日薬連 正念場の毎年薬価改定「市場縮小はドラッグラグと産業空洞化を招く」 慎重な検討に理解求める
公開日時 2020/11/16 04:51
毎年薬価改定(薬価中間年改定)をめぐる議論が今週から年末の2021年度予算編成に向けて活発化する。日本製薬団体連合会は、これまで社会保障費の抑制が薬価マイナス改定に依存してきたことや、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、「卸と医療機関・薬局との価格交渉は平時とは異なる状況」になっていることを与党議員や政府の会議(官民対話、中医協薬価専門部会や流改懇など)で訴える方針だ。さらに製薬企業も治療薬やワクチンの開発、医薬品の安定供給に取り組んでいることに理解を求め、「これ以上の国内医薬品市場の縮小は、ドラッグラグと医薬品産業の空洞化を招きかねない」との見解を示す考え。その上で薬価中間年改定については「慎重な検討をお願いしたい」と主張し、関係者の理解を求める方針だ。
◎薬剤費関連抑制額は4年間累計で△4204億円 抑制額の約75%
社会保障関係費における薬剤費関連の抑制額は、過去4年間の累計でマイナス4204億円(国費ベース)にのぼる。単年度でみると、薬価改定のあった2016年度の薬剤関連抑制額は△1749億円(政府の抑制額△1700億円)、18年度は△1766億円(同△1400億円)、薬価改定のない17年度は△196億円(△1300億円)、19年度は△493億円となり、4年間の累計抑制額や薬剤関連だけで約75%を占めている。
一方で日本の医療用医薬品市場は、2015年度をピークに毎年10兆円程度で推移しており、特に内資系企業の成長にはグローバル市場でのビジネス拡大に依存せざるを得ないというのが実情だ。とはいえ総売上高に占める海外売上比率が50%以上の企業(2019年度ベース)は、武田薬品、大塚HD、アステラス製薬、エーザイ、大日本住友製薬、塩野義製薬などで、大手クラスでも第一三共や田辺三菱製薬は達していない。準大手クラスも同様で、「(中間年)改定の影響をより大きく受けるのは、国内売上の割合の高い、内資企業」との危機感を募らせている。
◎営業利益率を超える研究開発投資 研究開発税制も欧米アジアに比べて充分と言えない
一方で、研究開発面でも、内資8社(武田薬品、大塚HD、アステラス製薬、第一三共、エーザイ、田辺三菱製薬、大日本住友製薬、塩野義製薬)の営業利益率10.9%に対し、研究開発費率17.4%(いずれも2019年度実績)となっており、「日本企業は営業利益率を超える研究開発投資で革新的医薬品の創出に取り組んでいる」と指摘する。加えて、「研究開発税制の水準は国際的にみても必ずしも十分とは言えない中で、世界有数の創薬国となっている」とも主張している。
◎コロナ影響 「卸と医療機関、薬局との価格交渉が平時とは異なる」と指摘
こうした中で、現行の薬価基準制度については「国民皆保険において医薬品価格をコントロールする仕組みとしてやむを得ないものと考える」としながらも、「診療報酬体系との整合性や改定に要するコストからみて、2年に1回が基本であり、中間年の薬価改定は通常改定とは異なる位置づけと考える」としている。
さらに新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う医療機関経営の悪化や、卸と医療機関、薬局との価格交渉が平時とは異なる状況となっていることを指摘。「医療現場の多大な負担、医薬品業界の医薬品の安定供給への努力を踏まえると、2021年度の薬価改定については新型コロナウイルス感染症による影響も勘案して、慎重に検討するべき」と訴え、関係者の理解を求める考えだ。