国がん 遺伝子パネル検査後の適応外使用で患者申し出療養スタート 10月中にも
公開日時 2019/09/25 03:53
国立がん研究センター中央病院は9月24日、がん遺伝子パネル検査後の治療選択肢として、患者申出療養制度を活用し、既承認薬を適応外使用する臨床研究を開始すると発表した。厚労省の告示発出を踏まえ、10月中にも、国がんが調整事務局となり、がんゲノム医療中核拠点病院11施設で行う予定。治験などの選択肢がない患者であることなど要件を満たす必要がある上、対象医薬品も限られるが、適応外使用への道筋を作ることで、これまで治療法のなかった患者に新たな選択肢を与える可能性がある。
試験は、がん遺伝子パネル検査結果をもとに、遺伝子異常に対応する適応外薬を投与し、治療経過についてのデータを収集することが目的。投与は、医師、薬剤師など専門家で構成されるエキスパートパネルで推奨された場合に限られる。実施が可能となった場合は、適応外薬の費用と研究費約40万円は患者負担となるが、その他の検査や治療などは保険診療として併用できる。
対象は、遺伝子パネル検査で治療候補となり得る遺伝子異常が見つかったものの、既承認薬による治療や未承認薬による治験などの選択肢がない患者。保険診療や治験、先進医療の候補となる場合は対象とならず、対象患者には遺伝子パネルの結果を踏まえて医師から伝達される。
開始時点で投与できる医薬品は、いずれもノバルティスファーマのジカディアカプセル、グリベック錠、アフィニトール錠、同分散錠、タフィンラーカプセル、メキニスト錠、ヴォトリエント錠、タシグナカプセル、ジャカビ錠の9製品。ノバルティス社は、患者負担はなく、無償提供するとしている。国がんでは20社を対象に3月に全体説明会を開き、その後企業ごとに個別交渉を続けており、現時点で60弱種類の分子標的治療薬の組み入れを想定しているという。
薬剤を無償で提供してもらう代わりに、国がんは協力企業に対して治療データを提供する。このため患者は、遺伝子パネル検査の情報を含む患者の情報をがんゲノム情報管理センター(C-CAT)への登録や、研究で得られたデータをC-CATに登録することに同意し、情報を同研究や医薬品を提供した製薬企業に提供することに同意していることも必要となる。
同日の会見で西田俊朗院長は、将来的な薬事承認に向けた道筋を見据え、「患者に薬を届けるとともに、臓器が別であっても効果がある薬のデータを整理して、治験や先進医療につなげたい」と述べた。研究は、患者申出療養制度のもと臨床研究として計画され、9月12日に開催された厚労省の患者申出療養評価会議で承認されていた。