日薬連・安定確保委員会 「欠品・出荷停止」「出荷調整」が3143品目 後発品が9割以上に
公開日時 2021/11/18 13:10
日本製薬団体連合会(日薬連)の安定確保委員会は11月18日、調査対象の20.4%を占める3143品目が8月末時点で、「欠品・出荷停止」、「出荷調整」となっているとの調査結果を発表した。このうち、「欠品・出荷停止」は743品目(調査対象の4.8%)、「出荷調整」は2400品目(同15.5%)で、いずれも後発品が9割以上を占めた。欠品や出荷調整時に、医薬品卸や医療機関、薬局にすべてが連絡されていない実態も明らかになった。日薬連安定確保委員会は、個別品目で事情がある可能性を指摘したうえで、「出荷状況において卸様、医療関係者の皆様へ影響がある事案が発生した場合は、速やかに公表、伝達することが重要であると認識している」とコメントしている。
◎8月末時点の欠品や出荷調整を調査
調査は、医療用医薬品を取り扱う企業に対して、今年8月末時点の「自社製造販売承認取得品目の出荷状況」などをウエブ形式で聞いた。調査期間は9月16日~10月7日。回答社数は218社、対象品目数は1万5444品目。薬価収載品目は約1万4000品目で、日薬連は「母数としては、かなり正確なものと思っている」としている。対象品目の内訳は先発品4665品目、後発品9823品目、昭和42年以前の承認品(以下、「その他の医薬品」)が956品目――。供給停止や出荷調整が相次ぐなかで、厚労省医政局経済課の依頼を受け、日薬連が調査を実施した。
◎欠品・出荷停止品目の92.3% 出荷調整品目の91.8%が後発品
その結果、「欠品・出荷停止」は調査対象の4.8%に当たる743品目となっていた。先発品は34品目(先発品全体の0.7%)、後発品は686品目(後発品全体の7.0%)で、後発品が92.3%と大半を占めた。「出荷調整」は2400品目あり、15.5%を占めた。先発品は170品目(先発品全体の3.6%)、後発品は2204品目(後発品全体の22.4%)で、後発品が91.8%と、こちらも後発品が9割を占めていた。
出荷調整の要因を尋ねたところ、後発品では「自社事情」が732品目、「他社影響」が1472品目だった。なお、欠品や出荷調整には、新型コロナの感染拡大に伴う原薬不足や臨床現場の需要増を背景としたものも含まれる。
◎卸・医療機関・保険薬局への連絡 「欠品・出荷停止」時は93.6%、「出荷調整」時は91.3%
欠品や出荷停止、出荷調整などの情報開示、情報提供も重視される一方で、企業によりバラツキがあることも指摘されている。社外公表を行う企業は、「欠品・出荷停止」では90%(197社/218社)、「出荷調整」では79.8%(174社/218社)。自社ウエブサイトのほか、MR、お知らせ文書、DMを通じた情報提供を行う企業が多かった。
医薬品卸・医療機関・保険薬局に連絡を行う企業は、「欠品・出荷停止」では93.6%(204社/218社)、「出荷調整」では91.3%(199社/218社)。主な連絡方法は「お知らせ文書」、「MRによる説明」、「卸に情報提供を依頼」――だった。
医薬品卸や医療機関、保険薬局に製造販売元が100%、連絡を実施していないことが明らかになった。日薬連は、「理由等について今回のアンケートで調査していないため、実際の理由はわからない」とした上で、「本調査は製造販売承認の品目に関して聞いたものであり、製造販売承認を取得しているが、自社では販売せず、他社に販売委託しているため、出荷状況について社外公表等していないケースも一部にはあるのではないか」との見方を示した。ただ、「いずれにしても、日薬連安定確保委員会としては、出荷状況において卸様、医療関係者の皆様へ影響がある事案が発生した場合は、速やかに公表、伝達することが重要であると認識している」とコメントした。
◎通常出荷は全体の79.6% 先発品は95.6%、後発品は70.6%
一方、「通常出荷」は1万2301品目で、調査対象の79.6%を占めた。先発品は4461品目(先発品全体の95.6%)、後発品は6933品目(後発品全体の70.6%)、「その他の医薬品」は907品目(「その他の医薬品」全体の94.9%)――だった。なお、通常出荷については、規格単位で欠品や出荷調整が起きていないことと定義した。1規格に複数の包装単位を用意することが多いが、今回の調査では、一部の包装に欠品や出荷調整があったしても、他の包装で代替していれば「通常出荷」としている。
◎日薬連安定確保委員会・土屋委員長 「医薬品業界全体の課題と強く認識」
日薬連安定確保委員会の土屋直和委員長(田辺三菱製薬医療政策部長)は会見で、今回の調査を通じ、「初めて実態が明らかになった。後発品が『欠品・出荷停止』、『出荷調整』とも90%以上を占めたとのデータがあるにせよ、決して後発品だけの話ではなく、先発品を含む医薬品業界全体の課題と強く認識している」と強調した。そのうえで、欠品などの問題発生時に他社と情報共有・協議を円滑に進めるためのルール作りや出荷調整などの用語の整理・統一などを進める考えを示した。