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薬食審・第二部会 新薬8製品の承認了承 非オピオイド貼付剤で初のがん疼痛薬ジクトルなど

公開日時 2021/02/22 20:50
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は2月22日、新薬8製品の承認の可否を審議し、いずれも承認することを了承した。この中には、がん疼痛を効能・効果とする非オピオイド鎮痛剤として初の貼付剤となるジクトルテープ(一般名:ジクロフェナクナトリウム、申請企業:久光製薬)がある。1日1回貼付の全身投与型経皮吸収製剤で、侵襲性のないがん疼痛管理における新たな治療選択肢となる。

このほか、抗がん剤・レンビマカプセル(レンバチニブメシル酸塩、エーザイ)に胸腺がんの適応を追加することや、再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に用いる抗CD79b抗体薬物複合体・ポライビー点滴静注用(ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)、中外製薬)、FGFR2融合遺伝子陽性の胆道がんに用いるペマジール錠(ペミガチニブ、インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン)なども含まれる。

いずれも3月中に正式承認される見込み。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)

アリケイス吸入液590mg(アミカシン硫酸塩、インスメッド):「適応菌種:アミカシンに感性のマイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)、適応症:MACによる肺非結核性抗酸菌症」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間6年。

アミノグリコシド系抗菌薬。有効成分のアミカシンは注射薬として承認され、様々な細菌感染症に使用されている。同吸入液はアミカシンの全身曝露を抑えて副作用を軽減しつつ、肺内へ効率的に薬剤を送達することが可能となるよう、リポソーム化アミカシンの吸入剤として開発されたもの。アミカシンとして初の吸入薬となる。

海外では20年12月時点で、欧米など5つの国・地域で承認済み。

ジクトルテープ75mg(ジクロフェナクナトリウム、久光製薬):「各種がんにおける鎮痛」を効能・効果とする新効能・新剤形医薬品。再審査期間は4年。

フェニル酢酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)。久光のTDDS(経皮薬物送達システム)技術を用いて経皮吸収性を向上させ、3枚貼付時のジクロフェナクの全身曝露量が既承認の徐放性カプセル剤(ナボールSRカプセル)と同程度になるよう製剤設計された1日1回貼付の全身投与型経皮吸収製剤。がん疼痛に対する効能・効果を有するNSAIDsなどの非オピオイド鎮痛剤として、初の貼付剤となる。

ジクトルは通常、成人に対し、1日1回、2枚(ジクロフェナクナトリウムとして150mg)を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部、大腿部に貼付し、1日毎に貼り替えて用いる。症状や状態により1日3枚(ジクロフェナクナトリウムとして225mg)に増量できる。

がん疼痛に対する薬物療法に関する国内外のガイドラインでは、非オピオイド鎮痛剤は痛みの強さに応じて、単剤またはオピオイド鎮痛薬と併用使用することとされている。ただ、非オピオイド鎮痛薬の経口摂取が困難な患者がいることから、今回の全身投与型経皮吸収製剤が開発された。

海外で承認されている国はない。

アキュミン静注(フルシクロビン(18F)、日本メジフィジックス):「初発の悪性神経膠腫を疑う患者における腫瘍の可視化。ただし、磁気共鳴コンピューター断層撮影検査による腫瘍摘出計画時における腫瘍摘出範囲の決定の補助に用いる」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。日本脳神経外科学会から早期承認の要望書が提出されていたもの。

放射性フッ素で標識されたフルシクロビンを有効成分とするPETトレーサー。

同剤はアミノ酸トランスポーターを介して細胞内に取り込まれる。腫瘍細胞などでは正常細胞よりもアミノ酸代謝が亢進していることからアミノ酸がより多く取り込まれることを利用して、同剤を用いたPET検査により腫瘍の可視化が可能となる。

海外では再発前立腺がんの診断に係る効能・効果で米国で16年5月に初めて承認されて以降、20年7月時点で欧米32か国で承認済み。

ダラキューロ配合皮下注(ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「多発性骨髄腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。再審査期間は8年。

ダラツムマブはCD38を標的とするモノクローナル抗体で、多発性骨髄腫に用いる点滴静注製剤「ダラザレックス」として承認されている。今回は、ダラツムマブに新有効成分のボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)を配合した皮下注製剤で、投与時間の短縮、固定用量による薬剤調整手順の簡略化などによる患者及び医療従事者の負担軽減が期待されている。

ボルヒアルロニダーゼアルファは、真皮の主要な結合基質であるヒアルロン酸をN-アセチルグルコサミンの四糖類、または六糖類のサブユニット及びグルクロン酸に脱重合することにより、皮下組織に薬剤を注入する際の抵抗を減少させ、薬剤の体内への浸透と分散を促進する。

海外では20年11月時点で、多発性骨髄腫(MM)に係る効能・効果で7つの国・地域で承認済み。

ベネクレクスタ錠10mg、同錠50mg、同錠100mg(ベネトクラクス、アッヴィ):「急性骨髄性白血病」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

BCL-2と呼ばれる体内の特定タンパク質を標的とする経口BCL-2阻害薬。いくつかの血液がんでは、BCL-2がアポトーシスと呼ばれるがん細胞の自然死や自己破壊の過程を阻止する。同剤はBCL-2タンパク質を標的とし、がん細胞により失われたアポトーシスの過程を回復させる作用がある。

今回の適応追加による対象患者は、強力な寛解導入療法の適応とならない未治療の急性骨髄性白血病(AML)患者となる。この日の部会に報告された代謝拮抗薬ビダーザ注射用と併用して用いる。

