中医協総会 妊婦加算を廃止 産婦人科以外からの「妊娠管理に必要な情報提供」で評価新設へ
公開日時 2019/12/23 04:50
中医協総会は12月20日、従来の妊婦加算を廃止し、これに代わる新たな仕組みの導入に向けた議論を開始した。妊婦加算をめぐっては、コンタクトレンズなど、妊娠と関係ない診療でも自己負担増となるとのSNSなどでの批判が表面化。政府の少子化対策とも逆行するとして与党・自民党を巻き込んで課題が拡大し、2019年1月から凍結が続いていた。同省は、産婦人科以外の医療機関から産婦人科の主治医への「妊娠管理に必要な情報提供」を行った場合の評価を、20年度診療報酬改定に新設する方針。妊産婦の診療に積極的な医療機関を増やすことで、安心して出産できる環境整備を進めたい考えだ。
妊婦加算は、2018年度診療報酬改定で新設された点数。妊婦が医療機関を受診した際に、コンタクトレンズへの処方での点数の上乗せや、説明がなく行われていることなどが明るみとなり、これは“妊婦税だ”と揶揄する声がSNSを通じて拡散される事態に発展した。昨年12月には、自民党厚生労働部会の小泉進次郎部会長が「妊婦さんに自己負担を発生させることは容認できないというのが部会の総意だ」と述べるなど、国会を巻き込んだ国民的な議論に発展していた。これを受け、中医協では18年12月19日に、妊婦加算の凍結を即日答申し、19年1月から凍結が続いていた。
一方で、初産年齢が高齢化するなかで、基礎疾患や精神疾患などを合併する、ハイリスク妊婦が増加し、周産期の外来医療を充実する必要性が高まっている。診療リスクの高さから、妊産婦の診療を拒む医療機関も少なくなく、婦人科・産科を標榜していても実際に分娩を取り扱う医療機関は減少傾向にある。妊産婦の診療に積極的な医療機関を増やし、すそ野を広げることは喫緊の課題と言える。
◎妊娠糖尿病などの情報提供視野 医師への研修など診療報酬以外で総合的対応も
特に基礎疾患や合併疾患を有する妊産婦の対応が重要になるなかで、産婦人科以外の医療機関と産婦人科医との連携が重要になる。同省はこの日、産婦人科以外の医療機関から、産婦人科医への情報提供についての評価を20年度診療報酬で新設することを提案した。例えば、妊娠糖尿病に対応する糖尿病専門医療機関が、紹介元である産科に対し、指導内容や今後の治療方針などを情報提供した際の評価は診療報酬上にはない。産婦人科医以外の医師から産婦人科の主治医に対して、妊娠管理に必要な情報提供を行った場合の評価を新設することで、連携を促したい考えだ。
あわせて診療報酬以外の対応として、産科・産婦人科以外の医師への研修を実施するほか、医師が妊娠診療の情報を得られる相談窓口を設置。産婦人科医以外の医師の知識やスキルを高める。また、妊産婦に対しては、都道府県の医療機能情報提供制度を活用し、妊産婦の診療に積極的な医療機関を周知する考えで、診療報酬だけでない総合的な対応を進める。
◎支払側・幸野委員 「患者への文書での説明と同意」の要件化を求める
支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「妊婦加算は今後新たな枠組みということで考えていただきたい。妊娠してからの話ではなくて、病気を持っている立場としては妊娠をするかどうかの選択も含めて不安はある」と述べた。
支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も、「研修会の実施や相談窓口の実施、産婦人科医の主治医とそれ以外の連携、環境整備を優先することが優先課題。診療報酬上の課題は、一定程度確立された場合は、再度ゼロベースで議論することとしてはどうか」と述べた。今回の厚労省提案にも理解を示したうえで、「患者にとっては追加負担になるので、患者への文書による説明と、同意を算定要件に加えていただきたい」と要望した。
支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、診療報酬上の評価を認めたうえで、「現行の妊産婦加算の評価は廃止し、診療体制の枠組みを構築していくのが自然な流れ。国民にとってもそのほうがわかりやすいのでは」と廃止を厚労省側に迫った。
診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「妊産婦に対する診療の質の向上のため、診療報酬以外での対応を含めたトータルでの再編」と見直しに賛意を示した。