日医・横倉会長 後期高齢者負担・OTC類似薬給付見直し「皆保険の理念変更する改革案」と懸念表明
公開日時 2019/09/19 03:51
日本医師会の横倉義武会長は9月18日の定例記者会見で、政府が近く「全世代型社会保障検討会議」での議論に着手することに先立ち、日医の見解を表明した。横倉会長は想定される改革メニューの中に、後期高齢者の窓口負担見直しや、OTC類似薬の保険給付除外・償還率の変更などがあるとし、「従来の国民皆保険制度の理念を変更する改革案が示されている」と懸念を表明した。また政府部内の議論が改革工程表や骨太方針に反映され、最終的に法制化への流れとなることから、「これから来年にかけて重要な時期となる」と指摘。「日医として国民が必要な医療・介護を過不足なく受け取れるよう、しっかり主張したい」と強調した。
横倉会長は9月11日に発足した第4次安倍第2次改造内閣に触れ、自民党総務会長から起用された加藤勝信厚労相について、「安定した社会保障改革を実行されるよう期待する」と強調した。また、小児科医でもある自見はなこ氏の政務官就任については、「働き方改革は重要な課題。小児科医の経験生かして、医師の視点もふまえて政策に関わって欲しい」とエールを送った。
◎被用者保険の全保険料率10%で約1兆円の増収効果
政府の「全世代型社会保障検討会議」に対しては、「財源は消費税の一本足打法ではなく、新たな財源についてあわせて議論する必要があるのではないか」と指摘した。この日の会見で横倉会長は、各被用者保険の保険料率を10%(協会けんぽ水準)に引き上げた場合、約1兆円の増収効果があるとした試算を提示。さらに国家公務員共済組合の保険料率7.99%を地方公務員の9.54%に合わせるだけで約1100億円の増収効果があるとのデータも示した。その上で大企業が組織する組合健保や、公費負担がある公務員などの保険料率を、中小企業の社員が加入する協会けんぽの保険料率にあわせて、「公平化することが必要だ」などと訴えた。
◎後期高齢者の窓口負担見直し「生活に過度な負担をかけないのが望ましい」
このほか健保連が提案している後期高齢者の窓口負担の見直しにも触れ、「生活に過度な負担がかからないようにするのが望ましいと考える」と指摘。一方で現役世代に負担かかっていることも十分理解できると述べながら、「低所得者に配慮しつつ国民が納得できるよう十分な議論を尽くしていくべき」と強調した。
◎OTC類似薬の保険給付範囲見直し「社会保険の恩恵が薄れる。重症化も懸念」
またOTC類似薬の保険給付見直しについては、「スイッチOTC化されたから、医療用ではなくなるということではなく、医療上必要な医薬品は保険でも対象とされるべき」と主張。「重篤な疾患のみを保険給付の対象とすれば、社会保険の恩恵が薄れ、経済的弱者が軽微な症状での受診を控えることになり、重症化する恐れがある」とし、「早期に診断し、早期治療することが医療の鉄則だ」と述べた。また、「患者負担を増やすだけでなく、社会保障は自助共助公助で成り立っていることから、それぞれバランスとりながら時代に対応できる給付と負担のあり方という視点にたって、議論することも重要だ」との見解を示した。