非常に大きいところ」などと説明。「普通の製造業とは違うということが、一番私達としてはお話したいところ」と述べるにとどめた。

中村洋部会長は、「先ほど真鍋様より手元にない資料がまだあるというお話だったので、事務局等を通じて提出いただければと思う」と指摘。診療側の長島委員も、「物価高騰、円安、人件費高騰の影響について一般論的、全体論的にはすでに理解しているが、今後もしも対応検討するとなれば、やはり一定程度具体的なデータというものがないと難しいと考えているので、そのようなデータ提供が可能であれば、ぜひご検討ください。また、特許期間中の薬価とドラッグラグの関係については皆様が強く指摘されているところなので、そこについてきめ細かい資料があれば、それもぜひご提出をお願いしたい」と述べた。日薬連の眞鍋会長も、「いくつか不足のデータということで要求をしていただいた。可能なものにつきましては、追って提出をさせていただく」と応じた。

◎支払側・松本委員 議論は「薬価改定実施が前提」

このほか、“23年度改定について実施の是非も含めて慎重に”との製薬業界の主張に対し、支払側の松本委員が「改定を実施するか否かは、元々が大臣合意から来ているし、政府が判断するということで、私としては中医協の範囲を超えているというふうに思っている」として、「改定を実施する前提」で議論を進めると釘をさす場面もあった。

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