厚労省 12製品の効能追加などを承認 エンレストの「高血圧症」の追加も
公開日時 2021/09/28 04:51
厚生労働省は9月27日、12製品の効能追加や小児用量の追加などを承認した。8月30日の薬食審・医薬品第一部会で継続審議となり、そのわずか4日後の9月3日に再審議され、承認が了承されたARNI・エンレスト(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物、ノバルティスファーマ)の「高血圧症」の効能追加も含まれる。同剤の添付文書では、「過度な血圧低下のおそれ等があり、原則として本剤を高血圧治療の第一選択薬としないこと」と明記された。
また、この日、加齢黄斑変性症治療薬ルセンティスで初のバイオシミラーとなるラニビズマブBS硝子体内注射用キット10mg/mL「センジュ」(ラニビズマブ(遺伝子組換え)[ラニビズマブ後続1] 、千寿製薬)も承認された。
効能追加などが承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。薬効分類別に記載。
▽ミダフレッサ静注0.1%(ミダゾラム、アルフレッサファーマ):「てんかん重積状態」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は4年。薬効分類113。
成人の用法・用量が追加された。これまでは修正在胎45週以上(在胎週数+出生後週数)の小児のてんかん重積状態に用いていた。
▽エンレスト錠100mg、同錠200mg(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物、ノバルティスファーマ):「高血圧症」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2030年6月28日まで)。薬効分類219。
ネプリライシン阻害薬サクビトリルとARBバルサルタンを含有するアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)。今回承認された高血圧症について、添付文書の中の「効能又は効果に関する注意」で、「過度な血圧低下のおそれ等があり、原則として本剤を高血圧治療の第一選択薬としないこと」と記載された。
高血圧症の用法・用量は、「通常、成人にはサクサビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与する。なお、年齢や症状により適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする」となった。
▽エフメノカプセル100mg(プロゲステロン、富士製薬):「更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間は6年。薬効分類247。
天然黄体ホルモン製剤。天然型黄体ホルモンをマイクロナイズド化(微粒子化)することで、経口投与でも吸収しやすくした。卵胞ホルモン剤と併用して用いる。
▽アジルバ顆粒1%、同錠10mg、同錠20mg、同錠40mg(アジルサルタン、武田薬品):「高血圧症」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。薬効分類399。
小児の用法・用量は、「通常、6歳以上の小児には、アジルサルタンとして体重50kg未満の場合は2.5mg、体重50kg以上の場合は5mgの1日1回経口投与から開始する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減するが、1日最大投与量は体重50kg未満の場合は20mg、体重50kg以上の場合は40mgとする」となった。小児に使いやすい剤形として顆粒剤が追加された。
▽リンヴォック錠30mg(ウパダシチニブ水和物、アッヴィ):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は残余期間(28年1月22日まで)。薬効分類399。
経口JAK阻害薬。成人のアトピー性皮膚炎に対し、患者の状態に応じて30mgまで増量できるため、今回30mg錠の剤形追加が承認された。なお、既存の7.5mg製剤及び15mg製剤のアトピー性皮膚炎の効能追加は8月25日付で承認されている。
▽コセンティクス皮下注150mgシリンジ、同150mgペン、同75mgシリンジ(セクキヌマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。薬効分類399。
ヒト型抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体製剤。炎症性サイトカインであるIL-17Aと結合し、IL-17AのIL-17受容体への結合を阻害することで、IL-17Aの生理活性を阻害する。今回、乾癬の小児適応を追加し、併せて75mg製剤を追加した。
▽ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.2mL、同皮下注40mgシリンジ0.4mL、同皮下注80mgシリンジ0.8mL、同皮下注40mgペン0.4mL、同皮下注80mgペン0.8mL(アダリムマブ(遺伝子組換え)、アッヴィ):「中等症又は重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とし、小児用量の追加を含む新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。薬効分類399。
中等症から重症の小児潰瘍性大腸炎は、成人と比較して病変が広範囲に現れる傾向があり、重篤な合併症を引き起こすことがあるためアンメットニーズが存在する。
成人の潰瘍性大腸炎の用法・用量も追加され、初回投与4週間後以降、患者の状態に応じて、40mgを週1回又は80mgを2週に1回、皮下注射できることが追加された。現在は、初回投与4週間後以降、40mgを2週に1回の皮下注射で使用している。
▽リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注500mg(リツキシマブ(遺伝子組み換え)、全薬工業):「全身性強皮症」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
全身性強皮症(SSc)患者でB細胞の機能異常が報告されていることなどから、CD20陽性B細胞を傷害する本薬の治療効果が期待され、日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業による医師主導治験として臨床開発が進められた。
▽イムブルビカカプセル140mg(イブルチニブ、ヤンセンファーマ):「造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬。慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、同種造血幹細胞移植を受けた患者に発症する合併症。cGVHDに対する一次治療としてステロイドが使われる。しかし、約半数の患者で一次治療で十分な治療効果が得られず、二次治療が必要となるが、cGHVDに対する二次治療はこれまでに確立していない。
▽ラパリムス錠1mg(シロリムス、ノーベルファーマ):「難治性リンパ管疾患(リンパ管腫(リンパ管奇形)、リンパ管腫症、ゴーハム病、リンパ管拡張症)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
リンパ管疾患の病因は明確になっていないものの、PI3K/AKT/mTOR経路の異常活性により、血管やリンパ管の形成を制御している血管内皮細胞増殖因子の発現が増加し、リンパ管内皮細胞などの異常増殖を起こすことが原因のひとつと考えられている。mTOR阻害薬のラパリムスは、PI3K/AKT/mTOR 経路を抑制することで、リンパ管疾患に有効性を示すと考えられている。
リンパ管疾患は、外科的切除が困難な場合もあり、硬化療法、放射線療法などが行われている。しかし、根本的な治療は確立しておらず、日本でリンパ管疾患に係る適応を持つ薬剤はこれまで承認されていなかった。
▽オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同120mg、同240mg(ニボルマブ(遺伝子組み換え)、小野薬品):「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は6年1日。薬効分類429。
承認申請は、国立がん研究センター中央病院で実施された医師主導治験(PENGUIN試験)の結果に基づいて行われた。成人の古典的ホジキンリンパ腫に対しては16年12月に承認されている。なお、小児患者に対する現在の治療選択肢として、アドセトリス点滴静注用(ブレンツキシマブ ベドチン)、多剤併用化学療法などがある。
▽ノクサフィル錠100mg、同点滴静注300mg(ポサコナゾール、MSD):「侵襲性アスペルギルス症の治療」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余(2028年1月22日まで)。薬効分類617。
アゾール系抗真菌薬であり、エルゴステロールの生合成を阻害することで、抗真菌活性を示す。深在性真菌症の代表的な原因真菌の一つであるAspergillus(アスペルギルス)属による感染症をアスペルギルス症といい、このうち疾患の進行が速く、急速に肺中に進展する病型を侵襲性アスペルギルス症という。国内年間推定患者数は約4200人(2017年)。
◎ルセンティス初のバイオシミラーが承認 まず2つの適応で
▽ラニビズマブBS硝子体内注射用キット10mg/mL「センジュ」(ラニビズマブ(遺伝子組換え)[ラニビズマブ後続1] 、千寿製薬):「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、病的近視における脈絡膜新生血管」を効能・効果とするバイオ後続品。再審査期間はなし。薬効分類:131
眼科用VEGF阻害薬。先発品のルセンティスで初のバイオ後続品となる。先発品は5つの適応を持つが、再審査期間などの関係でバイオ後続品は▽中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性▽病的近視における脈絡膜新生血管――の2つの適応にとどまる。