武田薬品 ペイシェント・ファースト・プログラム立ち上げ デジタルツール活用でソリューション提供へ
公開日時 2019/07/01 03:51
武田薬品は6月28日、「ペイシェント・ファースト・プログラム」を立ち上げたと発表した。患者が疾患を認識してから診断、治療、その後の生活に至るまでに患者がたどる道のり(ペイシェント・ジャーニー)を、医師や薬剤師、看護師、介護職、行政機関などのステークホルダーと共有。連携を促すことで包括的ケアの実現を目指す。患者参画へ向けてデジタルツールの活用にも重点を置く。情報発信ツールとしてだけでなく、ウエアラブル端末を臨床研究に活用することで、リアルワールドデータ(RWD)を集積し、エビデンス構築にも注力する考え。患者のアクセスからフォローアップまでの構築を視野に入れ、製薬ビジネスとしてのソリューション化を目指す。
◎岩崎プレジデント「プログラムそのものがタケダイズムを体現」
武田薬品は、“誠実・公正・正直・不屈”をコアとするタケダイズムを実現するなかで、「常に患者を中心に考える」ことを優先順位のトップに掲げる。こうしたなかで、スタートさせるペイシェント・ファースト・プログラムは、「プログラムそのものが武田イズムを体現していくものだ」―。武田薬品の岩﨑真人ジャパンファーマビジネスユニットプレジデントは、同日のプレスセミナーでこう語った。
社会、医療現場では患者の意思決定の重要性が増している。一方で、治療の多様化、インターネットやSNSを通じた情報の氾濫など、これまでとは異なる課題もフォーカスされ始めている。こうしたなかで、患者が治療を受け、その後の経過をたどるまでの道のり(ペイシェント・ジャーニー)も多様化してきている。
今回のプログラムを通じ、医師、薬剤師、看護師など医療従事者、介護職、行政機関がともにペイシェント・ジャーニーを理解し、患者を取り巻く課題への認識を共有。それぞれの強みを活かすことで、課題解決に寄与するソリューション開発につなげる狙いがある。岩﨑プレジデントも、「患者に対し、日本中の関係者と連携することで新たなバリューを出せるのではないか」と強調する。これまで医療用医薬品を通じた患者の治療成績向上に貢献してきたが、それだけでなく、治療後の社会復帰や介護者の負担軽減など、生産性の向上も重視されるなかで、「患者を広く支援するとともに、患者を取り巻くステークホルダー全体を巻き込み、協働していく必要性があると考えた」としている。
◎フェルナンデスヘッド「国内でヘルスケアのエコシステム構築」目指す
このプログラムが医薬品営業とは独立した、いわゆるメディカル部門が中心となっているのも特徴だ。岩﨑プレジデントは、「高度な医学や科学の情報を専門家と交換していく、サイエンス上のエビデンスをつくっていくということを目指して、この組織を国内に置いた」と話した。プログラムでは、患者参画の臨床研究を通じ、RWDを集積し、患者や介護者の生産性向上に寄与するような、いわゆるエコシステム構築も視野に入れる。ジャパンメディカルオフィスのジュベル・フェルナンデス・ヘッドは、「国内で、ヘルスケアのエコシステムを構築したい」と意気込んだ。
まずは、消化器疾患、精神・神経疾患、希少疾患領域の3領域での活動に注力する考え。具体的には、患者参画型のアドバイザリーボードを開催し、患者の声を直接聞く機会を増やし、そこで得た知見を踏まえて、患者・患者団体との共同プログラムの開催や、患者支援のための情報発信、データ構築を行う。
すでに具体的な取り組みも動き始めている。国内でパーキンソン病患者の運動症状を測定するウエアラブル端末を用いた共同研究をスタートさせた。環境要因や生理的要因に応じて変動する患者のバイタルサインや運動症状などのデータを継続的にクラウドに蓄積。このデータを包括的に解析することで、疾患や病気の進行など機序を解明し、将来的には医薬品の枠組みを超えた介入療法の開発も視野に入れる。これにより、患者のQOL向上だけでなく、介護者のQOLや生産性向上を目指す。
IBD(炎症性腸疾患)でも、患者や専門医、看護師、薬剤師、臨床疫学者を交えてアドバイザリーボードを開催し、患者の心理的サポートの必要性を認識したとしている。同社は、患者の体験ができるアプリとキットからなる社内e-ラーニングプログラムの社外への提供を進める。こうした情報提供を通じ、広く疾患理解を深め、製薬企業として貢献していきたい考えだ。