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中外製薬のエブリスディ 費用対効果評価の該当は異例の「保留」に 15製品が薬価収載へ

公開日時 2021/08/05 04:52
中医協総会は8月4日、15成分23品目の薬価収載を了承した。ただ、中外製薬の脊髄性筋萎縮症(SMA)・エブリスディドライシロップは、薬価収載は了承されたものの、費用対効果評価の該当性については、「保留」となった。支払側が長期間の服用により高額となることを問題視し、費用対効果評価の対象とするべきと主張。該当性については改めて、中医協議論されることとなった。同剤については例外的に14日間の処方制限の対象外となることも了承されたが、診療側委員からは、製薬業界に対し、医療安全性への理解が必要との指摘もあった。このほか、新型コロナ治療薬・レムデシビルも収載された。

◎継続服用で高額となる品目 費用対効果評価の対象に含めるか議論

エブリスディドライシロップは指定難病であるSMAの治療薬であるため、現行の費用対効果評価のルールでは対象から除外される。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、長期間にわたる継続服用でトータルの薬剤費が膨れ上がることを問題視。年間の薬剤費が2000万円超となるとして、「例えば10年間服用し続けるとゾルゲンスマを超える薬剤費となる」と指摘した。そのうえで、「ゾルゲンスマと同様に、エブリスディドライシロップもH3を適用することが妥当ではないか」との見解を示した。

費用対効果評価における「H3」区分は、「著しく単価が高い等の中医協総会において必要と判断された品目」とされており、中医協総会で該当性を判断することになる。支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「1回の単価だけでなく、その薬を継続的に服用したときに高額になるものもその点は考慮すべき」との見解を表明した。

一方、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「この場において決定するのはやや早いのではないか。事務局として一定程度、資料を揃えることは可能か」と質問。厚労省保険局医療課の紀平哲也薬剤管理官は、継続服用した場合の薬剤費も含めて資料を整理できると応じた。城守委員は、「資料が出揃って、改めて議論すると考えたい」と述べた。これを受け、小塩隆士座長は、「費用対効果評価の扱いは保留。機会を設けて改めて議論いただく。薬価収載については承認された。薬価収載については中医協として承認する」と引き取った。

◎14日間処方制限除外のエブリスディ 診療側・松本委員「企業は日本のルールに理解を」

同剤をめぐっては、例外的に14日間の処方制限の対象外となることも了承された。ただ、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「コロナ禍で、SMAの患者で頻回の通院が難しいということは理解するが、20mgなどの製剤を開発していただければ、多少はこの問題が解決する。製薬企業に伝え、日本のルールをしっかりと守ることを基本にしていただきたい。患者の安全性を配慮したルールだということについて企業側に理解を求めてほしい」と厚労省に求めた。これに対し、紀平薬剤管理官は、「小さい製剤の開発は実際に企業では試みられた。ただ、本品目の有効成分の特徴として活性が高く、安定性等の問題が出たということで供給が難しいということで、今回は困難だったと聞いている」と理解を求めた。

このほか、この日収載されたレムデシビルについては、新型コロナの療養と同様の取り扱いとなり、患者負担は発生しない。現状は国が供給をしており、医療現場にまだ製品が残っていることから、「まずそちらを優先して使っていただき、当面はレムデシビルの保険費用は発生しない形で使われる。時期を見て薬価収載品に切り替えられる準備がされている。時期や取り扱いについては追って通知等で示す」(紀平薬剤管理官)と説明した。

◎ピーク売上高100億円超は6製品

同日、収載された品目のうち、予想ピーク時売上高が100億円超なのは、2型糖尿病治療薬ツイミーグ錠(大日本住友製薬)、片頭痛の抗体製剤であるアジョビ(大塚製薬)、アイモビーグ (アムジェン)、ウパシタ(三和化学)の6剤。

収載される製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)

▽エブリスディドライシロップ60mg、(リスジプラム、中外製薬)
薬効分類:119 その他の中枢神経系用薬(内用薬)
効能・効果:脊髄性筋萎縮症
薬価:60mg1瓶 974,463.70円(1日薬価:63,714.40円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数416人、販売金額102億円
加算:有用性加算(II)(A=5%)「既存薬と異なり、本剤は経口投与製剤であるため入院を伴うことなく投与が可能であり、患者にとって利便性が高いと言える。以上から、有用性加算(II)(A=5%)を適用することが適当と判断した」
新薬創出等加算:主な理由「希少疾病用医薬品として指定」
費用対効果評価:保留(中医協で改めて議論)

脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する初の経口薬。

▽ベリキューボ錠2.5mg、同5mg、同10mg(ベルイシグアト、バイエル薬品)
薬効分類:219その他の循環器用薬(内用薬)
効能・効果:慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)
薬価:2.5mg1錠 131.50円、5mg1錠 230.40円、 10mg1錠 403.80円(1日薬価:403.80円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数10万人、販売金額95億円
加算:なし
費用対効果評価:該当する(H5)

