小野薬品 PARP7阻害薬「RBN-2397」の日本などの開発・商業化権獲得 免疫応答高める抗がん剤
公開日時 2021/02/03 04:50
小野薬品は2月2日、米国Ribon Therapeutics社が創製したPARP7阻害薬「RBN-2397」(開発コード)に関するライセンス契約を締結したと発表した。小野は日本、韓国、台湾、ASEAN諸国での独占的な開発・商業化権を獲得した。RBN-2397は、がん細胞の生存にとって重要な役割を果たす分子であるPARP7(ポリADPリボースポリメラーゼ7)を阻害するファーストインクラスになり得る新薬で、腫瘍増殖を直接抑えることに加え、がん細胞に対する免疫応答を高める新たな抗がん剤になることが期待されている。
PARP7は、がん細胞のゲノム不安定性などのストレス刺激に応答して発現が上昇し、細胞のI型インターフェロン産生を抑制することで、細胞ストレス応答のブレーキとして働いている。PARP7は多くのがんで過剰発現する。
経口投与可能なRBN-2397は、がん細胞中のPARP7を阻害することにより、腫瘍細胞の増殖を直接抑制するとともに、インターフェロンシグナルを回復して自然免疫および獲得免疫応答を活性化することが示されている。Ribon社は現在、進行固形がんを対象に、主にRBN-2397の安全性および忍容性を評価するために、単剤療法での第1相用量漸増臨床試験を実施している。
小野は今回の契約締結に伴い、契約一時金として17億円、開発の進捗及び売上に応じたマイルストンとして最大137億円をRibon社に支払う。また、小野が権利を獲得した地域におけるRBN-2397の売上に応じて、1桁台後半から2桁台前半のロイヤルティも支払う。
小野の相良暁社長は、「細胞のストレス応答経路をねらい、個別化医療を目指した新たな抗がん剤を開発するパイオニア企業のRibon社と協働できることをうれしく思う」とした上で、「RBN-2397は、腫瘍増殖を直接抑えることに加え、がん細胞に対する免疫応答を高めるという2つのメカニズムを有することから、有力ながん治療薬になると期待しており、当社のがん領域での経験とノウハウを活かして、Ribon社と共に RBN-2397 の開発に取り組む」とコメントした。
Ribon社のVictoria Richon社長兼CEOは、「PARP7は、がん細胞の生存の鍵となる分子であることから、RBN-2397はPARP7陽性の腫瘍に対する有力な治療法となると確信している」とコメント。また、小野との提携は、ストレス応答経路を標的としたRBN-2397を多くの患者に届けるとのRibon社のミッションを推進するものだとしている。
Ribon社は米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置くバイオテクノロジー企業で、細胞がストレスを受けた際に活性化する酵素を標的にしたファーストインクラスの薬剤を開発している。