NPhA チェーン薬局を狙い撃ちした調剤報酬改定を牽制 実調の結果以上に経営厳しい
公開日時 2019/11/15 03:52
日本保険薬局協会(NPhA)は11月14日の定例会見で、厚労省が中医協に報告した医療経済実態調査について、「数字以上に経営が厳しい」として、2020年度の調剤報酬改定での対応を求めた。20店舗以上のチェーン薬局では18年度の損益差額は7.6%で、16年度の12.1%から利益が圧縮した。18年度改定で断行されたチェーン減算ともいえる調剤基本料の引下げなどが影響した。首藤正一副会長(アインホールディングス)は、「経営が厳しくなってきている。利益が出過ぎたということはない」とチェーン薬局をターゲットとした調剤報酬改定を牽制した。そのうえで、後発品使用促進や、かかりつけ薬剤師や在宅医療の推進などで収益の落ち込みをカバーしたと説明。大手を中心に「“モノからヒトへ”(対物業務から対人業務へ)とシフトしている」として、「企業努力」への理解を求めた。
NPhAはこの日の会見で、医療経済実態調査の法人経営分について独自の分析結果を示した。利益率は全体的に下がっており、特に20店舗以上の法人では18年度では1店舗当たり、1901万3000円(7.6%)の黒字で、16年度の2666万1000円(12.1%)と利益が圧縮。「6~19店舗」との格差は縮まった。
特に薬局経営に打撃を与えたのが、18年度改定でチェーン薬局を対象とした減算が導入された調剤基本料だ。調剤基本料別にみると、「調剤基本料2」では4.2%(17年度と比べ、▲2.9ポイント)、「調剤基本料3-ロ(同一グループの保険薬局による処方箋受付回数40万回を超える場合)」では3.1%(▲4.0ポイント)と、利益が圧縮された。
一方で、後発品調剤割合が70~100%(平均81.6%)の保険薬局では利益率が5.9%と高く、後発品調剤体制加算の取得が収益にも貢献していると説明した。そのうえで、厚生局の届出状況(2019年5月時点)から、後発品使用体制加算2・3を届け出る保険薬局は「100店舗以上」では55.5%、「20~99店舗」では50.7%で、個店の39.1%を上回った。同様に、かかりつけ薬剤師の届出も「100店舗以上」では58.9%、「20~99店舗」では63.6%(個店は42.6%)、在宅調剤加算を届出る薬局(年間10件以上)は「100店舗以上」で42.0%、「20~99店舗」で42.2%(個店は14.3%)で、規模の大きいほど取り組みが積極的で、一定の規模が必要との考えを示した。
◎「労力増すも利益減」-窮状訴え
医療経済実態調査は11月13日の中医協に厚労省が報告した。次期診療報酬・調剤報酬改定はこの結果を踏まえ、まずは改定率をめぐる議論が本格化する。調剤報酬をめぐっては、2016年度、18年度とチェーン薬局をターゲットとした報酬の引下げが行われた。特に18年度改定では、医療経済実態調査で20店舗以上の薬局の経営状況が二桁の黒字であることなどから、外枠で「大型門前薬局の適正化」として国費ベースで60憶円程度引き下げられた経緯がある。
杉本年光常任理事(わかば)は、上場企業の決算を引き合いに、「こんなに状況がよいところがあるのか」と首を捻った。薬価改定の影響もあり、数字以上に経営が厳しさを増しているとして、「ジェネリックやかかりつけを一生懸命やっただけの利益が出ている。やらなかったら大変なことになっている。なんとか努力している」と強調した。「相対的に皆落ちている。勝っているところはない。皆厳しい状況に直面している」と語った。
二塚安子副会長(フタツカホールディングス)は、「あるべき姿に向けて一生懸命やったのに、(国は)応えてくれなかった。労力が年々増えているのに、前より利益が下がっている」と嘆いた。
◎地域支援体制加算―実態にそぐわないところは直すべき
調剤基本料別で、調剤基本料2、調剤基本料3-ロで大きな落ち込みがあった理由については、調剤基本料そのものの減算に加え、2018年度改定で新設された「地域支援体制加算」の影響が大きいと分析した。地域支援体制加算は、かかりつけ薬剤師指導料や夜間・休日対応など8項目から成る実績要件を求めており、取得のハードルが高いことも指摘されるところ。中医協の議論では、診療・支払各側が要件緩和に慎重な姿勢を示すなかで、首藤副会長は、「緩和を求めているのではなく、地域支援体制加算のなかで実態にそぐわないところは直していくべきだということ」とNPhAの主張を説明した。NPhAが見直しを求めているのは、夜間・休日等の対応実績要件と麻薬管理指導加算の実績要件だ。特に麻薬要件については、麻薬処方箋自体を応需したことのない薬局が多いと説明し、理解を求めた。
◎薬局・医療機関のプロトコル策定での業務簡素化「療担規則に抵触しない」
首藤副会長はこのほか、中医協では医療機関と薬局との事前の取り決めで、疑義紹介など薬局側から医療機関への問い合わせの簡素化が議論の俎上にあがったことにも触れた。10月25日の中医協では、京都大学医学部附属病院の例を引き合いに、成分名が同一の銘柄変更や剤形変更、取決め範囲内での日数短縮などをプロトコルとして事前に定めることで、簡素化されるなど効果があがっていることが紹介されていた。
診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)はメリットに理解を示したものの、事前に薬局との取り決めが必要であることに懸念を表明。「特定の薬局への誘導を禁止している療養担当規則に抵触することを懸念する。現段階では賛成できない」と発言。資本力のある大手調剤チェーンで一気に広がる可能性も指摘し、釘を刺していた。
こうした状況について首藤副会長は、「薬局が主体となって行うのではなく、医療機関が主体となって発信することであるため、療担規則に触れないと理解している」と主張。「医療従事者の負担軽減、患者さんの待ち時間軽減にもなり、相互にメリットがある。進んだ議論をしていただきたい」と訴えた。