京大・山中教授 プレシジョン・メディシン実現へ「ITの力欠かせない」 楽天イベントで
公開日時 2019/08/05 03:50
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の山中伸弥教授は8月2日、楽天主催のパネルディスカッションに登壇し、プレシジョン・メディシンの実現のためには、「一人ひとりの膨大なデータを蓄積していく必要があり、ITの力が欠かせない」と述べた。山中教授は、武田薬品と共同プログラムで、iPS細胞由来のCAR-T細胞療法(iCART)の開発に取り組んでいると紹介。再生・細胞医療など革新的技術がもたらす影響を説明した。そのうえで、「医療は今後、患者から学ぶ時代になる」と指摘し、最新テクノロジーを医療分野に融合させることで、プレシジョン・メディシンの実現に向けて加速化すると期待感を示した。
パネルディスカッションは、楽天が開催しているイベント「楽天オプティミズム2019」のなかで開催されたもの。山中氏のほか、南カリフォルニア大学エリソン・インスティテュート創業者兼CEOのデイビット・B・エイガス氏、アメリカ国立がん研究所・米国NIH主任研究員の小林久隆氏が、楽天の三木谷浩史代表取締役会長兼社長らと、ITなどの最新テクノロジーが医療にもたらす影響について意見を交わした。
デイビット氏は、データベースの構築が課題だとして、「医療の世界では共通のデータベースがない。骨折、足の骨が折れるなどと表現も統一されていない」などと指摘。「データの標準化が次の時代の医療への貢献につながる。すばやく前進してほしい」と訴えた。
このほか、小林氏は、楽天メディカル社が実用化に向けた開発を進めている光免疫療法について、「コンセプトは、がん細胞の数を減らしながら免疫を上げていくという治療だ」と説明。同治療の今後の開発について、「うまく免疫をつくることで、固形がんやがんが転移した患者にも使える治療を目指したい」と意気込んだ。