財務省主計局は4月23日の財政制度等審議会財政制度分科会に、医薬品産業の営業コスト構造に関する資料を提出し、「他業種に比べて営業費用など販管費の比率が高い」との調査結果を示した。この資料は日本政策投資銀行の産業別データハンドブック2017から引用したもの。2016年度の全産業の販売費・一般管理費の構成比が18.4％だったのに対し、製薬産業（大手8社）は50.8％に及ぶと指摘。その内訳をみると、研究開発費の31.4％に対し、宣伝費・営業費用等は64.6％と「研究開発費以外の販管費の比率が高い」ことを強調している。

◎再び製薬産業の費用構造を狙い撃ち

財務省は2018年４月実施の薬価制度抜本改革の直前にも、財政審に対し製薬企業の費用構造に関する資料を示した。その際はＭＲの業務上の待ち時間の長さから生産性の低さを指摘し、薬価の高止まりに楔（くさび）を打ち込んだ。今回も同様に、製薬産業の営業利益率の高さを指摘し、これからの薬価制度改革論議に一石を投じる構えだ。特に、今回はリーマンショックの翌年である2009年度と16年度の産業別にみた販売費・一般管理費を比較しており、「他業種と比較して、景気後退の影響も受けていない」との論評も付け加えた。

さらに欧米系の製薬企業と日本の大手製薬企業の15年の販売費・一般管理費（研究開発費以外）の比率も提示。外資系の上位は、ギリアド・サイエンシズ10.5％、バイオジェン19.6％、ロシュ19.9％となっているのに対し、国内大手は、第一三共が33.3％、エーザイ35.2％、武田薬品36.0％、アステラス製薬36.5％、大塚ＨＤ44.5％となり、「国際的にみても、わが国製薬企業の研究開発費以外の販管費率は高い」との見解を明示した。

主計局は次期改定に向けた課題にも触れ、「長期収載品依存の構造からどの程度転換が進むかについては、依然不明」とし、更なる制度改革に取り組む姿勢を打ち出している。2018年度薬価改定で導入したG1ルールのうち、後発品の上市後10年間を後発品の置き換え期間とする考え方について、10年間という期間の短縮を暗に求めている。

◎‟保険外併用療養費制度“の柔軟な活用・拡大で検討を

この日の財政審分科会では、保険給付範囲のあり方の見直しとして、「高度・高額な医療技術や医薬品への対応」についても議論した。主計局は改革の方向性として、安全性・有効性に加え、費用対効果や財政影響などの経済性の評価を踏まえ、保険収載の可否も含めて公的保険での対応のあり方を決める仕組みを検討すべきと提案。保険収載とならなかった医薬品等については、「安全性・有効性があれば‟保険外併用療養費制度“の柔軟な活用や拡大についても検討すべきとした。

さらに薬剤自己負担についても言及。フランスにおける薬剤自己負担割合などを参考にしつつ、市販品と医療用医薬品とのバランス、リスクに応じた自己負担の観点等を踏まえ、薬剤の自己負担引き上げについて具体的な案を作成し、実行すべきと提案した。なお、フランスでは薬剤の種類数に応じて自己負担割合を設定している。ドイツでは、10％定額負担（各薬剤につき上限10ユーロ、下限５ユーロ）。スウェーデンは、1150クローナまで全額自己負担、より高額な場合は一定の自己負担割合とする。なお、上限は年間2300クローナ。

◎21年度薬価改定の対象範囲は「金額ベース」で

このほか毎年薬価調査・毎年薬価改定に向けた改革の方向性として、「2021年度における薬価改定の対象範囲については、金額ベースで国民負担の軽減に十分につながるようなものとすべき」との見解を示した。医療用医薬品の内訳（2015年9月）をみると、品目ベースでは、後発品の無い先発品が10.7％、長期収載品が8.1％、後発品が50.0％、その他が31.0％となる。これを金額ベースでみると、後発品の無い先発品が4.4兆円で48.0％（うち新薬創出等加算品2.7兆円）、長期収載品が2.8兆円で30.0％、後発品が1.3兆円で14.0％、その他が0.7兆円で7.6％となっていた。先発品は薬価水準が高いため、薬価と市場価格の乖離が大きくても、乖離率は相対的に小さくなることが指摘されていた。