薬価改定・後発大手影響率は2桁に 薬価集約新ルールの影響で明暗も
公開日時 2020/03/09 04:52
ミクス編集部は、4月実施の薬価基準の全面改定が3月5日に官報告示されたことを受け、製薬各社に対する製薬各社にアンケートを行った。18年4月の薬価をベースとした後発品専業大手3社の改定影響率は全て二桁となった。一方で、婦人科領域などに強みを持ち、新薬とのプロダクトミックスを図る富士製薬は5.5%で、製品構成などの影響を受けていると言えそうだ。2020年度改定では薬価の集約方法が見直されたが、薬価への影響は「あった」との回答を2社から得た。新ルールの導入で、企業によって明暗が分かれる可能性が示唆された。後発品80%目標達成時期が9月に迫るなかで、薬価差によるシェアを獲得するモデルからの脱却が強力に推し進められることになりそうだ。
文末の「関連ファイル」に企業別の改定影響率と安定供給についての資料を掲載しました。3月9、10日のみ無料公開、その後はプレミア会委員限定コンテンツになります。
後発品大手3社の改定影響率は、18年4月の薬価ベースで、沢井製薬13.0%、東和薬品13.0%、日医工10.7%となった。後発品のシェアが高い日本ケミファは約16%、あすか製薬は約9%だった。
2020年度薬価制度抜本改革では、改定前薬価より改定薬価が引き上がることを抑制するため、改定前薬価の市場実勢価格を一度加重平均をして、改定前薬価を上回る品目は別途加重平均を行い改定薬価が改定前薬価を上回らない新ルールが盛り込まれた。また12年経過した品目については、改定前薬価の市場実勢価格を全て一度加重平均をして、改定前薬価を上回る品目と、改定前薬価を下回る品目を、更に別々に加重平均を行い、改定薬価を決める新ルールが導入された。この制度では他社の市場実勢価格に影響されて薬価が決まることになる。
これまでの薬価制度では、加重平均する過程で、市場実勢価格の安いものの薬価が引き上げられることとなってしまい、薬価差ビジネスを産んでいるとの指摘もあった。日本ジェネリック製薬協会は業界陳述の場などを通じてこの状況に問題意識を露わにしていた。同一成分の薬価を一括りに引き下げてしまえば、価格乖離の大きな品目の薬価を国民へ適切に還元できない。一方で、製品品質や製造工夫などの努力を重ね、市場から評価された企業にむしろ打撃を与えるとの考えだ。実際、2016年度薬価改定には80品目、18年度には124品目が改定前薬価より高い薬価となっていた。
新ルール導入による影響について、回答数は3社と限定的ながらも、2社からはこの新ルールの影響が「あった」との回答をニプロ、富士製薬から得た。
◎不採算品目3割超との回答も 安定供給に向け最適な流通チャネル提供も
後発品80%目標が迫るなか、安定供給の重要性が増している。2019年には、日医工の抗菌薬・セファゾリンの供給不安定などの問題も表面化した。不採算品目の割合について聞いたところ、ニプロが34.4%と回答するなど、原薬の高騰などが続くことが響くジェネリックメーカーの現状が垣間見える結果となった。
安定供給に向けての対策も聞いた。東和薬品は原薬の複数リソースの確保などだけでなく、生産や物流、営業まで体制を整備していると回答。営業では、「最適な流通チャネルの提供(代理店、医薬品卸との関係強化、営業所の効率化と拡充)」を行っているとした。ニプロは、「需要予測に基づく原薬等の確保、製造管理・品質管理の徹底による安定供給マニュアルに基づき対応する」と回答。また、新工場の竣工などへの取り組みなどがあがった。
◎新型コロナウイルスの原薬確保への提供 現時点では大きな影響見られず
このほか、原薬の輸入国として知られる中国で新型コロナウイルスが拡大していることの影響も聞いた。「在庫を有していることもあり大きな影響は出ていないが、長引くと影響がでることが否定できない」(沢井製薬)、「中国からの原薬輸入はあるが、比率も低く、該当品目についても複数購買と在庫の積み上げから現時点で安定供給に影響はない。ただ、今後の状況によっては影響も出てくるため、注視しなければならない状況」(東和薬品)などの回答があがった。ニプロは、「国内での需給増に伴い一部消毒剤の出荷制限を行っている」としている。