国立感染症研究所の大石和徳・感染症疫学センター長は3月5日、日本製薬工業協会主催のプレスセミナーで、現在の予防接種制度について「小児向けが優先されがち」と指摘し、高齢社会に合った予防接種戦略の必要性を指摘した。
大石氏は「生涯を通じた予防接種を考える」をテーマに講演した。その中でインフルエンザ、肺炎球菌のワクチンを例に、75歳以上で両ワクチンの併用接種後1年で肺炎にかかる頻度が6割程度減り、肺炎治療にかかる費用も10万円余り減少した研究成果を説明。しかし、予防接種法上、両ワクチンは個人予防が目的で接種勧奨もなく、接種率を引き上げることは困難だとした。
同氏は、「予防接種で健康寿命の延伸、その間のQOLの向上が期待できる可能性がある」と指摘し、高齢社会での健康寿命の延伸に向け「戦略を練って考えていく必要がある」との考えを示した。その中では、▽利用可能なワクチンについて接種目的、対象年齢、接種方法などの適用の検討▽加齢に伴うワクチン応答の減衰を補う安全性の高いアジュバントなどを活用した新規ワクチンの開発――が求められるとした。