日本医師会の横倉義武会長は6月19日の記者会見で、政府が取りまとめる経済財政諮問会議の「経済財政運営と改革の基本方針2019案」および未来投資会議「成長戦略フォローアップ案」について見解を示した。横倉会長は、骨太2019に盛り込まれる予防健康づくりについて「日医の考え方が反映された」と評価した。ただ一方で、地域別診療報酬、地域医療介護総合確保基金創設前から存在している事業も含めた大幅なメリハリ付けの2点に懸念を表明。地域別診療報酬の導入で議論となった奈良県については、県医師会と知事間で政策協定を結び、「すでにこの問題は解決済み」と強調した。
横倉会長は、骨太2019案に盛り込まれた健康予防づくりについて、「日医はかかりつけ医が積極的に関わることが必要と考えている」と強調、18年9月に日本糖尿病対策推進会議、埼玉県医師会、埼玉県糖尿病対策推進会議、埼玉県の間で、かかりつけ医の糖尿病診療の推進と重症化予防に向けた連携協定を締結したことをあげ、「今後もこうした取り組みの横展開を行い、効果的な重症化予防をさらに推進し、国民の健康寿命の延伸につなげていきたい」と述べた。
◎地域別診療報酬「保険者協議会で議論を尽くすことが重要」
一方、骨太2019案への懸念として地域別診療報酬をあげた。この案件は前年の骨太2018にも記載された事項、横倉会長は不快感を表明した上で、「高齢者の医療の確保に関する法律14条には、医療費の適正化に向けて、医療の効率的な提供の推進に関する目標が達成できないときの最終手段だとある」と強調。日医としては「そこまでやらないよう医師会も参加する保険者協議会で地域の実情に沿った医療費適正化計画を策定すること、医師会と保険者が協力して、計画内容を実施すること、評価にあたり協議会で議論を尽くすことが重要だと考えている」と説明した。また、この問題で懸念のあった奈良県の事案について、政策協定を結ぶなど「解決ずみ」との考えを示した。
◎基金創設前の事業への大幅なメリハリ付けに懸念
このほか地域医療介護総合確保基金の創設前から存在している事業を含めた大幅なメリハリ付けについても言及した。今回の骨太2019案では、基金の配分、基金創設前から存在している事業も含めた大幅なメリハリ付けの仕組みという記載があるという。横倉会長は、「基金創設前から存在している事業は、看護師と養成所への支援など、長期的にみて地域に重要なもの多く、それらは十分に確保しないといけない」と述べ、「即自的な効果を求めることなく、長期的な支援が大切と考える」との見解を示した。
◎病床機能分化で知事権限のあり方「強制的にやれば現場に混乱を招く」
さらに、病床の機能分化が進まない場合の都道府県知事の権限のあり方にも触れた。横倉会長は「知事の権限に強化により強制的に機能分化進めれば、現場に混乱を招き、かえって医療提供体制を崩壊させかねないと思う」と指摘。「高齢者人口の増加には地域差があり、地域のニーズや人口減少に応じて病床は減少させていく。病床を急激に減少させると地域医療に混乱をもたらす可能性があり、ソフトランディングしていく必要ある」とコメントした。社会保障の給付と負担のあり方については、「いずれの議論も先送りになり、参院選後、2020年に向けて厳しい議論が予想される」と見通した。