医療用薬8製品 効能追加など承認取得 ガーダシルに男性適応 オルミエントにアトピー適応
公開日時 2020/12/25 18:45
医療用医薬品8製品が12月25日、効能追加などの承認を取得した。この中には、MSDの4価HPVワクチン・ガーダシル水性懸濁筋注に国内初の男性適応を追加することが含まれる。
■「日本のHPVワクチンの接種環境が世界の水準に近づいた」
MSDの白沢博満副社長執行役員(グローバル研究開発本部長)はガーダシルの効能追加承認を受けて、「男性への接種対象拡大と肛門がんの予防適応の追加により、日本のHPVワクチンの接種環境が世界の水準に着実に近づくことができ、大変うれしく思う」とコメント。そして、「今回の承認は日本のHPV関連疾患の予防における重要な一歩として、人々の命と健康を守り、日本の公衆衛生の前進に大きく寄与すると考えている」との考えを示した。
また同社は、「性別に関係なく広くHPVワクチンを接種することで、HPV関連がんを含むHPV関連疾患の減少につながることが期待される」との見方も示した。男性適応も定期接種とするかどうかは今後、厚生科学審議会で審議される。定期接種化についてMSDは本誌取材について、「厚労省の判断と考えている。具体的なコメントは控えたい」と述べた。
■経口JAK阻害薬で初のアトピー適応 リムパーザに膵がん適応
このほか、経口JAK阻害薬オルミエント錠がアトピー性皮膚炎に使えるようになった。経口JAK阻害薬でアトピーの適応を持つのは今回が初めて。アストラゼネカの経口PARP阻害薬リムパーザ錠には膵がんや去勢抵抗性前立腺がんの効能が追加された。中外製薬のがん免疫療法薬テセントリク点滴静注では、非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、PD-L1陽性の場合、単剤による1次治療が可能になった。
承認された製品は以下の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)
▽ガーダシル水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)、MSD):「ヒトパピローマウイルス6、11、16、18型の感染に起因する肛門がん(扁平上皮がん)及びその前駆病変(肛門上皮内腫瘍1、2、3)の予防」を効能・効果とする新効能医薬品。また、用法・用量の「9歳以上の女性に」との部分を「9歳以上の者に」に修正し、男性にも使えるようになった。再審査期間は4年。
4種類のHPV型(6、11、16、18型)のL1タンパク質VLPを有効成分とし、アデュバントとしてアルミニウムヒドロキシホスフェイト硫酸塩を含む4価HPVワクチン。同剤を接種することで、HPV6、11、16、18型L1VLPに対する中和抗体が誘導される。
女性は4種類のHPV型(6、11、16、18型)に起因する▽子宮頸がん及びその前駆病変▽外陰上皮内腫瘍及び膣上皮内腫瘍▽肛門がん及びその前駆病変▽尖圭コンジローマ――の予防に使えるようになった。男性は4種類のHPV型に起因する▽肛門がん及びその前駆病変▽尖圭コンジローマ――の予防に使えるようになった。
男女ともに3回接種で用いる。男性適応も定期接種となるかどうかは、厚労省の厚生科学審議会で議論される。
▽オルミエント錠2mg、同錠4mg(バリシチニブ、日本イーライリリー):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余(2025年7月2日)。最適使用推進GL作成対象医薬品。
選択的JAK1及びJAK2阻害薬。JAK依存性サイトカインは多くの炎症性及び自己免疫疾患の病因と関連していることが示唆されており、JAK阻害の作用により効果を発揮すると考えられている。経口JAK阻害薬でアトピーの適応を持つのは今回が初めて。
厚労省によると、オルミエントは、ステロイド製剤や外用JAK阻害薬コレクチム軟膏で効果不十分な場合の治療選択肢になる。アトピーに対する抗体製剤のデュピクセント皮下注と同様の位置づけになる。
▽リムパーザ錠100mg、同錠150mg(オラパリブ、アストラゼネカ):「BRCA遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵がんにおける白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法後の維持療法」「相同組換え修復欠損を有する卵巣がんにおけるベバシズマブ(遺伝子組換え)を含む初回化学療法後の維持療法」「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
今回追加された膵がん適応は希少疾病用医薬品に指定されており、再審査期間は10年。卵巣がんに対するベバシズマブ併用療法、前立腺がん適応の再審査期間は残余(2026年1月18日まで)。
