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中医協で卸連 薬価制度、未妥結減算見直しへ「薬価調査の透明性」求める 

公開日時 2021/11/08 05:00
日本医薬品卸売業連合会は11月6日の中医協薬価専門部会で意見陳述に臨み、医薬品の安定供給体制の維持を最優先との考えを示し、「薬価調査の透明性を図るべきだ」と主張した。単品単価契約率は上昇する一方で、その過程に至る単品単価契約がなされていないとの指摘もあがるなかで、厚労省医政局経済課は卸を対象に実態調査を進めている。卸連の折本健司理事は、「これ(アンケート調査)を踏まえて、きちんとした薬価調査のなかでの薬価制度、あるいは未妥結減算の見直しが図れないと、調整幅の議論だけでは、甚だいまの卸の経営状況では厳しい」と訴えた。

この日の薬価専門部会に厚労省は、「医薬品の薬価改定(イメージ)」を提示した。製造原価にメーカーの粗利を加えた仕切価に、卸の粗利を加えたものが、医療機関や薬局が購入する納入価となる。薬価調査では、この卸販売価格を調査している。一方で、包装形態や販売規模、販売先(医療機関)が異なり、一定のバラツキが生じる。この結果、配送コストや供給状況などで、薬価を超える購入価格での取引は逆ザヤとなる。薬価以下でも、平均卸販売価格(納入価)プラス調整幅2%以上での取引では、購入価格が改定後薬価を上回る。薬価改定後は、改定による影響額(薬剤費削減総額)は製薬企業、卸、医療機関、薬局のいずれかに帰着することになる。

◎地域卸の営業利益は19年から97%減 21年度上期決算「赤字の卸が出てくる」


卸連の折本理事は、コロナ禍の2020年度の卸の決算状況として営業利益が約7割減まで冷え込んだことを紹介。特に地域卸はダメージが大きく、「地方卸16社の営業利益は令和元年度の100億から2億まで減額し、97%減になった。0.02という危機的な状況だ」と説明した。毎年薬価改定が導入されて以降、「我々から感じると2倍のスピードで薬価が落ちる」と述べた。流通改善に向けて、仕切価に割戻し(リベート)・アローアンスを可能な限り反映させることが求められるなかで、仕切価や原価が上昇したことも指摘。スペシャリティ―や後発品が増加するカテゴリーチェンジが進むなかで、「11月中旬に発表される21年度上期決算は、さらに悪化するような懸念がある。赤字の卸が出てくる」と危機感を露わにした。

◎後発品の自主回収で医薬品卸の持ち出し「年間400億円」と推計

後発品の自主回収や出荷調整も相次ぐなかで、医薬品卸数社を対象に9月、10月の2か月間をついて調査した結果も説明。後発品、代替する先発品も含めて約3100品目が出荷調整となっており、「春先から数えて今後もまだ続くとなると、5000を超える品目になるのではないか。1万4000品目のうち、5000品目となると、我々卸も大変な状況に陥っている」と見通した。また、卸の持ち出し経費が「年間約400億円」と推計されることも紹介した。

調整幅については、「我々の認識として、全国の医療機関、保険薬局で当然ながら、購入量、取引条件によって価格がばらついている現状の中で、それぞれのメーカー、卸、医療機関の立場での補正、調整を行うものと認識している。しかし、現状ではそれどころの状況では卸はない」と厳しい経営状況を訴えた。

調整幅をめぐっては2000年度改定で「薬剤流通の安定のため」として2%に設定されて以降、20年間変化していないことも指摘されている。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「2年ごとの改定でも毎年薬価改定でも乖離は同じようになってくる、若干不可思議だ」と指摘。これに対し、折本理事は、「加重平均が結果的に調整幅に加わっていくので薬価幅が出る仕組みになっている。一度も上がったことはない。しかしながら、その中でいろいろな価格の競争やポイントでは拡大再算定、中間年改定でぎくしゃくするが、調整幅2%以降、乖離率は一定になっているのではないか」と述べた。なお、調整幅は、以前のR幅方式では、個々の平均的な取引や銘柄で大きな薬価差が発生する可能性があり、逆ザヤ防止などの観点から導入された経緯がある。

◎診療側は「調整幅変更すべきではない」 村井専門委員「流通費=物流費ではない」


意見陳述後も調整幅に議論が及んだ。診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「今回のコロナの対応や、後発品の問題による安定供給障害で、その流通経費が増加していたり、様々な在庫管理コストが増加しているということを鑑みれば、現時点で調整幅を引き下げたり、変動させるということはなかなか難しいのではないか」との見解を表明した。診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、「後発医薬品の供給不足問題、中間年改定の影響が見えない。薬剤流通安定のために設定している調整幅については変更すべきではない」との見解を表明した。

一方で、支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、2021年度改定で設定された新型コロナ特例の“0.8%”について、「1回限りの対応ということだったので、改めてゼロベースで議論を行い、調整幅の在り方、概念から議論をしていくべき」と主張。「今後の議論に向けて物流コストといった薬剤流通の安定に関するデータの提供について可能かどうかも含めて検討をお願いしたい」と事務局に要望した。支払側の松本委員も、医薬品の剤形や投与経路、新薬・ジェネリック、薬価水準などに応じた資料を求めた。

