卸連・会員社18年度業績 営業利益率1%台に回復 価格交渉、人件費減で利益確保
公開日時 2019/08/09 03:51
日本医薬品卸売業連合会(卸連)は8月8日、会員企業の2018年度業績概況速報値(回答53社)を発表した。営業利益率は1.12%、前年度比で0.19ポイント改善し、1%台にのせた。卸連によると、18年度薬価改定や後発品の拡大/長期収載品の縮小により売上は0.48%の微増収だったが、特に▽流通改善ガイドラインを踏まえた医薬品の価値に見合った単品単価交渉による価格管理の徹底▽人員減による人件費の抑制――で利益を確保した。18年度の人件費率は3.20%、前年度比0.05ポイント減。この4年間で人件費率は0.27ポイント圧縮(14年度3.47%)しており、減少傾向が続いている。
卸連の渡辺秀一会長(メディパルホールディングス社長、写真)は同日に開いた会見で、「収益が前年に比べて良くなった要因は、価格交渉をきちんとしたこと」と強調。粘り強い単品単価交渉や頻回配送の是正に会員各社が取り組んだ結果としつつ、「まだ緒に就いたばかり。これから進めていかないといけない」と述べた。
人件費率の減少傾向にも触れながら、「人件費を削減して利益を出すことは少し頭打ちになるのではないか。(卸売業としての)本来の仕事が適切に行われているかどうかの見直しをしていく時期にきていると思う」と話した。適切な価格交渉などを通じて利益を確保していく重要性を示した格好だ。
調査は19年4月に、直近の決算数値を対象として、会員会社71社に対して行った。回答社数は53社、回答率は74.6%。53社の医療用医薬品売上は8兆6186億円、一般用医薬品を含めた医薬品売上は9兆914億円――。
売上の伸び率を詳細にみると、医療用薬を中心に事業を行っている会員企業(医家向販売80%以上の企業群)は0.20%の増収にとどまる一方で、一般用薬の事業にも注力している会員企業(同80%未満の企業群)は3.46%の増収だった。一般用薬事業の伸びはインバウンド需要の継続やドラッグストア向け商材の販売増が主因となる。
回答企業の売上総利益率は6.89%、前年度比0.17ポイントの微増となった。卸連は、単品単価交渉による価格管理を徹底した一方で、メーカーの最終原価が上昇したことが影響したと推測されるとしている。
販管費率は5.77%で、前年度比0.02ポイント減とほぼ横ばい。このうち交際費率や販促費率といった経費は前年度と同じ水準だったのに対し、人件費率のみ減少した。
月商ベースでの販売生産性は1554万円、前年度比1.11%増となった。卸連は、従業員数が減るなかで売上が若干増加した結果ではあるものの、会員各社で取り組んだ頻回配送の改善も反映されたとの見方も示した。
■卸連・渡辺会長 薬価改定の告示日「できるだけ遅くして」 流通の混乱回避を
渡辺会長は会見で、消費税率引き上げに伴う薬価改定の告示日について、医薬品流通が混乱して安定供給に支障が出ることを避けるためにも、「私どもはできるだけ告示日は遅くしてほしいと依頼している。いま現在、告示日はわかっていない」と述べた。
10月に予定されている消費税率の引き上げでは、新薬創出等加算品や基礎的医薬品などは税率引上げにより薬価も上がり、駆け込み需要(仮需)につながる可能性がある。逆に、長期収載品や後発品などは薬価引下げが予想されるなかで買い控えが起こる可能性もある。市場の混乱により、安定供給への影響を指摘する声もあがっている。
渡辺会長は、「私どもが一番危惧しているのは、ある意味で流通が混雑し、国民医療に製品供給が間に合わないという事態。これは避けないといけない。中医協でも意見表明した」とし、「(医薬品卸にとって)プラスとかマイナスの話ではない」、「卸が得するとか利益が低い云々とか、そんなことは考えていない」と強調した。