製薬協・森専務理事 日本発の革新的新薬が生まれる機運「さらに発展させる」
公開日時 2020/11/20 04:51
日本製薬工業協会(製薬協)の専務理事に10月1日付けで就任した森和彦氏は11月19日、初めて理事会後の記者会見に臨んだ。世界に先駆けて開発された画期的新薬を迅速に審査して早期の実用化を目指す先駆け審査指定制度が動き出し、オープンイノベーションが推進されていることを引き合いに、「日本でイノベーションが生まれるための取り組みが花開いてきている。日本発の革新的新薬が生まれてくる機運が少しは出てきており、これをさらに発展させたい」と抱負を述べた。
森専務理事は前厚生労働省大臣官房審議官(医薬担当)で、2019年12月31日付で退官した。厚労省では安全対策課長や審査管理課長などを歴任。承認審査や安全対策に造詣が深く、先駆け審査指定制度の創設や、医薬品医療機器等法の改正(改正薬機法)に取り組むなど、日本の創薬力の基盤強化に尽力してきた。また、出向先の先端医療振興財団クラスター推進センター(神戸市)で統括監を務め、退官後には出身の富山県の「くすりのシリコンバレーTOYAMA創造コンソーシアム」で事業責任者を務めるなど、産官学連携にも注力する。
森専務理事は会見で、富山のコンソーシアムでの経験から、「新しいものを生み出し、実用化するプロセスの本当の現場を見させていただいた。イノベーションを草の根から育てていくことが、日本の医薬品産業が世界と戦うために本当に大事なんだと改めて認識した」と述べた。
さらに、神戸市のバイオメディカルクラスターへの出向経験も踏まえて、「(イノベーションは)一極集中で大企業がやるということだけでは、なかなか画期的なものは生まれない」と指摘した。そして、「『オープンイノベーション』との言葉でくくるのは非常に安易だが、実際には血みどろの開発の工夫があり、アカデミアの先生方に実用化を本当の意味でわかってもらうために、膝詰めの談判をしないといけないと実感した」とし、このようなイノベーションが創出される現場を実際に見てきた経験を、「製薬協でも使わせていただく」と話した。
■中間年改定に「これまでのスタンスに変更ない」
製薬業界にとって懸案である毎年薬価改定(薬価中間年改定)については、製薬協の白石順一理事長が会見で、「一言で言えば、慎重に対応すべき、ということ。これまでのスタンスをそのまま持ち続けている」と述べた。中医協で新薬創出等加算の加算累積分の引下げを中間年改定でも行うべきとの意見が出ていること
(記事はこちら)の受け止めに関しては、「まだ各論にまで至っていないので、今までのスタンスと変わっていないということに尽きる」と話した。
製薬業界は、新型コロナ対応による卸と医療機関・薬局との価格交渉の大幅遅延、医療現場の多大な負担――などを考慮すると、21年4月の薬価改定は困難とのスタンス。白石理事長は11月中に開催される見込みの流改懇での実際の現場の状況報告や、中医協での業界意見陳述で理解を求めたいとし、「12月の頭がヤマ場になると思っている」と述べた。