可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬として初めての薬剤。心不全の標準治療に上乗せして処方する。添付文書上の効能又は効果に関連する注意として、「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」、「臨床成績の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率、収縮期血圧など)を十分に理解した上で適応患者を選択すること」が求められている。

▽ツイミーグ錠500mg(イメグリミン塩酸塩、大日本住友製薬)
薬効分類:内396 糖尿病用剤(内用薬)
効能・効果:2型糖尿病
薬価:500mg1錠 34.40円(1日薬価:137.60円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数40万人、販売金額143億円
加算:なし
費用対効果評価:該当なし

ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰへの作用を介し、膵β細胞におけるグルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制・糖取り込み能改善)という2つのメカニズムで血糖降下を示す。通常、成人はイメグリミン塩酸塩として1回1000mgを1日2回朝、夕に経口投与する。

▽タズベリク錠200mg(タゼメトスタット臭化水素酸塩、エーザイ)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(内用薬)
効能・効果:再発又は難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)
薬価:200mg1錠 3,004.60円(1日薬価:24,036.80円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数286人、販売金額24億円
加算:有用性加算(II)(A=5%)「新規作用機序としてEZH2に対する選択的な阻害作用を有し、2つ以上の前治療歴を有する患者を対象に一定の奏効率を示していることから本剤の臨床上の有用性があると考えられる」
新薬創出等加算:主な理由「加算適用」
費用対効果評価:該当しない

ヒストン等のメチル基転移酵素であるEZH2の酵素活性に対する阻害作用を有する低分子化合物。細胞周期停止及びアポトーシス誘導を生じさせることで、腫瘍増殖抑制作用を示すと推測されている。

▽ハイヤスタ錠10mg(ツシジノスタット、Huya Japan)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(内用薬)
効能・効果:再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫
薬価:10mg1錠 20,030.50円(1日薬価:22,892.00円)
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数305人、販売金額2.9億円
新薬創出等加算:主な理由「希少疾病用医薬品として指定」
費用対効果評価:該当しない

ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬。中国で創出され、国内はMeiji Seikaファルマが独占的に販売する。

▽アジョビ皮下注225mgシリンジ(フレマネズマブ(遺伝子組換え)、大塚製薬)
薬効分類:119 その他の中枢神経系用薬(注射薬)
効能・効果:片頭痛発作の発症抑制
薬価:225mg1.5mL1筒 41,356円(1日薬価:1,477円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数4.0万人、販売金額137億円
加算:なし
費用対効果評価:該当する(H=5)

カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に結合し、2つのアイソフォーム(α-及びβ-CGRP)のCGRP受容体への結合を阻害するヒト化モノクローナル抗体。

▽アイモビーグ皮下注70mgペン (エレヌマブ(遺伝子組換え)、アムジェン)
薬効分類:119 その他の中枢神経系用薬(注射薬)
効能・効果:片頭痛発作の発症抑制
薬価:70mg1mL1キット 41,356円(1日薬価:1,477円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数5.7万人、販売金額153億円
加算:なし
費用対効果評価:該当する(H=5)

CGRP受容体に直接作用するヒトIgG2モノクローナル抗体。


▽レベスティブ皮下注用3.8mg(テデュグルチド(遺伝子組換え、武田薬品)
薬効分類:249 その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)(注射薬)
効能・効果:短腸症候群
薬価:3.8mg1瓶(溶解液付) 79,302円
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数257人、販売金額60億円
加算:有用性加算(II)(A=5%):「これまで短腸症候群に対する治療薬がなかった状況で、経静脈栄養サポート量の減 少による本剤の有効性は示されたことから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(I)(A=10%):「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
新薬創出等加算: 該当する 主な理由「希少疾病用医薬品として指定」
費用対効果評価:該当する(H2)

遺伝子組換えヒトグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)類縁体。日本外科学会から厚労省に開発要望が提出され、医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議の議論を経て、厚労省から開発要請がなされていた。

▽ルタテラ静注(ルテチウムオキソドトレオチド(177Lu、富士フイルム富山化学)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(注射薬)
効能・効果:ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍
薬価:7,4GBq25mL1瓶 2,648,153円
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数205人、販売金額22億円
加算:有用性加算(II)(A=10%)「NETTER-1試験において、高用量オクトレオチドを対照とした無作為比較試験が行われたが、対照群に対する本剤群のPFSの優越性が検証され、審査報告書で『臨床的意義のある効果の大きさが認められた』と評価されていることから、有用性加算(II)A=10%が妥当と判断した」
新薬創出等加算:主な理由「加算適用」
費用対効果評価:該当しない

▽ライザケア輸液(L-リシン塩酸塩/L-アルギニン塩酸塩、富士フイルム富山化学)
薬効分類:325 たん白アミノ酸製剤(注射薬)
効能・効果:ルテチウムオキソドトレオチド(177Lu)による腎被曝の低減
薬価:1L1袋 1,180円(1日薬価:1,180円)
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数205人、販売金額97万円
加算:なし
費用対効果評価:該当なし

