武田薬品 CoVIg-19アライアンスによる高度免疫グロブリン製剤の臨床第3相試験で評価項目達成できず
公開日時 2021/04/05 04:52
武田薬品は4月2日、CSLベーリングと共同で結成した「CoVIg-19 Plasma Alliance」(CoVIg-19アライアンス)の抗コロナウイルス高度免疫グロブリン製剤(H-Ig)の臨床第3相試験について、評価項目を達成できなかったと発表した。CoVIg-19アライアンスは、血漿分画製剤で世界をリードする製薬会社が集まり、20年4月に結成された。今回の臨床試験では、レムデシビルを含む標準治療に高度免疫グロブリン製剤を追加投与した際の、疾患進行のリスク低減を評価項目としたが、安全性の重大な懸念は認められなかったものの、忍容性と有効性を評価できなかった。これによりCoVIg-19アライアンスの取り組みは終了する。
CoVIg-19アライアンスには、BioPharma Plasma、Biotest、GC Pharma、LFB、National Bioproducts Institute、Octapharma、Sanquinなどが参加。 ビル&メリンダ・ゲイツ財団がアドバイザーとして支援し、マイクロソフトがCoVIg-19アライアンスのウェブサイトやドナー募集のための「Plasma Bot」などの技術を提供した。PallやUber Healthなどの組織も現物支援などで協力している。
今回の臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」は、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立アレルギー・感染症研究所が実施する国際多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験。ITAC試験は、新型コロナウイルス感染症に対する、抗ウイルス剤・レムデシビルとSARS-CoV-2を中和する高濃度の抗体を含有する抗コロナウイルス高度免疫グロブリン静注製剤からなるレジメンの安全性、忍容性および有効性を評価した。高度免疫グロブリン静注製剤に含まれる抗体は、新型コロナウイルスから回復した健常者から提供された血液の液体成分である血漿から採取されたものを使用した。
ITAC試験には米国など10か国の63施設で、発症後12日以内の約600名が試験登録された。ただ、評価項目を達成しなかった。CoVIg-19アライアンスの共同リーダーである武田薬品のJulie Kim氏(Plasma-Derived Therapies Business Unitプレジデント)は、「公衆衛生に恩恵をもたらし、複雑な分野での理解を深めることを目的に、各自がリソースを持ち寄り、各々の負担でインフラや血漿に関する専門知識を結集させられたことを誇りに思う」と強調。「この1年間、我々をサポートしてくれた製薬企業外の組織を含めて非常に感謝している。また、試験に参加した患者さん、柔軟な姿勢で支援し協力してくれた規制当局や政府機関にも心からの感謝を申し上げる」とコメントした。