後藤茂之厚労相と鈴木俊一財務相は12月22日朝の大臣折衝で、2022年度診療報酬本体の改定率をプラス0.43％（国費300億円程度）とすることを正式に決めた。医科・歯科・調剤に回る実質的な診療報酬本体（通常改定分）はプラス0.23％。「リフィル処方箋（反復利用できる処方箋）の導入・活用促進」として、0.10％の医療費効率化も盛り込んだ。リフィル処方箋の導入は、現行の「分割調剤とは異なる実効的な方策」であることも明記した。再診の効率化につながることを見込む。後藤厚労相は同日会見し、リフィル処方箋の導入について医師と薬剤師の連携のもとで、「医療の質を下げないという条件のもとで、できる限り工程、手順を効率化していくことは必要だ」との考えを示した。

◎医科＋0.26％、歯科＋0.29％、調剤＋0.08％　薬価は▲1.35％（国費▲1600億円程度）

診療報酬改定は、通常改定分がプラス0.23％。各科の改定率は医科プラス0.26％、歯科プラス0.29％、調剤プラス0.08％で、医科、歯科、調剤の１：1.1：0.3の財源配分を堅持した。看護の処遇改善のための特例的な対応はプラス0.20％、不妊治療の保険適用のための特例的対応をプラス0.20％の財源を確保した。一方で、「リフィル処方箋（反復利用できる処方箋）の導入・活用促進による効率化」で▲0.10％、22年３月に時限措置を迎える「小児の感染防止愛策にかかわる加算措置（医科分）の期限到来」で▲0.10％とした。なお、歯科・調剤分については、感染防止などの必要な対応に充てる。薬価については▲1.35％（国費▲1600億円程度）。薬価調査の平均乖離率約7.6％だったことを踏まえ、実勢価等改定▲1.44％（▲1600億円程度）だったが、不妊治療の保険適用のための特例的な対応としてプラス0.09％（50億円程度）とした。

◎会見で後藤厚労相「しっかりと医療を守る、現場を守るための改定を行えた」

後藤厚労相は同日の会見で、「国の財政状況が厳しいという予算当局の議論もあるなかで、しっかりと医療を守っていく、現場を守っていくために、物価賃金の動向、医療機関の経営状況、保険料など国民負担等を踏まえつつ、診療報酬改定を行えた」と話した。

◎リフィル処方箋「医療現場で合理的にできることは合理的にという考え方だ」後藤厚労相

リフィル処方箋については、「症状が安定している患者について、医師の処方により、医療機関に行かずとも、医師および薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる、分割調剤とは異なる実効的な方策を導入することにより、再診の効率化につなげ、その効果について検証を行う」と明記した。後藤厚労相は、「医療現場で合理的にできることについては合理的にしていったほうがいいという考え方だ。従来、医師の処方により、分割調剤はあったが、医師の処方で医療機関に行かなくても、医師及び薬剤師の適切な連携のもとで、一定期間内の処方箋を反復利用できる制度を作ることで、実効的な方策として、導入することで再診の効率化にもつながっていく。医療現場で、医療の質を下げないという条件のもとで、できる限り工程、手順を効率化していくことは必要だ。それを実行することで財源としても、0.10の捻出にもつながっている」と述べた。

◎看護職員約57万人を対象　22年10月以降、収入を月額平均１万2000円相当引き上げ

看護の処遇改善については、看護職員約57万人を対象とすることを前提に、22年10月以降の収入を３％程度（月額平均１万2000円相当）引き上げるための仕組みを創設する。看護補助者や理学療法士・作業療法士などのコメディカルの処遇改善に充てることができるような、柔軟な運用も認めた。

◎制度改革事項に「湿布薬の処方の適正化」を明記

診療報酬・薬価改定の制度改革事項としては、「看護配置７対１の入院基本料を含む入院医療の評価の適正化」や、「在院日数を含めた医療の標準化に向けた、DPC制度の算定方法の見直し等のさらなる包括払いの推進」、「かかりつけ医機能についての診療報酬上の措置の実態に即した適切な見直し」を盛り込んだ。また、「費用対効果を踏まえた後発医薬品の調剤体制についての評価の見直し」、「薬局の収益状況、経営の効率性などを踏まえた多店舗を有する薬局等の評価の適正化」、「OTC類似薬等の既収載の医薬品の保険給付範囲の見直しなど、薬剤給付の適正化の観点からの湿布薬の処方の適正化」を盛り込んだ。