ルタテラは、ソマトスタチン類似物質に放射性同位元素のルテチウム177を標識した治療用放射性医薬品。ライザケアはルタテラによる腎臓の被ばくを低減するために用いる輸液で、2剤を併用して用いる。

▽ギブラーリ皮下注189mg(ギボシランナトリウム、Alnylam Japan)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(注射薬)
効能・効果:急性肝性ポルフィリン症
薬価:189mg1mL1瓶 5,006,201円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数64人、販売金額37億円
加算:有用性加算(I)(A=40%) 「本剤はsiRNAによりALAS1を減少させる作用を有する新規作用機序医薬品である。また、発作時に4日間点滴静注が必要な既存の治療法に比べ、使用に際しての利便性が著しく高いものと考えられる。以上より、有用性加算(I)(A=40%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(I)(A=10%)「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
新薬創出等加算: 該当する「主な理由:希少疾病用医薬品として指定」
費用対効果評価:該当なし

アミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)を標的とするRNA干渉(RNAi)治療薬。通常、12歳以上の患者には、ギボシランとして2.5mg/kgを1か月に1回皮下投与で用いる。

▽ウパシタ静注透析用25μgシリンジ、同50μg、同100μg、同150μg、200μg、同250μg、同300μg(ウパシカルセトナトリウム水和物、三和化学研究所)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(注射薬)
効能・効果:血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症
薬価:
25μg1mL1筒976円
50μg1mL1筒1,392円
100μg1mL1筒 2,007円
150μg1mL1筒 2,494円
200μg1mL1筒 2,914円
250μg1mL1筒3,291円
300μg1mL1筒3,635円(1日薬価:1,513円)
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数3.4万人、販売金額104億円
加算:なし
費用対効果評価:該当なし

カルシウム受容体に作動し、主としてPTH分泌を抑制することで、血中PTH濃度を低下させる。製造、販売、流通は三和化学が行い、三和化学とキッセイ薬品で共同販促する。

▽ユニツキシン点滴静注17.5mg/5mL(ジヌツキシマブ(遺伝子組換え、大原薬品)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(注射薬)
効能・効果:大量化学療法後の神経芽腫
薬価:17.5mg5mL1瓶 1,365,888円
市場予測(ピーク時2年後):投与患者数68人、販売金額23億円
加算:有用性加算(II)(A=5%) 「本剤は日本小児血液・がん学会作成の小児がん診療ガイドライン(2016年版)において、大量化学療法後の神経芽腫に対する標準治療として推奨されていることを踏まえ、標準的治療に位置づけられると考えられる」
市場性加算(I)(A=10%) 「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。ただし、症例数が限られて市場規模が小さいことは原価計算方式の計算の中で価格に 反映されていることを踏まえて、限定的な評価とした」
新薬創出等加算:主な理由「希少疾病用医薬品として指定」
費用対効果評価:該当しない

ヒトジシアロガングリオシド(GD)2に対する抗体。G-CSF製剤グラン注射液(一般名:フィルグラスチム(遺伝子組換え)、協和キリン)と遺伝子組換え型インターロイキン-2製剤イムネース注(同テセロイキン、塩野義製薬)の3剤併用で投与する。グラン、イムネースとも6月23日に、「神経芽腫に対するジヌツキシマブ(遺伝子組換え)の抗腫瘍効果の増強」の効能追加を取得した。

▽レカルブリオ配合点滴静注用(レレバクタム水和物/イミペネム水和物/シラスタチンナトリウム、MSD)
薬効分類:612 主としてグラム陰性菌に作用するもの(注射薬)
効能・効果:<適応菌種> 本剤に感性の大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、緑膿菌、アシネトバクター属 ただし、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す菌株に限る <適応症> 各種感染症
薬価:1瓶 22,447円
市場予測(ピーク時7年後):投与患者数1065人、販売金額11億円
加算:有用性加算(II)(A=5%)「米国のガイドラインでの位置づけを踏まえれば、一部の耐性菌感染症例において本剤が唯一の標準的治療に位置づけられると考えられる」
市場性加算(I)(A=10%)「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
新薬創出等加算:主な理由「希少疾病用医薬品として指定」
費用対効果評価:該当しない

レレバクタムのみ新有効成分で、β-ラクタマーゼ阻害薬。

▽ベクルリー点滴静注用100mg(レムデシビル、ギリアド・サイエンシズ)
薬効分類:注625 抗ウイルス剤(注射薬)
効能・効果:SARS-CoV-2による感染症
薬価:100mg1瓶 63,342円
市場予測(ピーク時初年度):投与患者数42,775人、販売金額181億円
加算:新薬創出等加算 主な理由「新規作用機序医薬品」
費用対効果評価:該当する(H1)

RNAポリメラーゼ阻害薬。20年5月7日に特例承認されている。

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