厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会は４月28日、新薬２製品の承認可否を審議し、いずれも承認することを了承した。２月の同部会で継続審議となったバイエル薬品の慢性心不全薬ベリキューボ錠（一般名：ベルイシグアト）も含まれる。

ベリキューボは前回の部会で、▽新規の慢性心不全薬としてエンレストやフォシーガが2020年に相次ぎ承認されている中でのベリキューボの臨床的な位置付け、▽ベリキューボの適正使用に向けた情報提供内容――などが指摘され、継続審議となった。今回、ベリキューボを含む慢性心不全の新薬が臨床現場で適切に選択・処方されるよう、ベリキューボについては、▽臨床試験の詳細なデザイン、▽日本人に関する部分集団解析の結果――について資材などでしっかり情報提供することが確認され、承認することが了承された。

同省は部会後に、「（臨床試験成績や試験デザインを）適切に情報提供して、臨床現場でどの薬剤を優先的に使用するのかの判断をしてもらうという主旨」と説明した。なお、同剤はフェーズ３試験「VICTORIA」の試験結果をもとに申請された（記事はこちら）。

ベリキューボは、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に対する治療選択肢となり、標準治療に上乗せして用いる。効能・効果の注意の項で、左室駆出率が保たれた慢性心不全における有効性や安全性が確立していないことから、「左室駆出率の低下した慢性心不全に投与すること」とされた。

このほか、この日の部会では、大鵬薬品の制吐剤アロキシ静注、同点滴静注バッグ（パロノセトロン塩酸塩）に小児用量を追加することが審議され、承認することが了承された。

【審議品目】（カッコ内は一般名、申請企業名）

▽ベリキューボ錠2.5mg、同錠５mg、同錠10mg（ベルイシグアト、バイエル薬品）：「慢性心不全。ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は８年。

可溶性グアニル酸シクラーゼ（sGC）刺激薬と呼称する新クラスの薬剤。sGCは血管および心臓の両方の機能にとって重要だが、心不全患者では一酸化窒素（NO）の利用能の障害のために十分にsGCが刺激されず、結果として心不全や血管障害を引き起こす。ベリキューボは現在の治療法では対処されていないNO-sGC-cGMP経路に作用し、機能を回復させることが期待されている。

同剤は心不全の標準治療に上乗せして用いる。用法・用量は、「通常、成人にはベルイシグアトとして、１回2.5mgを１日1回食後経口投与から開始し、２週間間隔で１回投与量を５mg及び10mgに段階的に増量する。なお、血圧等患者の状態に応じて適宜減量する」となった。

効能・効果に関連する注意には、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与することや、臨床成績の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景（前治療、左室駆出率、収縮期血圧など）を十分に理解した上で適応患者を選択すること、などが記載された。

海外では21年３月時点で、慢性心不全に関連する効能・効果で米国で承認されている。

▽アロキシ静注0.75mg、同点滴静注バッグ0.75mg（パロノセトロン塩酸塩、大鵬薬品）：「抗悪性腫瘍剤（シスプラチン等）投与に伴う消化器症状（悪心、嘔吐）（遅発期を含む）」を効能・効果とする新用量医薬品。今回、小児の用法・用量を追加する。再審査期間は４年。

5-HT3受容体拮抗型制吐剤で、がん化学療法剤投与後の悪心、嘔吐の予防に用いる。従来の5-HT3受容体拮抗型制吐剤では効果が不十分だった遅発性の悪心、嘔吐にも有効性が確認されている。

今回、用法・用量から「成人には」との文言を削除し、「ただし、18歳以下の患者には、通常、パロノセトロンとして2μg/kgを１日１回静注又は点滴静注することとし、投与量の上限は1.5mgとする」を追記することになった。

海外では20年７月時点で、小児のがん化学療法誘発性悪心・嘔吐（CINV）の効能・効果について50以上の国・地域で承認済み。