日本医師会、日本薬剤師会、日本保険薬局協会（NPhA）の各会長は、2020年の年頭所感を発表した。このなかで日本医師会の横倉義武会長は、予防や再発重症化予防において「重要な役割を果たしていかなければいけない」として、かかりつけ医の更なる普及・定着に力を入れる考えを示した。日本薬剤師会の山本信夫会長は、19年12月に公布された改正医薬品医療機器等法を「新たな時代の要請に適格に応えていくための視点を転換する機会」だとして、かかりつけ薬剤師・薬局の推進に引き続き尽力するとした。NPhAの南野利久会長は、「地域社会において必要とされる薬剤師を育成し、薬剤師が活躍できる環境を整備すべく努力を重ねていく」とした。

◎日医　横倉会長　「納得できる給付と負担のあり方の国民的合意を」

横倉会長は、2019年を自然災害が相次いだ年だと振り返ったうえで、今後の災害対策について、地域包括ケア、医療・介護連携を中心としたまちづくりと地域社会のつながりを礎とした多職種連携の必要性を指摘した。そのうえで今後、「医師会組織の緊密な連携に向けた施策を強化しながら、これらの取り組みの推進に全力を尽くす」とした。

今後到来する超高齢社会を見据えては、「社会全体が模索を続けるなかで、医療も適切な変容を遂げていかないといけない」と強調。政府が全世代型社会保障改革を進めるなかで、「現在の医療を分かりやすく国民に示し、納得の得られる給付と負担に関する国民的合意への導いていく必要がある」とした。

そのうえで、「医師は従来、診断・治療に重点を置いてきたが、今後は予防・教育や再発重症化予防、見守り、看取りにおいても重要な役割を果たしていかなければならない」と指摘。地域医療に従事するかかりつけ医は、「ICTやAI、再生医療、ゲノム医療など、医学における技術革新にも対応していかなければいけない」として、かかりつけ医機能研修制度の充実などに引き続き取り組む考えを示した。

◎日薬　山本会長　「社会からの信頼に応える医療人として日々研鑽を」

山本会長は、全世代型社会保障制度の構築と国民皆保険・皆年金の維持・継承を目指した改革の取り組みが進むなか、薬剤師と薬局に求められる役割は、「住民・患者から信頼されて選ばれるかかりつけとしての機能と役割を充実・強化し、地域包括ケアシステムの一翼を担い、チーム医療の一員として貢献していくこと」と強調した。

そのうえで、「医薬分業の進展に伴う調剤医療費や薬剤師・薬局が果たす役割に対し、以前として厳しい指摘があることも事実」と指摘。「薬剤師が専門職としての矜持をもって、社会からの信頼に応えうる医療人となるべく日々研鑽し、知識と技術を持って、国民や患者に寄り添った業務を展開していくことが重要」だと訴えた。

また薬機法の改正については、「薬剤師・薬局が令和の新たな時代の要請に適格に応えていくための視点を転換する機会」と受け止めた。そのうえで、「患者・住民が使用する医薬品の一元的・継続的な薬学管理指導と薬と健康等に関する多様な相談に対応し、必要な医薬品等を過不足なく供給するとともに、セルフメディケーションを支援するかかりつけ薬剤師・薬局の推進に引き続き力を尽くしていく」とした。

◎NPｈA　南野会長「地域社会に必要とされる薬剤師育成を」

南野会長は、2019年について、調剤業務のあり方に関する通知の発出や薬機法の改正など、「業界にとってインパクトのある出来事が多くあった年だった」と振り返った。特に薬機法の改正については、「患者のための薬局ビジョンに示された薬局像がさらに具体的になり、目指す方向性が示されたと理解している」としたうえで、「対物業務中心から対人業務中心へのシフトを後押しするものだ」と強調した。

こうしたなかで、協会の役割は、「薬局を取り巻く環境が大きく変化するなか、「教育研修において会員企業のサポートをしていくことにある」と指摘。2016年から取り組む健康サポート薬局の普及・推進に向けた活動を今後も継続していくことや、認知症研修認定薬剤師の養成事業の強化に力を入れる考えを示し、「常に患者に寄り添い、患者に支持される薬剤師を目指した研修を重ねていきたい」とした。

そのうえで、「医療が日々高度化するなかで、薬剤師の新たな役割に対して期待が寄せられていることに疑いはない」と強調。「地域社会において必要とされる薬剤師を育成し、薬剤師が活躍できる環境を整備すべく努力を重ねていく」と訴えた。