同剤はファーストインクラスのPARP(ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ)阻害薬。DNA損傷応答(DDR)経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導する。
今回追加された膵がんの対象患者は、白金系抗がん剤を含む一次化学療法後、疾患進行が認められない乳がん感受性遺伝子(BRCA遺伝子)変異陽性の遠隔転移を有する膵がん患者で、この患者に対して現在推奨されている標準的な治療はない。
初回化学療法による奏効が維持されている相同組換え修復欠損を有する卵巣がんに対し、ベバシズマブと併用してリムパーザを使用できるようになったが、卵巣がんの総患者数約2万5000人の約半数が相同組換え修復欠損を有するとされている。
▽ソマチュリン皮下注60mg、同皮下注90mg、同皮下注120mg(ランレオチド酢酸塩、帝人ファーマ):「甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍」を効能・効果とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。
持続性ソマトスタチンアナログ徐放性製剤。未承認薬・適応外薬検討会議に日本間脳下垂体腫瘍学会、日本内分泌学会、日本神経内分泌学会から開発要望書が提出され、医療上の必要性が高いと判断された結果を受けて、厚労省から帝人ファーマに開発要請がなされた。
▽ビムパット錠50mg、同錠100mg、同ドライシロップ10%、同点滴静注100mg、同点滴静注200mg(ラコサミド、ユーシービージャパン):「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は錠剤とドライシロップが4年。点滴静注製剤は残余(2025年1月7日まで)。
機能性アミノ酸の一種。電位依存性ナトリウムチャネルに作用し、緩徐な不活性化を選択的に促進することにより、神経細胞の過剰な興奮を低下させる。てんかん患者の部分発作に加え、今回、強直間代発作の効能が追加された。
▽マブキャンパス点滴静注30mg(アレムツズマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「同種造血幹細胞移植の前治療」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
ヒト化抗CD52モノクローナル抗体。慢性リンパ性白血病細胞やヒト免疫細胞(B細胞、T細胞、NK細胞など)の細胞膜に発現するCD52と結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性を誘導することにより、これらの細胞に対して増殖抑制作用を示すと考えられている。
同種造血幹細胞移植(HSCT)の18年の件数は3642件であることから、追加適応の患者数は約3600人と推定される。
▽テセントリク点滴静注1200mg(アテゾリズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2026年1月18日)。
がん免疫療法に用いる改変型抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体。今回、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、PD-L1陽性の場合、単剤による1次治療が可能になった。PD-L1発現状況の確認は、ロシュ・ダイアグノスティックスの病理検査用キット「ベンタナOptiView PD-L1(SP142)」によって行う。同キットはテセントリクのPD-L1陽性の非小細胞肺がんの適応判定を補助するコンパニオン診断薬として、20 年12 月15日に適応拡大の承認を取得した。
なお、テセントリクは扁平上皮がんを除く切除不能な進行・再発のNSCLCに対し、カルボプラチン、パクリタキセル及びベバシズマブ(遺伝子組換え)と併用して1次治療に使える。
▽リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注150mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫等」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間なし。希少疾病用医薬品。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。
抗CD20モノクローナル抗体。同剤はこれまで、用時生理食塩液または5%ブドウ糖注射液にて10倍に希釈調整して使用しているが、この希釈方法について今回、「10倍」の部分を削除して、「1~4mg/mL」となった。この希釈濃度の変更により、90分間投与が可能になった。