中医協・20年度改定を答申 医師の働き方改革、病院機能の強化・連携を推し進める
公開日時 2020/02/07 13:40
中医協(田辺国昭会長)は2月7日、加藤勝信厚労相に、2020年度診療報酬改定について答申した。少子高齢化が進展するなかで、“医師の働き方改革”と、病院機能の強化・連携を推し進める改定となった。改定の象徴的な点数として、年間2000件以上の救急搬送を行う医療機関に対して、「地域医療体制確保加算」を新設。520点(入院初日に限る)という手厚い点数を配分した。一方で、旧7対1に当たる急性期一般入院料1の基準値について、「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」を現行の30%から31%に引き上げた。400床以上の医療機関は地域包括ケア病棟入院料を届出られず、紹介状のない患者の定額負担を200床以上の地域医療支援病院まで拡大する。大病院は急性期に特化し、医療機関の機能分化・連携を強く打ち出す内容となった。
昨年末の予算編成過程では、財務省との激しい綱引きを経て、「医師の働き方改革への特例的な対応」として0.08%上乗せし、本体改定率は0.55%を確保した。2024年度にも労働時間規制が始まるなかで、長時間労働が常態化する大規模救急病院に手厚い報酬を敷くとともに、「病院勤務医の負担軽減及び処遇の改善に関する計画」の作成、定期的な評価及び見直しを算定要件とすることで、医療機関側の体制構築を急ピッチで進めたい考えだ。
「地域医療体制確保加算」は、救急医療にかかわる実績として、救急用の自動車・救急医療用ヘリコプターによる搬送受け入れ件数が年間で2000件以上であることに加え、▽病院勤務医の勤務状況の把握と、その改善の必要性等について提言するための責任者の配置、▽多職種からなる役割分担推進のための委員会又は会議の設置、▽「病院勤務医の負担軽減及び処遇の改善に関する計画」の作成、定期的な評価及び見直し―を要件とする。
昨年12月17日に行われた加藤厚労相と麻生財務相の大臣折衝では、診療報酬とあわせて、勤務医の働き方改革として、地域医療介護総合確保基金で公費143億円程度を確保した(関連記事)。この日の中医協で厚労省側は、診療報酬の対象とならない医療機関(B水準相当)を対象として、地域医療に特別な役割があり、かつ過酷な勤務環境となっている医療機関について医師の労働時間短縮のための体制整備に関する支援を行うことで、切り分けを行っていると説明した。
基金で手当てする医療機関像としては、救急車受け入れ件数が1000~2000件で、地域医療に特別な役割がある医療機関や、離島へき地などで救急車受け入れ件数1000件未満、周産期や小児救急、精神科救急など地域医療の確保に必要な医療機関などを想定する。診療報酬上では、救急搬送看護体制加算について、救急搬送件数が年間1000件以上で、専任看護師を複数名配置している医療機関が算定できる、「救急搬送看護体制加算1」(400点)で手厚い評価を行う。
一方で、重症度・医療看護必要度については、指標を見直すとともに、現行の30%から31%に引上げた。
指標の見直しもあり、実質的には4%程度の引上げとみられ、急性期の患者像をより明確にした。許可病床数が400床以上の医療機関では地域包括ケア病棟の新たな届け出はできないことも盛り込み、救急に特化する大病院の姿を明確に打ち出した。急性期病床が過剰であることも指摘されるなかで、急性期の病院像を明確にした。重症度・医療看護必要度の引上げで、中小病院にとってはハードルが引きあがることも想定され、地域医療構想と一体となって転換が促されることとなりそうだ。
◎病棟薬剤業務実施加算1を20点引上げ
医師の働き方改革の観点から、タスクシェアリング・タスクシフトも進められてきた。診療報酬上では薬剤師の病棟業務に対する評価を拡充する。病棟薬剤業務実施加算1(週1回)を現行の100点から120点に、病棟調剤業務実施加算2(1日につき)は80点から100点に引き上げる。なお、厚生労働省は11月8日、「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」で、薬剤師のかかわる「事前に作成・合意されたプロトコールに基づく、含量規格や剤形等の処方内容の変更」や、「抗菌薬の治療コントロール処方の提案」などは、現行制度で実施可能としている。このほか、医師事務作業補助に対する評価拡充や医師らの専従要件緩和なども盛り込んだ。
◎業務効率化でICT活用を評価 カンファレンスや共同指導
業務効率化の一環として、ICTの活用の推進も全面に打ち出した。カンファレンスや共同指導について、日常的に活用しやすいよう、実施要件を見直す。感染防止対策加算や入退院支援加算1、退院時共同指導料2、在宅患者救急時等カンファレンス料、在宅患者訪問褥瘡管理指導料、退院時共同指導料などの算定要件であるカンファレンスは現行では、原則対面とし、ICTの活用はやむを得ない場合に限定されてきた。改定後は日常的にICTの活用が可能になる。特に多職種が一堂に集うことの難しさも指摘されるなかで、今回の見直しは福音と言えそうだ。外来栄養食事指導料も、「対面」に加え、ICT活用次の点数を新設する。
◎がん治療の質向上で医療機関と薬局の連携 「連携充実加算」150点を新設
病院機能発揮を後押しする一方で、医療機関同士や薬局などとの連携も後押しする。がん治療では、外来化学療法が増加するなかで、医療機関と薬局の連携を強化し、医療の質向上を図る。医療機関側の評価として新設する「連携充実加算」(150点、月1回)では保険薬局薬剤師を対象とした研修会の実施などを要件化。一方、薬局側に新設される「特定薬剤管理指導加算2」(100点、月1回)では、レジメンを把握したうえで必要な指導を実施し、患者の状況を確認し医療機関にフィードバックすることを求めた。このほか、かかりつけ医と医療機関との連携を強化する目的で、「診療情報提供料Ⅲ」(150点)も新設した。
◎オンライン服薬指導解禁で「薬剤服用歴管理指導料4」新設 43点に
このほか、オンライン診療は、慢性頭痛患者と、在宅自己注射を行う一部の患者に拡大する。改正薬機法の施行で解禁された「オンライン服薬指導」の評価として、「薬剤服用歴管理指導料4」として43点(月1回まで)、在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料として57点(月1回まで)を新設した。