新型コロナ専門家会議 爆発的な感染拡大リスクも 地域の実情に合致した対策を
公開日時 2020/03/23 04:50
政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は3月19日、国内でも爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながるリスクを示し、引き続き徹底した対策を求めた。国内の状況について、「引き続き、持ちこたえている」としたうえで、「クラスター(患者集団)の感染源(リンク)が追えない事例が散発的に発生している」と指摘した。感染を最小限に食い止めるためには、地域の実状に応じた対策の必要性を強調。感染拡大傾向の地域では、独自メッセージやアラートの発出、一律自粛の必要性などの検討を求めた。一方で、感染が確認されていない地域では、学校や屋外スポーツ観戦、文化・芸術施設の利用などを容認した。
◎感染源の分からない患者増に危機感
専門家会議は、国内での感染状況について、「引き続き、持ちこたえているが、一部の地域で感染拡大がみられる」と指摘。「地域において、感染源(リンク)が分からない患者数が継続的に増加し、こうした地域が全国に拡大すれば、どこかの地域を発端として、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねない」と警鐘を鳴らした。特に、人が密集し、人の出入りの多い大都市圏で大規模流行が起きるリスクを指摘した。
◎対策取らなければ重症者は「地域の人工呼吸器数を超える」と推計
対策を講じなかった場合の感染者数の推計も提示し、日本の10万人都市で、1人の感染者が2.5人(ドイツ並み)に感染させると仮定した場合、流行50日目には、1日あたり5414人の新規患者が発生し、最終的に人口の79.9%が感染すると仮定した。また、呼吸管理・全身管理を要する重篤患者数は、流行 62 日目に 1096 人となり、地域の人工呼吸器数を超えるとして、全国民をあげた対策の必要性を強調した。
そのうえで感染拡大を最小限に抑えるためには、①クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応、②患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保、③市民の行動変容―を柱とする方針を継続することが必要との見解を示した。なかでも、「換気が悪い」、「人が密に集まって過ごしている」、「不特定多数の人が接触するおそれが高い」―の3条件が重なった場を避ける必要性を改めて強調した。大規模イベントについては、「引き続き、主催者がリスクを判断して慎重な対応が求められる」として、中止や延期の検討も求めた。
地域の対策については、感染状況により「拡大傾向」、「収束に向かい始めている、一定程度に収まってきている」、「確認されていない」にわけ、対応を明記した。収束に向かい始めている地域などでは、3条件の重なる場を「徹底的に回避する」対策を講じたうえで、「感染拡大のリスクの低い活動から、徐々に解除することを検討する」としている。
地域の感染状況の見極めについては、1人の感染者が引き起こした二次感染者の平均値を示す実効再生産数や新規感染者の増減の傾向、感染経路が追えない感染者数を総合的に判断していくことが重要だと説明した。
なお、急激な感染拡大が指摘された北海道は、知事により緊急事態宣言が発令され、週末の外出自粛要請などがなされた。専門家会議では、地域住民の行動変容などにより、「急速な感染拡大の防止という観点からみて一定の効果があった」と評価した。
◎一般医療機関の支援が不可欠 重症者対策で医療提供体制構築
医療提供体制については、重症者対策の重要性が増すなかで、「重症患者に対する診療には、特別な知識や環境、医療機器を要するため、診療できる人員と資源を継続的に確保することが重要な課題」と指摘した。軽症者は在宅療養、重症者は高次医療機関、そのほかは診療所や一般医療機関で診療するなど、地域の実情を踏まえた役割分担をあらかじめ決めることを求めた。
また、感染者と接触するリスクを減らすため、一般患者の外来受診間隔を開けるほか、FAX処方の利用、待機的入院・手術の延期などを検討する必要性も指摘している。
◎「短期的収束は考えにくく、長期戦を覚悟」
尾身茂副座長(地域医療機能推進機構(JCHO)理事長)は、「気が付かないうちに感染が広がり、ある日突然、患者が爆発的に広がるオーバーシュートが起こり、医療が提供できなくなる。そうした事態を回避するための提言をまとめた」と説明した。そのうえで、国内外の状況を踏まえ、「短期的収束は考えにくく、長期戦を覚悟する必要がある」と指摘した。