アステラス製薬の筒井泰博常務担当役員・営業本部長（日本コマーシャルプレジデント）は2月9日、専門誌等のグループ取材に応じ、「アステラス　オンラインMR」について将来的に増員する方針を明らかにした。同社のオンラインMRは21年6月に4領域6製品（疾患領域担当制）を11人でカバーする活動を開始。半年後に15人体制に拡充した。筒井営業本部長は導入後の顧客の反応について、「オンラインMRの評判が良い形で出ている」と強調。情報提供活動が多様化するなか、顧客ニーズがさらに高まればオンラインＭＲの「担当制」もあり得る述べ、「いまは15人体制だが、倍かそれ以上に拡大したいと思っている」と期待感を込めた。

同社は4月1日付で営業組織体制の大幅見直しを公表した（関連記事）。具体的には、ＭＲを「エリア担当制」から固形がん、血液がん、関節リウマチ、スペシャリティケアの4領域の「製品担当制」に再編する。また、全国119営業所は廃止し、新たにコミュニケーションオフィスを全国に54か所設置する方針だ。

◎筒井営業本部長　顧客ニーズの多様化「営業だけでやれる時代は終わった」

筒井営業本部長は、組織体制を見直す背景に触れ、「医療関係者のニーズも多様化している。ＭＲが届ける情報、医療関係者からＭＲが受け取る情報も変わってくる。こういったものを営業だけでやれる時代は終わった」と説明した。また、「これから先は、営業として、会社内の様々な機能や人とチームを組み、ワン・アステラス（One Astellas）でどう応えていくかにチャレンジしていきたい」と強調。さらに、「新たなことにチャレンジしていく健全な風土を作っていくためには、働き方も含めて様々なことに着手しなくてはならない。このための施策を考えていかないといけない」と語り、変革にチャレンジできる組織風土の醸成で良い機会と捉えたと明かした。

◎本社機能も再編「コロナをきっかけにデジタライゼーションが進んでいる」

一方、本社機能として、「コマーシャルエクセレンス部」と「デジタルコミュニケーション部」が新設される。筒井営業本部長は、「コマーシャル部門もグローバル化が進んでいる。その中でグローバルのノウハウの共有やグローバルと連携した形での効率化も狙っている」とコマーシャルエクセレンス部新設の背景を明かしてくれた。一方、デジタルコミュニケーション部について筒井営業本部長は、「コロナをきっかけにデジタライゼーションが早く、強く進んでいる。このタイミングで機能を１つに集約することで、（社内におけるデジタル施策を）強めるポイントが明確になり、かつリソースを当てることができる」と解説してくれた。

◎「アステラス　オンラインＭＲ」の動向に業界内から熱い視線が

その中で、とくに業界内から熱い視線が注がれるのが「アステラス　オンラインMR」の動向だ。同社が想定するオンラインMRとは、「担当顧客を持つ形でなく、医師の要望によって対応する」（筒井営業本部長）というもの。実際の活動は、医師がリアルＭＲを介してオンラインＭＲとの面談を紹介されるケースや、同社のオウンドメディアである「アステラスメディカルネット」（医療従事者向けサイト）を経由してオンラインMRに直接面談予約が入るケースなど様々だ。筒井営業本部長は、「4月1日からデジタルコミュニケーション部にオンラインMRを所属させ、オフィスも拡充することになった」と指摘。「トレーニングを積んだオンライン専任MRが医師に対応している。顧客の評価も良い形で出ている」と自信をのぞかせた。

◎オンラインＭＲならではのスキルトレーニング

オンラインMRの今後については、「MRが行うリモート面談と違って、オンラインMRは面談するためのスキルやオンラインで医師のニーズを引き出すためのスキルなどのトレーニングを積んでいる」と述べ、実際の活動は、リアルMRとオンラインMRが２つのラインで動いていると説明した。また「基本的にはリアルMRが主たる担当者となる」と述べながらも、「是非ともオンラインMRに担当して欲しいという医師が増えれば担当制にすることもあり得る」と述べ、今後の医師のニーズを捉えて、オンラインMRの増員や拡充などを進めていく考えを明らかにした。