海外では20年11月時点で、未治療のAMLに係る効能・効果で25の国・地域で承認済み。

ポライビー点滴静注用30mg、同点滴静注用140mg、(ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)、中外製薬):「再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

ファースト・イン・クラスの抗CD79b抗体薬物複合体。ヒト化抗CD79bモノクローナル抗体とチューブリン重合阻害薬をリンカーで結合させた薬剤。CD79bタンパクは、多くのB細胞で特異的に発現しており、新たな治療法を開発する上で有望なターゲットとされる。同剤は正常細胞への影響を抑えつつCD79bに結合し、送達された化学療法剤によりB細胞を破壊すると考えられている。

同剤はシンバイオ製薬の抗がん剤トレアキシン(一般名:ベンダムスチン塩酸塩)と併用して用いる。この日の部会で、トレアキシンのポライビーとの併用に係る新効能・新用量が報告された。

海外では20年11月時点で、再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に係る効能・効果で54の国・地域で承認済み。

レンビマカプセル4mg、同カプセル10mg(レンバチニブメシル酸塩、エーザイ):「切除不能な胸腺がん」を効能・効果とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

マルチキナーゼ阻害薬で、腫瘍の増殖を抑制する。胸腺がんは、国内患者数が140人~200人程度と推定される極めて希少な疾患。切除不能な胸腺がんに対しては、プラチナ製剤を含む1次療法が推奨されているが、2次療法以降は標準的な治療法が確立していない。依然として予後不良な疾患で、新たな治療薬の開発が望まれている。

海外では20年11月時点で、胸腺がんに係る効能・効果で承認されている国・地域はない。

なお、エーザイと、MSDの親会社の米メルクはレンビマのグローバルな共同開発と共同販促を行う戦略的提携を結んでいる。両社はレンビマの単剤療法と、メルクの抗PD-1抗体キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法について共同開発・共同販促を行っている。

ペマジール錠4.5mg(ペミガチニブ、インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン):「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

ファースト・イン・クラスの選択的線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害薬。FGFRのリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することで、FGFR2融合遺伝子を有する胆道がんに対して腫瘍増殖抑制効果を示すと考えられている。

ペマジールによる高リン血症に対処するため、ニプロの炭酸ランタン顆粒分包「ニプロ」を併用する。このため、ニプロの炭酸ランタンにペマジール錠との併用に係る新効能を追加することが、この日の部会で報告された。

海外では20年11月末時点で、米国で承認(20年4月)されている。

なお、インサイト日本法人はペマジールを自社販売する方針。同社は20年9月のミクスの取材に対し、MRの採用活動を進める意向を示していた。インサイト製品のうち既に国内導入されているのは、経口JAK阻害薬ジャカビ、経口MET阻害薬タブレクタ、経口JAK阻害薬オルミエント――の3剤。ジャカビとタブレクタの製造販売元はノバルティスファーマ、オルミエントは日本イーライリリーとなる。

■ヒュミラで3剤目のバイオシミラー登場へ

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

アダリムマブBS皮下注20mgシリンジ0.2mL「MA」、同皮下注40mgシリンジ0.4mL「MA」、同皮下注80mgシリンジ0.8mL「MA」、同皮下注40mgペン0.4mL「MA」(アダリムマブ(遺伝子組換え)[アダリムマブ後続3]、持田製薬):「関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、既存治療で効果不十分な▽多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎▽尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬▽強直性脊椎炎▽腸管型ベーチェット病▽中等症又は重症の活動期にあるクローン病の寛解導入及び維持療法▽中等症又は重症の潰瘍性大腸炎の治療」を効能・効果とするバイオ後続品。再審査期間なし。

ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体ヒュミラで3剤目となるバイオ後続品。先発品にある化膿性汗腺炎などの一部効能は含まれない。海外では20年10月時点で、承認されている国・地域はない。

トレアキシン点滴静注用25mg、同点滴静注用100mg(ベンダムスチン塩酸塩、シンバイオ製薬):「再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。

ナイトロジェンマスタード構造を有するベンゾイミダゾール誘導体。この日に審議され、承認することが了承された抗CD79b抗体薬物複合体ポライビー点滴静注用と併用して使えるようにするための効能追加となる。海外では20年11月時点で、再発又は難治性のDLBCLで承認されている国・地域はない。

ビダーザ注射用100mg(アザシチジン、日本新薬):「急性骨髄性白血病」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間なし。

核酸合成を阻害する代謝拮抗剤で、DNAメチル化阻害作用および殺細胞作用を有する。未治療の急性骨髄性白血病(AML)に対する単剤投与のほか、この日に審議され、承認することが了承された経口BCL-2阻害薬ベネクレクスタ錠(一般名:ベネトクラクス)との併用でも使える。

海外では20年11月時点で、未治療のAMLに係る効能・効果で77の国・地域で承認済み。なお、NCCNガイドラインでは同剤単独投与及び同剤とベネトクラクスとの併用投与はいずれも強力な寛解導入療法の適応とならない未治療のAMLに対する治療として推奨されている。

炭酸ランタン顆粒分包250mg「ニプロ」、同顆粒分包500mg「ニプロ」(炭酸ランタン水和物、ニプロ):「FGFR阻害剤投与に伴う高リン血症の改善」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間なし。

この日に審議され、承認することが了承されたFGFR阻害薬ペマジールと併用して使えるようにするための効能追加となる。ニプロの炭酸ランタンは後発医薬品だが、臨床試験でニプロ製品を用いたため、ニプロの炭酸ランタンに新効能を追加する。海外では20年11月時点で、FGFR阻害剤投与に伴う高リン血症の改善を効能・効果として承認されている国・地域はない。
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