村井泰介専門委員(バイタルケーエスケー・ホールディングス社長)は、「医療用医薬品は工場が出てから患者にわたるまですべてが流通の当事者であると考えている。流通費=物流費ではない」ことも強調した。

◎GE薬協・澤井会長「安定供給の原資は新製品に頼らざるを得ない」


後発品をめぐっては、初収載ルールに議論が及んだ。日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)の澤井光郎会長(沢井製薬会長)は、「根本的に安定供給をするためには、人員増や新たな施設投資など、設備能力を増強するものに取り組まなければならない。ただ、その原資は中間年改定の影響もあり、既存品からは期待するものではなく、新製品に頼らざるを得ない。新製品の上市は新たに患者様の負担軽減に貢献することもある。収載する限りは供給に不安を生じさせることなく、しっかり取り組む所存だ」と述べた。

診療側の有澤委員は、「初収載ルールは今回のタイミングで大きく変更すべきではない」と主張したが、城守委員は長期収載品の価格変動を踏まえた総合的な検討を求めた。支払側の松本委員も、「初収載後の実勢価格がどうなっているのか、というデータを出せないのか。それを見て検討するのがリーズナブルだ」など、実際のデータを踏まえた検討を求める声が相次いだ。

◎高額医薬品への対応で診療側・城守医院「市場拡大再算定の機動性高める仕組みも」

高額医薬品への対応も論点となった。診療側の城守委員は、「薬事承認の段階で、これまで以上に有効性・安全性についての議論をこれまで以上に充実させていく必要がある。その対応としての薬事承認の体制整備をさらに強化していただきたい。確認されたエビデンスについて最適使用推進ガイドラインなどで対象疾患や対象患者をしっかり設定すべき」と述べた。費用対効果評価の拡充の必要性にも言及した。そのうえで、「基本的には市場規模が大きくなったときに適用される市場拡大再算定に際して、迅速に拡大の状況を察知してそれに対応できるように、市場拡大再算定の機動性をさらに高めるような仕組みで検討していくことになるのではないか」と述べた。支払側の安藤委員は、“複合的な対応”の必要性を指摘。「透明性を確保したうえでの原価計算方式、市場拡大再算定、費用対効果評価の組み合わせで対応するというのが基本線ではなかろうか」との考えを示した。

業界意見陳述では、日薬連が新薬創出等加算の品目要件に、「有用性加算の対象となり得る効能追加を行った品目」、「薬価収載時には確認できなかった有用性が市販後のエビデンス等によって認められた品目」を追加すべきと主張。支払側の安藤委員は、「効能追加の在り方を検討する方向性には異論はないが、対象となる品目について一定の枠を定めることが必要では」と表明。想定する規模感を問われた赤名正臣委員(エーザイ)は2018~19年で新薬創出等加算品対象以外の品目で、効追を行ったのは13品目だったと説明。3年間で、「約4品目程度」との見通しを示した。

◎移転価格で支払側・安藤委員「透明性が重要という我々の議論を否定」 EFPIA主張に

欧州製薬団体連合会(EFPIA)の岩屋孝彦会長(サノフィ)は、移転価格の取り扱いについて、「提出が可能な費用については詳細情報を提供している」と説明。開示度が低い品目については、小さな加算係数の適用や、外国平均価格調整などの仕組みもあるため、「結果として開示度が低い品目の算定薬価は欧州主要国と比較しても低い水準にある」として、係数を用いた移転価格の調整はすべきではないとした。これに対し、支払側の安藤委員は、「結果としての価格水準だけで問題ないと言われてしまうと、透明性が重要というこれまでの我々の議論そのものを否定されているようにも感じる」と指摘した。

これに対し、岩屋会長は、「プレゼンの響きとして開き直っているようにもし聞こえたらそういう趣旨ではない。透明性を高めていくのは業界が望んでいること。透明性を高めることには最大の協力をする。現実問題として外資系企業の日本法人としては、徹底的に開示しているという現状もご理解いただければ。日本で製造にかかわる資料はすべて提供するように努めている」と理解を求めた。透明性を高める方策について問われたが、「いますぐ、ほかに方策があるわけではない」とも述べた。

◎市場拡大再算定 再算定対象品目より一日薬価が低い類似薬は除外を


米国製薬工業協会(PhRMA)のジェームス・フェリシアーノ在日執行委員会委員長は、市場拡大再算定の対象品目よりも一日薬価がすでに低い類似薬や、対象品と主たる効能・効果が異なる等、効能・効果の重なりが 小さいことが客観的に認められる類似薬は除外すべきと主張した。フェリシアーノ委員長は、「他社がどういう販売戦略でどう売れているか知らないが、注視していないと自社の製品も下げられてしまう。透明性と予見性が完全に失われてしまう状況になっている」と指摘。「私は日本という国を担当する経営をしているが、本社のトップにどう説明するか。私自身、非常に難しい立場になってしまう。ぜひ私の立場になって考えてほしい」と訴えた。
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