薬食審 2月25日に第一部会 新薬10製品を審議 バイエルの慢性心不全薬など
公開日時 2021/02/10 21:45
厚生労働省は2月10日、新薬の承認可否の審議などを行う薬食審医薬品第一部会を25日にウェブ会議で開催すると発表した。審議品目は10製品で、うち新有効成分含有医薬品は6製品。この中にはバイエル薬品の新規の慢性心不全薬ベリキューボ錠(一般名:ベルイシグアト)や帝人ファーマの骨粗鬆症治療に用いる新規の副甲状腺ホルモン(PTH)製剤オスタバロ皮下注(同アバロパラチド酢酸塩)、田辺三菱製薬の視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬ユプリズナ点滴静注(同イネビリズマブ(遺伝子組換え))が含まれる。
報告品目は2製品で、この中には糖尿病に用いる超速効型インスリンアナログ注射液ノボラピッドで初のバイオ後続品となる「インスリンアスパルトBS注ソロスターNR「サノフィ」」が含まれる。先発品はノボ ノルディスク ファーマの製品、バイオ後続品はサノフィの製品となる。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽イスツリサ錠1mg、同錠5mg(オシロドロスタットリン酸塩、レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン):「クッシング症候群」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
クッシング症候群は副腎から分泌されるコルチゾールの作用が過剰になることにより、特徴的な身体徴候を呈する病気のこと。身体徴候には満月様顔貌、野牛肩、中心性肥満、皮膚菲薄化、腹部赤色皮膚線条、近位筋の筋力低下などがある。申請企業はイタリアのレコルダティグループの日本法人で、2018年に設立された。
▽オスタバロ皮下注カートリッジ3mg(アバロパラチド酢酸塩、帝人ファーマ):「骨粗鬆症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
新規の副甲状腺ホルモン(PTH)製剤。有効成分のアバロパラチドは、細かく分類すると、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)の誘導体で、Gタンパク質が結合した副甲状腺ホルモン1型受容体を選択的に刺激することで骨形成を促進する。
申請に用いたフェーズ3試験では1日1回78週間皮下投与したデザインで、承認された場合の用法・用量が78週(約1年半)までとなるかも注目ポイントとなる。競合品のPTH製剤フォルテオは最大24か月投与できる。
▽イズカーゴ点滴静注用10mg(パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)、JCRファーマ):「ムコ多糖症II型」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。先駆け審査指定品目。希少疾病用医薬品。
同剤はマンノース6リン酸受容体を介した作用に加え、JCR独自の血液脳関門(BBB)通過技術である「J Brain Cargo」によりトランスフェリン受容体を介してBBBを通過させることで、中枢神経症状に対する作用が期待される薬剤。
ムコ多糖症II型はライソゾーム病の一種で、ムコ多糖を体内で分解する酵素の欠損により発症するX染色体連鎖劣性遺伝性疾患。国内患者数は約 250 人。幅広い症状があるなか、既存の治療酵素製剤はBBBを通過できないため、脳内で薬効を発揮できず、中枢神経症状に対し効果が期待できないことが大きな課題となっている。
▽リオナ錠250mg(クエン酸第二鉄水和物、日本たばこ産業):「鉄欠乏性貧血」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
リン吸着薬。現在、慢性腎臓病患者の高リン血症治療薬として使用されている。鉄欠乏性貧血の適応追加が承認された場合、この新適応に関しては、日本たばこ産業(JT)子会社の鳥居薬品のほかに、産婦人科領域に強みを持つあすか製薬も情報活動を行う。
▽レコベル皮下注12μgペン、同皮下注36μgペン、同皮下注72μgペン(ホリトロピン デルタ(遺伝子組換え)、フェリングファーマ):「調節卵巣刺激」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
不妊治療に用いる医薬品。
▽ベリキューボ錠2.5mg、同錠5mg、同錠10mg(ベルイシグアト、バイエル薬品):「慢性心不全」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬で、承認されるとファースト・イン・クラス薬となる。sGCは血管および心臓の両方の機能にとって重要だが、心不全患者では一酸化窒素(NO)の利用能の障害のために十分にsGCが刺激されず、結果として心不全や血管障害を引き起こす。同剤は現在の治療法では対処されていないNO-sGC-cGMP経路に作用し、機能を回復させる。心不全の標準治療と併用して、1日1回の経口投与で用いる。
▽ヴォリブリス錠2.5mg(アンブリセンタン、グラクソ・スミスクライン):「肺動脈性肺高血圧症」を対象疾患とする新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
エンドセリン受容体拮抗薬。現在は成人の肺動脈性肺高血圧症(PAH)に使用できるが、今回、小児用量を追加する。
▽ロナセン錠2mg、同錠4mg、同錠8mg、同散2%(ブロナンセリン、大日本住友製薬):「統合失調症」を対象疾患とする新用量医薬品。
非定型抗精神病薬。現在は成人の統合失調症に使用できるが、今回、小児用量を追加する。
▽ユプリズナ点滴静注100mg(イネビリズマブ(遺伝子組換え)、田辺三菱製薬):「視神経脊髄炎スペクトラム障害」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
抗体を産生する形質芽細胞や形質細胞を含むB細胞の表面に発現するCD19に高い親和性を持つヒト化抗CD19モノクローナル抗体製剤。CD19に結合することで、これらの細胞を循環血液中から除去する。
視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、重度の再発を繰り返し致命的となり得る中枢神経系の自己免疫疾患。身体の免疫システムが健康な細胞(一般的には視神経、脊髄、脳)を攻撃し、再発や重篤な傷害をもたらす。その結果、目の痛みや失明、重度の筋力低下、麻痺、しびれ、腸や膀胱の機能低下、呼吸不全を引き起こす。国内有病率は10万人あたり2~4人とされる。
▽ケシンプタ皮下注20mgペン(オファツムマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「多発性硬化症」を対象疾患とする新投与経路、新効能医薬品。希少疾病用医薬品。
ヒト型抗CD20モノクローナル抗体。有効成分のオファツムマブは現在、ノバルティスから製品名「アーゼラ点滴静注液」として、CD20陽性の慢性リンパ性白血病に使用できる。今回は皮下注製剤で、適応は多発性硬化症となる。
■ノボラピッドで初のBS登場へ
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽インスリンアスパルトBS注ソロスターNR「サノフィ」、同BS注カートNR「サノフィ」、同BS注100単位/mL NR「サノフィ」(インスリンアスパルト(遺伝子組換え)[インスリンアスパルト後続1]、サノフィ):「糖尿病」を対象疾患とするバイオ後続品。
先発品は超速効型インスリンアナログ注射液ノボラピッドで、今回、初のバイオ後続品(BS)の登場となる。先発品のノボ ノルディスク ファーマの製品で、BSはサノフィの製品となる。
▽コレクチム軟膏0.25%、同軟膏0.5%(デルゴシチニブ、日本たばこ産業):「アトピー性皮膚炎」を対象疾患とし、同軟膏0.25%は新用量・剤形追加に係る医薬品。同軟膏0.5%は新用量医薬品。
外用JAK阻害薬で、細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすヤヌスキナーゼ(JAK)の働きを阻害し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することで、自己免疫・アレルギー性疾患を改善する。今回、アトピーの小児適応を追加する。小児用製剤の低濃度のコレクチム軟膏0.25%のほか、既承認の同軟膏0.5%も小児に使用できるようにする。日本たばこ産業(JT)によると、2歳以上16歳未満の小児アトピー患者が対象となる見込み。