製薬協・伍藤理事長 全世代型社会保障議論で「製薬業界は社会に貢献」 中長期視点での政策立案を
公開日時 2019/11/22 04:52
日本製薬工業協会(製薬協)の伍藤忠春理事長は11月21日、全世代型社会保障の議論について考えを示した。製薬業界は社会保障財源の使途ではなく、経済の好循環につながるとして、「社会保障に貢献できる」との認識を強調した。同日開かれた理事会では、18日の「革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品創出のための官民対話」での議論を報告しており、理事会後の会見で改めて製薬協の考えを示した。年末の予算編成に絡み、薬価制度改革の議論も進む。伍藤理事長は単年度の予算ベースでの薬剤費削減を牽制。中長期的な視点からの政策立案を求めた。
官民対話で製薬協は、「革新的新薬創出で全世代型社会保障に貢献」とのスタンスを強調した。製薬協は1月に公表した「製薬協 政策提言2019」でも、労働生産性の向上、介護者の負担軽減などの社会課題に貢献する姿勢を示しており、一貫してこうしたメッセージを発信している。伍藤理事長は、「新薬創出やイノベーションの評価が、健康寿命の延伸につながる。働き手の増加につながり、社会全体の活力につながる。マクロ、長期の視点から我々の業界の存在をアピールする場だと思っている」と述べ、製薬業界として全世代型社会保障実現に貢献する姿勢を鮮明にした。
一方で、高齢化に伴う医療費の伸びが社会課題となるなかで、製薬業界も薬価制度抜本改革を通じて厳しい状況に置かれていることを強調。「お互いの立場を尊重するという意識を持ち、最低限どういう問題意識を共有できるか」と述べ、政府との間で問題意識を共有したい意向を示した。
◎産産連携で研究開発費削減を
15日に開かれた健康・医療戦略参与会合についてもこの日の理事会では議題にあがった。「健康・医療戦略(第2期)」の素案では、総合的なヘルスケア産業創出に向けた、イノベーション・エコシステムの構築などが提言されている。製薬協は、「テクノロジー新時代のイノベーション創出に向けた環境整備」の重要性を訴えているところ。①予防・先制医療ソリューションの早期実用化、②健康医療ビッグデータ、AIの開発・活用、③ヘルスケアイノベーション創出エコシステムの構築―を課題にあげる。加藤厚労相も官民対話の冒頭で、ヘルスケアイノベーションの重要性に言及しており、産官学が一体となった取り組みの重要性が増している。
伍藤理事長は、産官学連携を推進することの重要性に言及したうえで、「産官学のなかでも産産連携、産業間の効率化、連携を進めていくというのが最近のトレンド」と説明した。実際、製薬協はビジョンの実現に際しての具体的な提案として、がんゲノム情報を統合したデータベース構築や、創薬研究を効率化するAI(人工知能)の共同利用などを提案。長期・大型事業を行えるよう、AMEDでの基金創設などを求めている。
伍藤理事長は、「産官学の従来の枠組みを広く、深くし、非競争領域については協力し、あらゆる面から研究開発のコストセービングする意識を持っていくことが必要だ」と述べた。そのうえで、「単年度の予算や補助金で成果を出すのではなく、中長期的に産業を支援する必要がある」と述べ、改めて中長期的な視点からの産業振興を訴えた。