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エーザイ・内藤CEO 早期ADでレカネマブのP3が主要評価項目達成「このようなP値見たのは初めて!」

公開日時 2022/09/28 19:15
エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは9月28日、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レカネマブ」の早期アルツハイマー病患者を対象としたグローバル大規模臨床第3相試験「CLARITY AD」で主要評価項目を達成したと発表した。主要評価項目に据えた「投与開始から18か月時点のCDR-SB」は、p値が「0.00005」となり、「私も長い間この仕事に携わっているが、このようなp値を見たのは初めて。非常に高い統計学的有意性と言えると思う」と有用性を強調した。内藤CEOは、「日米欧でのフル申請を22年度中に完了し、23年中にフルの承認を取得したい」と意欲を語った。

◎内藤CEO  アミロイドβ仮説を証明「認知症治療における大きな前進」 


「CLARITY ADの成功は、認知症治療における大きな前進であると同時に、今後の医薬品診断技術の開発にさらなる活力を与えるものと考えている。様々なAβ仮説の検証が行われてきたが、約30年を経てようやく、レカネマブによって脳内に異常蓄積したAβを取り除くことでアルツハイマー病の臨床症状を改善することがしっかりと証明された」-。内藤CEOは同試験の結果をこう語った。

「CLARITY AD」試験は、早期アルツハイマー病患者1795人を対象としたプラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第3相検証試験。日本、米国、欧州、中国で実施された。対象は、脳内アミロイド病理を確認された早期アルツハイマー病患者(アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度アルツハイマー病)1795人。①レカネマブ 10 mg/kgの2週に1度投与群、②プラセボ群に1:1で無作為に割り付け、効果を検証した。主要評価項目には、「ベースラインから18か月時点のCDR-SBスコアの変化」を据えた。CDR-SBは、記憶、見当識、判断力と問題解決、地域社会の活動、家庭および趣味、身の回りの世話の 6 項目について診察や家族、介護者からの情報で重症度を評価するスケール。

◎主要評価項目で27%の悪化抑制示す


ITT集団における解析の結果、主要評価項目であるCDR-SBスコアの変化はレカネマブ群がプラセボ群に比べ、-0.45 となり 27%の悪化抑制を示した(p=0.00005)。重要な副次評価項目に据えた、アミロイド PET 測定による脳内アミロイド蓄積、「ADAS-cog14」、「ADCOMS」、「ADCS MCI-ADL」の投与 18 か月時点での変化についても、全ての項目においてレカネマブ投与群はプラセボ群と比べ、有意な結果となった(p<0.01)。

◎ARIA-Eは12.5%、ARIA-Hは17.0%発生 「想定される範囲内」

一方、安全性の評価項目であるアミロイド関連画像異常(ARIA)については、ARIA-E(浮腫/浸出)の発現率はレカネマブ投与群12.5%、プラセボ投与群1.7%。症候性のARIA-Eはレカネマブ投与群2.8%、プラセボ投与群では認められなかった。ARIA-H(ARIA による脳微小出血、大出血、脳表ヘモジデリン沈着)の発現率はレカネマブ投与群17.0%、プラセボ投与群8.7%。症候性のARIA-Hはレカネマブ投与群0.7%、プラセボ投与群0.2%だった。内藤CEOは、「想定される範囲内の安全性の状況だった」と説明した。

◎一つの大きなマイルストーンクリアも「我々の仕事は終わったわけではない」 


内藤CEOは、「一つの大きなマイルストーンをクリアした。これで我々の仕事は終わったわけではない。今後、一日も早くレカネマブを待たれる人々に、レカネマブをお届けできるよう、承認の取得や薬剤アクセスの確保などに全力を尽くす決意だ」と語った。

レカネマブは、エーザイが開発、薬事申請をグローバルで主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行う。

米国では今年7 月に迅速承認制度に基づく生物製剤ライセンス申請(BLA)が米FDA(米国食品医薬品局)に受理され、現在審査中だ。PDUFAアクション・デート(審査終了目標日)は2023年1月6日とされている。内藤CEOは米国で迅速承認を活用する理由について、「やはり一日も早く、レカネマブを必要とされる患者さんにお届けしたい。メディケアの保険償還などの問題もあるが、迅速承認下でお届けできる患者さんもいる。認知症で仕事をしているエーザイとしては一日も早く、そういう患者さんに薬剤をお届けしたいという想いが第一だ」と話した。すでに臨床第2相試験(201試験)までのデータは提出しており、「フルアプルーバルに向けてレビュー期間が相対的に短縮されることが期待できると考えている」と話した。

国内では今年3月から医薬品事前評価相談制度を活用し、同試験以外の申請データを医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出している。

◎「エーザイはレカネマブを契機に大きく変わる」 介護負担軽減でパブリックベネフィット

「レカネマブ承認後は、アルツハイマー病という疾患に対する憂慮が軽減される、膨大な家族介護負担を含む介護負担の軽減で社会的な生産性が改善するなど、前向きなインパクトを社会にもたらすものと期待している」と同剤の持つ意義を強調。エーザイにとっても、「レカネマブを契機に大きく変わる。財務的に大きな貢献をするプロダクトになるのは間違いないが、それに加えてレカネマブがもたらすパブリックベネフィットは非常に大きなものがある」との考えを示した。

◎プライシング「バリューベースドプライシングの考え方は一つある」

プライシングについては、「様々な側面から慎重に検討していかなければならない」と表明。「医学的にどういう価値があるのか。発症をどれくらい遅らせることができるのかという検証を行ったうえで、社会にもたらす介護費用の削減などのバリューを金銭的価値に換算し、バリューベースドプライシングの考え方の基礎に持ってくるという考え方は一つあると思う」と述べた。一方で、「支払い可能な価格でないと意味がない。国家財政、国が負担できる範囲でなければいけない。個人が負担できる範囲でなければいけない」ことも強調。各国によって経済状況なども異なることから、「グローバルに様々なアフォーダビリティを考慮してプライシングポリシーを考えていかないといけない。我々が貢献する当事者にしっかりお届けするプライシングポリシーを組み立てていかないといけない」と話した。



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