22年度診療報酬改定 「改定率」前回水準めぐる攻防に発展 次期改定めぐり予算委員会で政府の見解質す
公開日時 2021/12/14 04:53
政府・与党間の2022年度診療報酬改定の「改定率」をめぐる議論はいよいよ大詰めを迎えている。政府は看護師の処遇改善と不妊治療の保険適用の0.5%程度を確保する方針を固めているが、実質本体部分のマイナスを主張する財務省と与党厚労関係議員との間で綱引きが続いている。ここにきて日医など医療関係団体も攻勢を強めており、診療報酬本体は前回改定率(0.55%)をめぐる攻防に発展してきた。一方、臨時国会は12月13日から衆院予算委員会で、補正予算案の実質審議に入り、自民・公明両党の厚生労働部会長が診療報酬改定で岸田文雄首相、後藤茂之厚労相に答弁を求めた。
臨時国会における補正予算案をめぐる論戦が始まった。初日の質疑では、自公ともに政調会長を質疑のトップバッターに立たせ、関連質問を厚労部会長に託すという布陣で岸田政権の新型コロナ対策、経済対策、次期診療報酬改定などの諸問題についての見解を質した。
次期診療報酬改定で答弁を求められた後藤厚労相は、「物価賃金動向や医療機関の経営状況、保険料などの国民負担、岸田政権が支える看護師の収入引き上げ・処遇改善、新型コロナを踏まえた政策課題の対応などを踏まえて、予算編成過程においてしっかり検討して参りたい」と強調。続けて、「医療提供体制、国民が安心できるように全力をあげて努めて参りたい」と応じた。自民党厚生労働部会長を務める牧原秀樹議員への答弁。焦点の「改定率」に言及しなかったものの、看護師の処遇改善など岸田内閣のカラーを全面に打ち出す改定の実現に意欲を示した。
牧原議員は、看護師の労働環境の厳しさに触れたうえで、「あるところに、しわ寄せが起きるような対策ではなく、医療界全体で取り組みを促すような方向性が大事だ」との考えを表明。診療報酬改定については、「現場を見ている立場としてプラス改定にすることも含めて、現場の皆さんがやる気の出る結果にしてほしいと思う」と要望した。
◎岸田首相「公的価格については補正予算によって、2月に前倒し」
看護師の処遇改善をめぐっては、日本医師会など医療関係団体は、診療報酬と別途の財源確保を求めている。予算委員会で岸田文雄首相は、「公的価格については補正予算によって、2月に前倒しする形で実現していきたい。それ以後については予算編成のなかで議論していくことになるが、医療介護費は高齢化に伴って増加していく。高齢化に伴う増加する医療費介護費の中で分配のあり方等を考えていただく。予算編成過程でしっかり議論していきたい」と述べ、与党に協力を求めた。公明党の厚生労働部会長を務める伊佐進一議員への答弁。
伊佐議員は、「通常でやるものとは別枠でやるべきだ。そうでないと、結局は同じパイの中での食い合いになる」との見解を表明した。
◎鈴木財務相 「国民負担の軽減と医療の質の向上を両立、真にイノベーションを推進」
予算委員会では「薬価」で政府側の見解を質す場面もあった。鈴木俊一財務相はイノベーション評価について、「薬価算定基準については骨太方針2021で革新的医薬品におけるイノベーションの観点、長期収載品等の医薬品についての評価の適正化を行うという観点を踏まえた見直しを図るとされている。薬価改定に際してはこの方針を踏まえ、国民が恩恵を受ける国民負担の軽減と医療の質の向上を両立しつつ、真にイノベーションを推進するか、という観点から取り組んでいきたい」と応じた。伊佐議員(公明)への答弁。
一方、岸田首相は、「我が国において科学技術によるイノベーションを推進し、経済の付加価値創造力を引き上げていくことは大変重要な取り組み」と主張。今年6月に閣議決定した成長戦略実行計画を引き合いに、ライフサイエンス分野をデジタルやグリーンと並ぶ重要戦略分野に位置づけている。岸田首相は、「革新的新薬を創出する製薬企業が成長できるイノベーション環境を整備するために医療情報を利活用しやすい環境整備を進めていくことや、コロナ禍で新たな健康課題が生じていることを踏まえて予防・重症化予防、健康づくりへの支援を推進する。データヘルス改革を推進し、個人の健康医療情報の利活用に向けた環境整備をする、こうした仕組みを推進することがこのなかに盛り込まれている。ぜひこうした取り組みでより、分野の成長を推し進めていくようしっかり努めていきたい」と述べた。