横浜市大・上村教授 前立腺がん治療薬・アーリーダ錠発売で「転移抑制でQOL向上に期待」
公開日時 2019/06/21 03:50
横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科の上村博司教授は6月18日、ヤンセンファーマ主催のメディアセミナーで、同社の前立腺がん治療薬・アーリーダ錠(一般名:アパルタミド)について、臨床第3相試験結果を説明し、「無転移生存期間を大幅に延長し、臨床症状の悪化を遅らせるなど、QOLを保ちながら転移を抑制できる」と期待感を示した。高齢者が多い疾患だけに、転移を抑制することの重要性を指摘。アンメット・メディカルニーズを満たす薬剤だとして意義を強調した。
同剤は、経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬で、アステラス製薬のイクスタンジ(一般名:エンザルタミド)と同じ作用機序。イクスタンジは遠隔転移の有無にかかわらず使えるが、アーリーダでは、「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん」を効能・効果としている。3月に製造販売承認を取得し、5月に発売した。
同剤の第3相臨床試験では、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん患者1207人を対象に、無転移生存期間を検討した。その結果、同剤の服用とアンドロゲン除去療法(ADT)の併用療法を行った群(806人)では、中央値が40.51か月だったのに対し、プラセボ群(401人)では、15.70か月だった。結果について上村教授は、「患者がより長く転移のない生活を送ることができたことは重要」と指摘し、意義を強調した。前立腺特異抗原(PSA)を指標とした奏効率も、同剤服用群が89.7%(723例)だったのに対し、プラセボ群では2.2%(9例)だったと紹介。そのうえで同剤について、「無転移生存期間を大幅に延長し、臨床症状の悪化を遅らせるなど、QOLを保ちながら転移を抑制できる」と評価した。
一方有害事象については、「日本人特有の症状として皮疹が発生しやすい」と指摘した。このため処方に際し、患者に注意を促すことや、減量して再投与するなどの対応をしていることを紹介した。このほか、疲労感や転倒、骨折などにも注意が必要だとした。
前立腺がんは、高齢化や暮らしの西洋化などによる罹患者数の増加傾向が指摘されている。2025年には、胃がんや肺がんを抜き、男性のがん罹患者数で最も多くなると推定されている。