後発品の原薬問題でGE薬協「企業間で温度差」 業界あげた共通認識を 自民議連で
公開日時 2019/05/17 03:50
日医工の抗菌薬・セファゾリンの欠品をきっかけに表面化した原薬に関する問題について、日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は5月16日、「企業間で差があると考えられ、業界全体として一層の強化充実が必須」との考えを示した。自民党の議員連盟「ジェネリック医薬品の将来を考える会」(上川陽子会長)で報告した。原薬調達のダブルソース化には約4割の企業が取り組むが、それだけでなく、代替製品の有無など、評価軸を業界団体として示し、課題を洗い流す必要性を強調した。業界一丸となって共通認識を醸成するために、政府や議員などの関係者に理解を求めた。
原薬に関連する問題は、セファゾリンだけでなく、原薬から発がん性物質が検出されたアムバロ配合錠をファイザーが自主回収するなど、広く及んでいる。GE薬協はこの日の議連で、原薬調達先で環境規制・指導が厳格化され、製造の中断、操業停止などの事例が生じているとの問題意識を示した。
競合製造所が業務停止となり、供給不足が起きた結果、原薬が高騰。原薬の調達先が限られることも相まって、問題は国内だけでなく、全世界に広がる。結果として安定供給に影響を来たしているケースも出始めた。特に、中国をはじめとした海外から原薬を輸入していることや、調達経路が1か所であることなどが指摘されていた。
◎原薬のダブルソース化4割に
こうしたなか、厚労省は業界側に、原薬の調達経路を複数化することなどを求めてきた。実際、同省の資料によると、2013年度(182社)の28.6%から18年度(184社)には42.7%まで上昇している。ただ、「輸入した原薬をそのまま使用する品目」も13年度の45.8%から49.0%へと増加。輸入先は韓国(21.8%)が最も多く、中国(18.6%)が次ぐ。
GE薬協は安定供給に向け、医薬品医療機器等法(薬機法)や日本製薬団体連合会(日薬連)が定めた「ジェネリック医薬品供給ガイドライン」の遵守に加えた取り組みの必要性を強調した。議連でも、ある大手ジェネリックメーカーの取り組みを紹介。安定的な調達体制を確保するためには、原薬調達のダブルソース化や、リスクに応じて原薬在庫を積み上げるなど、体制強化を図っていることを紹介した。ダブルソース化が難しい場合はリスクに応じて、市場の供給量の6か月分をセーフティーストックとして確保しているという。
GE薬協は、企業間に温度差があることを認め、「自社が扱うすべての原薬調達にかかわる問題、その影響度を把握しておくべき」とした。具体的には、▽最終製品(医薬品)の代替品の有無、▽診療ガイドライン上の位置づけ、▽原薬の化合物としての特性、▽原薬メーカーなどの能力、▽製造方法、▽製造所立地―などを評価し、課題の洗い出しを行うことが重要との考えを示した。そのうえで、業界団体として「課題把握のための共通の考え方を示す」考えを示した。このほか、複数の購買先確保や実地監査などに「所要のコスト」がかかることへの理解を求めた。
◎沢井製薬・澤井社長「厚労省、政治、全てが一体となって課題解決を」
GE薬協の会長を務める沢井製薬の澤井光郎代表取締役社長は同日の決算会見で、この問題に触れ、「原薬は中国に集中的になっており、供給が滞ると全世界で不足する」との認識を示した。安定供給は、“ポスト後発品80%時代”のジェネリックメーカーとしての責務としたうえで、「新薬メーカーも含め、抗生物質製剤の原薬をどう確保するかは、日本の医療における大きな問題。当局(厚労省)、政治、全てが一緒になってやらないといけない大きなテーマだ」との考えを示した。